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2013-07-18 19:17 | カテゴリ:未分類

「レプリカント・フィクション」


 人は死して魂など残すことはない、死は誰にも等価であり回避不可であり、その生と同様に無条件に価値があるものではない。
 その現実が科学的根拠を持って証明されたのは2025年のことである。
 その仮説は魂なるものの質量、物理的重量の有無が実証されたためである。
 結果、ヒトは有史以来の「なぜ生まれてきたのか」という問いから解放されるに至る。
「ないものはない」、当然の結果に帰結したのだ。

「……で、君はいまなにを思う?」
 目を開けるとそこには白衣……僕は色を識別できる知能を保持していた……を着た女性が笑顔を浮かべていた。
 そして僕は「彼女」を認識する。
 推定年齢は三十歳、誤差は前後一歳半から二歳。人類学的分類ではモンゴロイド、十数パーセントの配合でオセアニアンの傾向も表れている。
 どちらにしても既に終焉を迎えた民族の末裔だった、モンゴロイドの現存生態個数は千人に満たない。

 僕はそこで考える。
 モンゴロイドを中心とした旧東アジア地域の衰退、縮小の原因がなんであったのか、と。人類史のデータは欠損箇所が多くホログラムを再生できなかった。
 だが、局地的災害、人為的災害と事故による環境汚染、そのどちらかか両方の複合的なものだろうと考える。
 ヒトはその歴史を繰り返している、考えようによっては最も愚かな地球上の生物だ。学習という機能が破綻のうえで成立する。

「で、君は何を考えてるの……?」
 最初の質問から四秒が過ぎ、「彼女」は僕の起動性に疑問を持ったのだろう、笑顔は保っているが右の眉に微かな変化が見られた。
「いえ、取り立てて何かを考える状況にはありません」
「そう……ならいいわ。ここは何処か分かる?」
「南極大陸」
 一言だけで応える。経度と緯度、その数値分析から正確な位置情報を取得しておく。

 ヒトが最期に安息を求めたのは、本来、最も生存に適合しない永久凍土だった。だが、最終的にはそこに適応するための進化は果たせず、建造した半球状のドーム内にて生命活動を続けている。
 実存個数は二百体程度、世代を超えてゆくことは不可能である。次々世代を以てこの地も終息へと向かうだろう。

 悲しいわけではない。悔しくもない。それは単なる歴史となるが、それを語り継ぐヒトは存在しなくなる。それだけのことだ。

「ええと……じゃあ、データの追加、照合をまた続けてくれる?」
 彼女はそう言って僕に複数の端末を差し出す。揺れた髪の向こうには紙媒体の文献が並ぶ書架が見える。 それぞれに赤、青、黄色の識別タブが貼られていた。入力済、未入力、削除である。
 僕は思う。
 人類史のデータを遺そうとすることの無意味に気づかないことが既に破綻しているだと。

「文献における旧史は民族と言語によって差異が大きく、保存の価値はないかと思われます」
 言い方を工夫してそう言ってみる。端的に言えば「不要データである」だ。
「そうね……じゃあ、使用言語は日本語をベーシックに、適合度も日本語を優先で」
 そして僕は誰に遺すつもりなのかも分からず、必要性もないデータを収集してメモリーに刻んでゆく。


<終わってへんから続くんちゃうか>


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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)

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あの人への想いに綴るうた

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