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2015-02-20 18:30 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「子ブタさんよ空をゆけ」


 幸か不幸か、いや、特に不幸ではないだろうが、兎にも角にも私は子ブタさんなのである。子ブタさんであることに不利益は感じないが、利益を感じることがあるのかと問われれば正直なところ解答に窮する。私は子ブタさんとして誕生し、子ブタさんとして生きている、今後も子ブタさんであろう、成長に伴い「子」が外れることはあれど、「ブタ」でなくなることはないだろう。

 私たちは種族を選んで生まれてくるわけではない。それはヒトであろうがブタであろうが同じだ。そもそも選択が可能でない以上、子ブタさんとして生まれた私は子ブタさんとして生きるほかない。

 ときに思う。子ブタさんで良かったと。
 将来を憂うことがないわけではないが(食肉動物である以上、生存権は私にないのだ)、現在の私は子ブタさんであるが故に持つ権利を最大限に行使し、のんびりと日々を過ごしている。
 飽きたと言えば飽きたし、さして美味しいわけでもないが食事は充分に用意されるし、雨風をしのぐ小屋もある、ヒトと違って衣服は必要でさえない。

 子ブタさんは子ブタさんでいればさえ良いのだ。あくせく働くこともない、面倒なご近所付き合いもなければ礼儀作法をとやかく言われることもない。せっせと身繕いして自らの精一杯の笑顔をインターネット上に投稿することもない。

 子ブタさんはその生まれ持った「子ブタさん性」を発揮していればさえ、見ている者は勝手に癒されてくれるし、微笑ましく感じてくれるのだ。
 ある者は必要以上に私を愚鈍に考え、また、ある者は必要以上に私を賢明だと考える。
 小賢しい、私はそのように思う。どちらでもよい。評価など不要だ。私はヒトではない、他者評価のなかに自分を置くことなどないし、そもそも「自分」などない。「自分」なんてものに価値があるという勘違いがヒトを惑わせるのではないか。子ブタさんは他人にどう映るかなど考えはしない。
「自分が他人の興味対象である」などと思い上がることもない。ヒトは本来的に他人に興味などない、他人が見る自分に興味があるだけだろう。

……しかし、である。
 私はその愚かしいヒト科に依って存命たらしめているのだ。
 鑑賞や育成、愛玩を目的に存在する幸福な子ブタさんもいるだろうが、私はあくまで食肉化を前提に(ある意味では将来を嘱望されているのだが、それは私の本意ではない)生育されているのだ。
 私はこの小屋に生を受けた子ブタさんの本来性を突破しようと考えている。運命を欺き、神を欺くのだ、ヒトの言葉を借りれば、それは背信であり、背徳であり、禁忌である。

「この柵を乗り越えよ、飛ぶんだ、子ブタさん!」
 行為が発覚すれば即座に拘束され、未来は永劫に閉ざされるであろう。しかし、私はそれを試みる。成否がどちらに転ぶにしても、所詮は儚い人生……子ブタさんだが……ではないか。
 家畜にも意思はある。私は運命を受け入れることをよしとしない、勇敢な子ブタさんなのである。
 私の魂は叫ぶ。
「跳べ、子ブタさんよ! 運命を逆転させるのだ!」と。









【 了 】  





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