-------- --:-- | カテゴリ:スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2014-07-15 12:00 | カテゴリ:【小説】国境線上の蟻
灯火 キャンドル 炎 画像

鳥谷敬 阪神タイガース イラスト 画像

国境線上の蟻 #4


 君は手持ち無沙汰にジャックナイフを弄ぶ。燭台の炎が揺らめくなかを刃が怪しく反射光を閃かす。オイルの切れたライターのように見えなくもなかった。

「ナイフか……物騒だな」
「そうかな」
 君は言う。
「これがあればリンゴの皮を剥ける。フォークにもナイフにもなる。俺は運び屋だ、積荷のロープもこれで切る」
 なぜ刃物を物騒に思う? そう問う代わりに君は男に視線を向ける。切っ先よりも鋭利な冷徹さで以て。そこにヒトとしての感情は欠落していた。

「戦争屋には武器にしか見えないんだろう?」
「戦争屋……か。言っておくが戦争は売り買いできない。私は単なる商売人で、シナリオライターだ、戦争をするかどうかは私に依る事柄ではない」
「でも、あんたは命と引き換えに富と権利を手にした、言い方を変えても事実は事実だろう」
「お前が思うほどには儲からないさ……それは前世紀の話だ、大国が勝利するシナリオをひいてこそ大義なり正義が発生する。局地紛争はデータ採取のサンプルに過ぎない」

 モルモット扱いか。
 君はそのナイフが男の喉を裂くイメージを描く。いまの君にそれは容易いことだろう。

「で、この国もそのサンプルとやらに使おうと?」
「冗談だろう? ここは私の祖国でもある……」
「以前は、な。だからこそお前は渡航のために準備をしている。違うか?」
「私は売国奴ではない……まず、この国にそこまでの価値があるとは思えない」
 君は初めてお前と形容する、契約関係の破棄が生じることを知っていてなお、その言葉を使う理由がある。

「私を殺したいのか」
「ああ。殺したい、じゃない。殺すつもりで請けた依頼だ。いくら権力があろうと、お前を殺すくらいは簡単だ」
「……なるほどな。だが、私を殺したところで何が変わるわけでもない。君が命を落とすだけだ。分かるな?」
 それがどうした。
 君は思う。地の果てまで逃走する、そしてそこで孤独に息絶える。そう決めていた、それは既に話したはずだ。

「お前は、俺が殺す。そう決まっている」
「決まっている、か……面白い。まさか運命とでも言うのか」
「血だ」
「……チ?」
「血液だ。俺にもお前にも流れる血だ。流れる以上は絶やさなければならない血だ」
「そうか……血か」
「俺はお前の子供だ、数百はいるだろうが、そのなかの独りだ。そして、俺の故郷とたったひとりの母を殺したのがお前だ。憶えているだろう」
「憶えてはいない。だが、それは間違いなく私だろう」

 サイレンが鳴る。夜明けを告げるわけではない。この日たった一度だけ停泊するクルーザーの到着を知らせるサイレンだった。



…………続劇

TRICKSTER TOURS.

閃 ロックンロール ワールズエンド
天 草原 蟻
ゾンビ 祈り 砂時計


PR

Copyright (C) 2014 copyrights.billy tanaka All Rights Reserved.



にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
関連記事
スポンサーサイト

管理者のみに表示する

トラックバックURL
→http://stardustjohnny.blog.fc2.com/tb.php/2912-596856fa
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。