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2014-07-14 12:00 | カテゴリ:【小説】国境線上の蟻
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国境線上の蟻 イラスト 画像

国境線上の蟻 #3


「死ぬときのことを考えたことはあるかい?」
 君はその問いに少し迷う。慎重に言葉を探す。
 無言はときに多弁よりも雄弁に感情を物語る。

 一秒ですらそれを忘れることなんてない。人を殺す瞬間、その一瞬以外は死を思っている。
「そのときは……」
 君は語り始める。
「そのときは独りで何処か遠く……誰もいないところにゆく。そう決めてる」
「それはいいな。私も同じ意見だよ」

〝あんたはムリだ〟

 棘が、苛立ちがあらわになる。押し殺し続けた感情が発火しそうになるのを抑える。
 君は思い出す。子供のころを思い出す。貧しくも懸命に生きることに幸福を見た、少年時代が胸に生き続けていることを知る。

「あんたは……」
 君は狼狽を悟られまいとタバコに火を点ける。目の前のグラスのウイスキーを飲み下す。
「飲まないんじゃなかったのか」
 男の眼は笑ってはいない。だが声色には嘲笑が混ざりこんでいる。眉根を寄せ口角を吊り上げてみせる。
 屈服、征服の際になんども浮かべた表情なのだろう。君はそれを感じる。同時に蘇る記憶がある。
「あんたは……あんたは有名人だからムリだよ」
「そうかな? 名前などいくらでも変えられる。無名になることは名を馳せるより遥かに容易い。そう……いま、私が君を殺したとしても、君の名前など誰も知らない。そういうことだ」
「その逆も同じだけどな……こんな薄汚いモーテルであんたが殺されるとは誰も思わない。そして俺が誰なのかなんて誰も知らない。身を消せば何処にでもいける」
「それは契約違反、契約破棄どころじゃないな……。君の稼ぎでは違約金は払えない」
 そしてふたりは笑う。男が笑いはじめ、君もわずかに解放されて笑った。
「もう少し飲まないか? それくらいは私が奢ろう」
「ああ。ナッツかチップスでも買ってくるよ」
 これで充分だろう、男が札入れから抜き出したのは数十枚に及ぶ枚数だった。

 君は思う。
 俺には手も届かない、ありとあらゆる全てを手にしているんだろう。
 最底辺と最高部の人間だけがカネの価値を知っている。この世の全てとまでは言わない、だが、「カネはほとんどこの世の全てだ」と。
 それは理想論では踏み込めない現実だ、そしてそれはヒトが創造した最大のシステムだ。金の価値は人の価値を超越する。

 君はそのことを知りながら、禁忌を冒そうともする。
 運命とそれを与えた神を欺く、それほどの理由はないだろう。

 

……続劇

TRICKSTER TOURS.

閃 ロックンロール ワールズエンド
天 草原 蟻
ゾンビ 祈り 砂時計


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