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2013-07-11 12:03 | カテゴリ:ショートショート・フィクション
夏 海岸線 海 画像


「鐘が鳴り響く朝に私は悲しい夜を想う」


 朝を告げるのはニワトリの鳴き声ではなく教会の鐘だった、生まれてからずっとそんな街に生きている。
 街の外れ、海沿いの白い教会はその二階から上が灯台になっていて、鐘はその塔の先端、色あせた赤い屋根の下にぶら下がっている。
 日に三度、その鐘は鳴らされる。誰によって鳴らされているのか、それはいまだ知らない。
 不思議にそれを疑問には思わなかった、ごく自然な日常のこととして聞いてきたからなんだと思う。父も母も、そして、ここで生まれた誰もが皆、鐘の音色とともに生きている。
 だからか、この街には時計がない。朝昼夜を知らせる鐘と水平線の南に浮かぶオレンジ色の太陽、それだけで一日の始まりから終わりまでを知る。

 遠く吹鳴、それから波音。騒々しいくらいに光る太陽が朝を始める。
 真上にまで高く昇ったそれは地表の隅々まで照らそうと力を絞る。だけど、どうしようもなく暗いままの場所がある。すべてに光を投げかけるほどに万能ではないのだ。
 やがてそのわずかな影が光以上の濃度をもって夜を作り始める、夏はとくにそれがよく分かる。

波 瀬戸内海 画像



「夜は闇とはまた違う、夜にしか生きないものがいて、太陽を欲しがるばかりが命じゃない」
 遠い昔、そんなことを聞いたことがある。なぜだろう、私はことあるごとにその言葉を思い出す。

 教会の方角から夕凪の風が吹き始める、そして小さな影がふくらみ始めて夜が始まる。
 月が黄金へと色彩を変える直前の、夕景が赤みにて海と教会を染めるころ、その日最後の鐘が鳴る。
 花々が眠りを始め、風が音を持ち、樹々がざわめき立つころだ、夜の空は宇宙に繋がっているから昼間よりも果てがなく感じる。

 この海は船の往来がない、だから夜の灯台は暗闇に溶けて消えて朝になるまで眠りにつく。
 どうしてだろう、人々は夜を楽しむために様々な言い訳を作り出す。
 私は想う。
 夜を生きるべきでなかった人が夜を過ごすためには理由が必要なんだろうと。
 夜の闇は私たちを素直にさせる。素直になった私たちはあまりに儚く脆く、その暗さから逃れることができない。

 夜に想う。裸になった私たちはあまりに弱々しいからこそ、悲しみを忘れるためにありとあらゆる方法を探してきた。
 徒労に過ぎないとしても、それでも、私たちは夜を悲しみながら過ごすことができないくらいの存在でしかないのだ、と。


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ロックンロール・スイッチ

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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)

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あの人への想いに綴るうた

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