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2014-06-28 12:00 | カテゴリ:ショートショート・フィクション


「ひどく雨の強い日に」


 その日は台風の接近でひどく強い雨が降っていて、眠りから覚めて見上げた空は黒くて、とぐろを巻く煙みたいだった。
 横からなぐる雨が窓を叩いて、風に振り回されている蔦がムチのようにしなって雨と一緒に窓を打っていた、テレビをつけるとレインコートのリポートがどこかの港で必死に声をあげていた、音量は絞ったままだったから、彼女が何を叫んでいたのか知らない。

 台風の進路はパネルにされていて、その円はすっぽりと私の住む街を覆っていた、注意報や警報が出ているらしくて、恋人からのメールには「無理だったら来週でいいから」って、そっけなかった。

 行くよ、行きますよ。
 身支度をととのえた私はひと気のない街を滑るように走って、水滴の向こうには滲む光が尾を引いていた、飛ばされた傘や雑誌が車道でバタバタと暴れていて、立ち寄ったコンビニはいつもより薄暗かった。
 台風の雨風に打たれてずぶ濡れの子供は普段と変わらない様子で、濡れたままの手でマンガ雑誌を立ち読んでいた。

 ビールとナッツとプリンとシュークリームを買い、レシートをデニムに突っ込んで、私はまたクルマに戻る。
 たったの数秒で髪もメイクも崩されて、ミラーのなかの戻りかけの私はあまり笑っていないみたいに見えた。

 もう少しで彼の住む街に入る。風はますます強くなって、木々を倒したいがためにやけくそになってるようだった。
 右カーブに差し掛かる、左の薬指のリングがちかっと光を跳ねる。
 たぶんきっと幸せなんだ、そんな気がする。

 だけど。
 それなのに、いま、この瞬間、私はこの台風で世界中が消えてなくなってしまえばいいのに、そんなふうにふと思う自分もいるって知ってる。
 そうならないことも知ってる。
 もう子供じゃないから、そんな無邪気にばかりはいられない、らしい。

 彼の住むアパートに着く、雨も気にせずベランダから手を振る、見慣れた笑顔。「バーカ」と喉の奥につぶやいて、私は彼の待つ部屋へゆく。
 まだ世界は滅ばなくっても、それはそれでかまわない。
 とりあえず、しばらくは。




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