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2013-10-17 12:42 | カテゴリ:ショートショート・フィクション
モデル 吉瀬美智子 イラスト 画像

「微粒子になる」


 揺らめきながら、音もなく室内を循環するわずかな風に流されながら、静かに散って消えてゆく微粒子として私はまだこの世界に存在していた。
 蝉の声が夏であることを教えてくれる。でも、すでにあの暑さ、太陽が放つ熱を感じることはない。現存したころの記憶が蘇るだけだ。
 そう。
 私はかつての肉体から離れ、気配として、微粒子として消滅を待つばかりなのだ。

 自分が死に際して初めて知ること……そのあまりのシンプルな原則。
 例えば心霊と呼ばれる現象。子供のころなら恐怖として、夏を彩る不確かな事象として信じることができたこと。大人になったあとはただの冗談だった、本気でそれを語るほど愚かなことはない。当然のことだ、現代の人はまやかしに時間を割くほどの余裕はない、本気でそれを語るとすれば、「面倒が始まった」と適当な相づちで終わりを待つ。
 
 そして。
 生まれ変わり、輪廻転生、前世だとか来世だとか……やはり、それも人が作った幻想でしかない。ルーツそのものが貧民のカタルシスであったと聞いたことがある、結局はそんなもんだ、いま、私はそれを知る。

「そんなどうでもいいこと考えてるくらいなら、昼寝でもしてるほうがマシなんじゃない?」
 そんなふうに言われたことを思い出す。ムキになって反発したけれど、つまりはそれが正しいことだったからなんだろう。

 人は動物と同じだ、そしてやがては朽ちゆく万物と同じだ。
 生まれ変わることもないし霊体として現世に留まることもない。
 例えば、夏の夜、眠りを妨げられたことが発端になり、一瞬でぺしゃんこにされる蚊と同じくらい。
 人の死はあまりに多弁に語られ過ぎるだけだった、単純に終わりがくるだけのことだった。
 もちろん、それが遺すものもない。
 そんなすべてが消えてゆく私の心……と呼ぶべき部分……を解放してゆく。

 いま、私は肉体を離れて微粒子として在る。もちろん恒久ではない。死と同時に真理となり、そして僅かな時間で消えてゆく。

 誰かが窓を開けた。風が私を運んでゆく。何もかもが消えてゆく。
 痛みも苦しみもない。氷が溶けてゆくように私が景色に溶けてゆく。

 外はもう夕暮れだ、黄金が視界を染めてゆく。どうしてだか涙が流れるような気がした、だけど、そんなことはない。
 導かれるよう、連れられてゆくように、私はその黄金へと溶けこんでゆく。
 振り返ると私が生きた場所は小さく狭く、戻りたいとも思わなかった。


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