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2013-07-02 20:50 | カテゴリ:イケメン・ジョニーはスーパースター?

「それゆけジョニー!」


 散々食べ散らかしたジョニーは口の周りを手の甲でぬぐった。
白い肌には血管が浮き、細いながらもそれはやはり男の手である。付け根の節は尖るようで、伸びた指は長く鍵盤楽器の奏者を思わせる。

「俺さ、そろそろ会社戻んなきゃダメだわ、出ようか」
 コダマくんは上半身を捩り、イスにかけていたジャケットをつかむ。
「……かいしゃ? え、タマゴくん……会社、行ってるんだ……?」
 なぜいまさらそんなことを、コダマくんは思う。
スーツにネクタイ、整えた黒髪。荷物はビジネスバッグひとつである。
サラリーマン以外の何者に見えるというのか。むしろ、ジョニー、君は目の前にて食事を共にした男の何を見ていたのか。

「コダマくんは会社に戻らないとならないんだよ、ジョニー……」
「そうか……すげぇな……立派なオトナになったんだね……」
「なにがどう、すげぇのか分かんないけど。いや、俺ら同級生なんだから、ジョニーだってオトナにはなってるよ」
立派な、の部分にはかなりの疑問があるため、コダマくんはそこを略した。
「はぁ~」
背もたれに体重を預け、満足げな声を漏らす。これほどの食事を摂ったのがいつ以来かさえ思い出せない。
一方、コダマくんもジョニーと同じ声を漏らした、それはまるで種類の違う溜息だった。

「会社なんてさ、ちっとも立派じゃないよ、ジョニー」
「……な、なに急に? だってタマゴくんは……」
 タマゴくんは優秀な成績を持って堂々と有名私立大学に入学し、現在は都内に自社ビルを持つ大企業に勤めるエリートなのである。そう言おうとしたジョニーだが、長くなるので言わなかった。
食事の満足感に浸りたかったのである。

「いまの会社に入れば……うん、そう思ってた。けど、最初だけだったんだよ、それが嬉しかったのは。だけどさ……」
 そのあとは延々たる愚痴がコダマくんから吐き出され続けた、業務内容、人間関係、雇用条件……。彼は彼を取り巻く、人によっては羨望でさえある環境全てに鬱屈を抱え込み、それをジョニーに打ち明けていた。

 しかしである。
 ジョニーなのだ。退屈そうな話である、そう感じたジョニーはすでにコダマくんから関心をなくし、他のことを考え始めていた。
鼻の掃除をしよう。
それも、誰もができないやり方で、自分にしかできない方法で。
おもむろに親指を立てたジョニーは躊躇もなく、それを鼻の穴に押し込んだ。付け根まで入れば、この退屈極まりない状況を打破できるのではないか。指をドリルに見立て、旋回するよう奥へ奥へと捩込んでゆく。

「ジョニー!!」
 コダマくんの声が店内に響き渡った、怒気を込めたそれが空気を一変させる。
「人がまじめに話してるときにお前は鼻なんかほじくりやがって……」
 鼻掃除の臨戦体勢に入ったまま、ジョニーは硬化してしまっていた。
取り繕うよう、だが、特にそんな意思もないままジョニーはこたえる。
「タマゴくん。確かに俺は君の話を聞いてなかった、だけど、解決法ならすでに分かっているつもりさ……」。
「か、解決法……」。
ジョニーは言い放った、この世の中の真理を見抜き、森羅万象すべてを見極めたように。
「会社、辞めちゃえばいいじゃん」
「……え?」
「会社をね、辞めればいいんだよ、それは。じゃあ、タマゴ君の悩みはすべて払拭されるし、食事中に愚痴も言わなくて済む。きっと笑顔だって見せてくれるはずさ」
あまりにも核心をつき、かつ的確で明瞭、簡潔な答ではあったが、どうしてか附に落ちない。
「い、いや、ジョニー……。辞めて……辞めてからはどうすりゃいいんだ?」
やれやれ、そんなことも分からないのかい、ジョニーは大袈裟に首を振ってみせた。
「知らないよ、そんなこと。辞めれば分かるんじゃない、そーゆーことは」
 ジョニーは言い放った。


JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110928_174748.jpg


<前回まではこちら♪>
∞イケメン・ジョニーはスーパースター。
∞イケメン・ジョニーは働かない。
∞ジョニーもようやく何かに気づく。
∞イケメン・ジョニーはやっぱり、頑張るあなたを応援しない。
∞ジョニーは今日も相変わらずで。
∞イケメン・ジョニーは食べることに精一杯で。




(不定期に続く)




story and illustration by Billy.
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