-------- --:-- | カテゴリ:スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2014-12-21 18:30 | カテゴリ:砂時計のクロニクル
fc2blog_20141204094308f27.jpg

「砂時計のクロニクル #7」


 東へ、東へと。
 僕は歩き続けていた。風が背中を押してくれたような気がしたときは、ふと来た道を振り返る。
 砂時計の街、僕が生まれ育った街。朝を待つ彼女がいる街。
 川に流れた金の砂を追って歩き続けてきたけれど、いまもまだ朝にはたどり着けないでいた。

……聞こえる?
「え?」
 僕は耳を澄ませる、風に散らされる砂と葉と。背中に届いた懐かしい声。
 空耳かな、そう思う。あたりには誰もいない。立ち止まる、そして目を閉じた。ふと浮かぶ笑顔とリヒーナが僕を呼びかける声。

「聞こえるよ……うん、聞こえてる」
 受けとめる相手がいない言葉はぽつんぽつんと足下に落ちて、その上を砂が通り過ぎてゆく。


fc2blog_201412040943073e6.jpg

 オルゴール。
 ずいぶんくたびれたバッグからオルゴールを引っ張り出した、たくさんの声をひとつひとつ浮かべてゆきながら、オルゴールのネジを巻く。
 いつかふたりで聴いた懐かしい歌がつたなく、淋しく聴こえた。

「こんなに楽しい歌なのに……」
 それに合わせてハミングをしていた彼女の横顔は夕陽に頬を照らされていて、僕はじっと見つめていることができなかった。
 なのに、ふと見た一瞬はいつかの記憶じゃなく、いまも彼女がすぐそばにいるような気持ちになる。
「ずっとそばにいてくれたんだ……」

 出しそびれた手紙の束はしわくちゃになっていた。僕は僕が思っていたより、きっと彼女が思っていたより遠くに歩いてきたんだ、そして、いつ帰れるのかも分からない。

 故郷を遠く離れても、世界は夜明け前で止まってしまったままだった。

fc2blog_201412040943073e6.jpg

「おはようって言い合えるって幸せだと思わない?」
……うん。当たり前のことだとばかり思ってた。
「こんなふうになんでもない時間を笑ってられるって素敵じゃない?」
 いまはそれがよく分かるんだ。

「当たり前のことなんて、昨日と同じ朝がくるなんて、そんなこと決まってなんてないんだよね」
「毎日、奇跡の連続だもの。誰かに会ったり、ごはんを食べたり……。君とオルゴールに合わせて歌ったり、ね」
「いつかまた戻れるかな?」
「私たちの街に? それとも朝がこなくなる前の世界に?」

 いつの間にかオルゴールは止まっていた、いつも隣にいてくれていた、僕はリヒーナと話していたのか、それとも幻と話していたのか、よく分からなくなっていた。



【つづく】







Copyright (C) 2014 copyrights.billy tanaka All Rights Reserved.


〝Please give me an aid click〟
にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ

関連記事
スポンサーサイト

管理者のみに表示する

トラックバックURL
→http://stardustjohnny.blog.fc2.com/tb.php/3135-231be71a
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。