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2014-09-19 12:00 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「最期は君と抱き合って」


 いつか夢に見たことのある景色、私にはそんなふうに思えてならなかった。予知能力があるだとか、未来を想像していたわけではなくて、ごく単純に夢でしかなかったわけだけど、目の前に広がる凍りついた風景は色を失くして耳まで凍りついたように静謐な、圧倒的な虚無だった。

「寒くない?」
 立ち尽くす私はひざのあたりで鼻を寄せる見知らぬイヌに声をかける。
「いいなぁ、君のその毛皮……あたたまらせてもらってもいいかな」
 返事はもちろんなかったけれど、私は彼……たぶん「彼」だと思った、未確認だったけれど……の長い鼻に頬をこすりつけた。
 ずっと昔のことに思える、小さなころ、いつもそばにいてくれた大切な友達と同じニオイ。
 彼は「くうん……」と尻尾を振ってくれた、それから頬を舐めてもくれた。
 温かくて溶けてしまいそうになる。

 いつかくると言われ続けた、世界の終わりは突然だった。
 前触れもなく予報もなかった、挨拶さえなく一瞬でなにもかもを凍らせて、そのまま世界は沈黙してしまった。
 呆気ない。悲しむ時間も逃げ惑う余裕もなかった。その前に誰もが諦め果てていた。
 カミサマに祈る人もいたけれど、それは叶わなかったらしい。でも、ハンパな希望を置いていってくれないのはカミサマの慈悲とか慈愛とか、そうゆうことなのかもしれないとも私は思う。

「お腹減ったよね……」
 草木も朽ちて空は赤みを増してゆく。目を細めて遥か先を睨んでもひと気もなくて灯りも見えない。

「仕方ないよねぇ……」
 そう、仕方ない。どうしようもない。気づけば終わってしまっていたんだ。
 いくら声をかけても彼は何も言ってくれたりはしない。でも、そばにはいてくれるらしくて、私は彼を抱き寄せる。
 冷たくなる風のなか、私たちはただ抱き合っているだけだった。目を閉じると……目を閉じると、いままで見てきた風景たちが騒々しいほどの光を放ってまぶたによぎる。

 流れてゆく滴。止まらなかった。慰撫するように彼は私の顔を舐めてくれる。
 涙とよだれでびしょびしょになった私は彼と声をあげて笑った。

 眠りにつく前の少しの時間、私たちはきっとこの凍りついた世界で誰よりも幸せだったと思っている。

〝JACKPOT DAYS〟-image






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