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2014-04-25 12:00 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「水の泣き声」


 グラスに張った水を通して、その向こうに揺らぐ光を眺めている、陽の放つ光は水を乱反射して波打ちながら少女の頬を照らしていた。

「水がまた生き返るときがきたから、私はそれを見続けるの」
「またその季節がきたんだ?」

 傍らに寄り添う少年は、不思議そうにも不可解そうにもせず、見慣れた景色のように眺めている。

「手を出してくれる?」
「うん」

 グラスを傾け、合わされた手の平に水が零されてゆく。音もなく手の平から溢れ、細い手首をつたって一滴ずつ土の上に跳ねて、やがて染み込んでゆく。

 水を通せば何もかもが本当の姿で見えるんだよ、彼女はそう言う。彼に向けられた言葉なのか、それとも水や光に向けられた言葉なのか、どちらにも思えるし、どちらとも無関係にも思える。
 磨きすぎて溶け、液体化した鏡のような水は少女によって少年の手をすべり、土に還される。

 ひとりの少女とひとりの少年、繋ぎ合わされた細い指と指。そのなかには草原がまた広がる。
 そしてまた、海は静かに波打ちながら、太陽と月、ふたつの穏やかな光を抱き寄せた。

「じゃあ、また行こうか」
「うん。水はまた生まれたばかりの鳥みたいにさえずってる」
「また逢える?」
「きっとね」

 繋がれていた手と手は離れ、ふたりは笑みをたたえながら、光のなかへ消えてゆく。
シルエットはもう見えなくなって、水はまた鳴いていた。
 感情は水になり、やがて黄金の雨を降らせて地を撫でて、草原に、田園に、人々やすべての命に還ってゆく。



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