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2013-07-03 08:08 | カテゴリ:イケメン・ジョニーはスーパースター?
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--111004_205659.jpg

「それゆけジョニー!」


 青年は空を眺めていた。
 ただでさえ両手を広げれば東西の壁に届く程度の小さなワンルーム・マンションは、彼の生活さながら、混沌の様相を呈している。文明を放棄したようでもあるこの一室は、未知の生命を誕生させるかのような異様な気配が漂っている。

 敷かれたままで通路にもなる布団はしわくちゃ、テーブル代わりの台は青年が描いたらしきイラストと吸い殻が溢れた灰皿、空になったビールの空き缶となぜか一味唐辛子の小瓶。
掃除された形跡はなく、散らかすために存在しているかのような印象さえ受ける。

 南に向いた窓の向こうはすぐそこに迫るほど近くに壁があり、その屋根の上、わずか30センチほどだけ青い空を見ることができた。

 タバコに火を点け、ため息混じりに煙を吐き出す、開けた窓から逃げてゆく秋の空は、澄みわたり、そして遠く感じる。

「借金、かぁ……」
 ジョニーはそう呟く。
彼はいましがた友人に借金をしたばかりだった。
無一文で食事をしたばかりに、その代金を支払ってもらったのである。
「やだなぁ、借金て……」
 借金が好きな人はまずいなかろうが、やはりはジョニーも借金は嫌いなもののひとつだった。

 一万円近くもの大金をどうやって用意すればいいんだろう……俺は資産家の家庭に生まれたわけじゃないのに……ケータイすら止められた状態で、そんな大金払いようがない……。
でも。
 まぁ、いいか。ないもんはないんだから。
 払いたくても払えないもんはしかたないね。

 昼間から数杯のビールをあおったせいか睡魔が彼を包み込む、ジョニーはそのまま布団に寝転び、いともあっさりと借金のことを頭から追い出すことにした。

……タマゴくん、忙しいみたいだし、そのうち忘れるんじゃないかな……。
このとき、すでに彼からは「労働」や「就労」という意識がすでに削除されている。


たすけさん……ちょっとたすけさん……。いるのは分かっているんですよ。

 夢か現か、うつらうつらと眠りに誘われつつある彼に届く声。
呼び出すチャイムが速射砲のように鳴らされる、ピンポピンポピンピンピピピ……その声の主が類い稀なる指先の運動能力を駆使して、ひたすらに連打を続けているようだった。

「うるさいなぁ、もう」
 ジョニーはそれが夢ではなく、現実に自分を呼んでいることに気づいていた、甘い睡魔の誘惑に勝つ気がなかっただけのことだった。
「はいはい、出ますよ、出ますったら」
 散乱の隙間を見つけるように部屋を縦断して玄関戸を開けると、そこに立っているのは初老の男だった。

 あれほどの連打を駆使して俺を呼び出したのはこんなじいさんかよ、思わず眉をしかめ、「どちらさま?」と問いてみた。
その問いかけに、男は怪訝そうに首をかしげる、そしてしゃがれた声で言った。

「大家だよ、大家。あんたんとこの大家」

 アンタントコノオーヤ。
 ジョニーはその言葉をすぐに解読できなかった。寝起きもあるうえ、イントネーションに特有の訛りがあり、外国人と話しているような錯覚を覚えたのである。

 アンタントコノオーヤ……アンタントコノオヤ……アンタノオヤ……。
逡巡するうちにひとつの解答が導き出された。
「あんたの親」。
 つまり、自分の親だと訴えられているわけだ。
しかし……その外見的特徴はジョニーの家系とはまるで違う。
小柄で陰湿な雰囲気があり、どこかネズミを思わせる。声の大きさとは雲泥の、卑屈さすら感じさせる風体。

 ふっふっふ、そうか、そうゆうことか。ジョニーは自らの本能がこの男の正体を暴いた、そんな気がした。
「たぶん、人違いですよ。僕はあなたに育てられた憶えがないですからね」
「……は?」
「僕は金髪ですが日本人です、でも、あなたは日本人かどうかも疑わしい。なにか罠にハメようったって、そうはいきませんよ」
「わ、罠?」
「そうです、あなたは僕の親を語り、なんらかの策略をもって僕を嵌めようとしている。残念ながら僕はそんなバカじゃない」
「……酔っ払ってんの、助さん? 親じゃなく大家、あんたが住んでるこのアパートの管理人だよ」
「……え」

 大家さんだった。




illustration and story by Billy.

前回まではこちら♪
∞イケメン・ジョニーはスーパースター (1話~7話まで)。


(不敵に不定期に続く)
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