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2014-12-07 18:30 | カテゴリ:ショートショート・フィクション
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「赤紙」


 ラジオに耳を傾けると今日も昨日と同じニュースが流れていた、雑音が混じってうまく聞き取れなかったけれど、きっと昨日や一昨日とそれほど変わらないんだろうと思う。

 枕元の銀紙には残しておいたチーズとクラッカーが半分ずつ。
 顔を近づけるとお腹が鳴る。忘れようとシーツに包まる。
 ラジオのチャンネルを変え、少しだけ音量をあげてノイズの向こうの声を聞き取ろうとしてみたけれど、屋根を叩き始めた雨に消されてしまった。
 明日は今日より寒くなると聞いた。
 早く眠ってしまおうと僕は思った。

 目を閉じようとすると窓の向こうでなにかが光った、星なんだと思うことにした。
 雨の夜だからって流れ星が見えないわけじゃない。そして僕は眠る。

 朝がくる。
 僕は着替える。オイル染みの目立つコートは大きくて肩が落ちてしまう。これをくれた人はこの街にはいない。
 ところどころ焦げのあるマフラーをぐるぐる巻く。これも貰い物。これをくれた人は、ついこの間、真新しいヘルメットを被り、敬礼をしてから街を離れた。
大人になると誰もがこの街を出てゆく。
   
 そう決まっているのだと言う。
 いつかは僕もその時がくるんだろう。

 今日はこれだけ、おじいさんはそう言って麻紐に巻かれた赤い紙の束を指差す。
 そう、これは一方通行の手紙。送るだけで返事の来ない手紙。
「平和の招待状だよ」とおじいさんは言っていた。

 僕はそれを鞄に積め、配達先を記した票に目を通した。コートをくれた人も、マフラーをくれた人も、この赤い紙が届いてすぐにこの街を離れた。平和な土地をつくるための「お務め」を果たすために。

 配達が終われば、今日もまたラジオを聞こう。僕はそう思う。
 戦争に行った誰かが帰るとラジオのニュースになる。立派な兵隊になって、立派にお勤めをして、骨になって帰ってきた人たちは英雄になる。

 いつか大人になったら。
 僕もこの平和の招待状を貰って、街を離れるんだ。



了 







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