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2014-09-22 12:30 | カテゴリ:ショートショート・フィクション


「雨季の前、海のそばのバス停で」


 雨季の近づく海のそばのバス停には時間と行く先の表記がない。
 ここで陸地が終わり、ここから海が始まる。人の往来はなく、時折、カモメが退屈しのぎに割れた悲鳴のような鳴き声をあげ、そしてその声は風の隙間を衝いて響くコンビナートのサイレンに掻き消される。

 倒れたままのイスが二脚、ずいぶん古いものらしくて塗装が剥がれて錆びてしまっている、なんど起こしても倒れてしまうから、僕はそれを起こすのを諦めた。

「このバス停、もうすぐ失くなるんだって」
 海を見ていたと思っていた彼女はふいに振り返る。切ったばかりの髪が強くなる風で立ち上がる。
「バス……見たことないけど」
 吐き出される人も吸い込まれてゆく人も見たことがない。
 それがどんなふうに走っていたのか、それを見たこともない。
「バスじゃなくて、バス停がなくなるんだよ」
「違いなんてある?」
「バスはもともと走ってなんてなかったし、ここにはただバス停があっただけ」
 首を振らず何も言わない。分からなかった、だけど、僕は分かったふりをした。

「雨季の前に片付けちゃうんだって、バス停」
「じゃあ、夏はもうここには来ないことになる」
「うん。この海は鳥とサカナしかいなくなる」
 岸壁に打ちつけられた波は砕けて静かに引き返す。微かに聞こえた海鳥の泣き声は、小さな子供の叫び声によく似ていた。





了 






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