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2014-05-27 12:00 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「絵空事の場所」


 駅から15分ほど歩いたあたりに虹の色を真似た街灯がある、そこで街が途切れてしまう、その先には枯れているのか生きているのか、どちらにも見える痩せた草木が、晴れの日だけロッキンチェアで眠っている老人はビールを片手に水溜りに映った自分に話しかけている、
「街が失くなったとき、唯一、持ち出せたのはこの譜面だけだった」と。
 水と泥と灰を吸い込み、その譜面はもう読めない、すべての記号が滲んでしまって、右下隅の誰かのサインだけはかろうじて読める。
「だけど、このサインが誰のものかは分からない」。

〝JACKPOT DAYS〟-image


 春に咲く花は春の色と風が似合う、そんなことは当たり前だけど、当たり前すぎて意外に誰も気づかない。
 夏に冬の花が、その逆もそう、春に秋の花が、その逆もやはりそう、咲かせる理由はたぶんきっと誰も知らない。

「星がない空だからここじゃ仕事になりゃしない」
 ぼやいてばかりいた星占い師は爪を研ぐふりをする、ほんとは彼には指がないから、それを隠すためにいつもは手袋を着けている。
 望遠鏡の台座のヘビに喰われたって言っている、そいつの指を齧りきってしまったからか、ヘビは台座で石になってしまったという。

〝JACKPOT DAYS〟-image


 街が途切れてさらに歩く、街灯も老人も星占い師も彼が嫌うヘビの台座の望遠鏡もずいぶん離れた、そして、波が立たず泡立つだけの濁った海を臨む岬へたどり着く。

「今日はほんの少しだけ波がある」
 そこにいた少年と少女は同時にそれを教えてくれた。
 ふたりはいつも同じことを言う。天候、季節、潮汐にも無関係に波があると口にする。
 ウソや願望ではない。
 彼らが指差し示したとき、現実に波打つからだ。弱々しく儚いながら、その表面が隆起し、収縮する一瞬がある。それは二人がそうさせているのだろう。
 彼らには名前がない。名付ける誰かさえいなかった。
 彼らだけではない、ロッキンチェアの老人にも、ヘビの台座に指を噛み切られた星占い師にも名前がない。
 この土地にはそもそも名前がない。

 そして。
 ここを訪れた全ての者が、匿名としてしか存在し得なくなる。
 現実にはない場所だ、あるいは架空、絵空事……。ともかく、ここはそんな場所だとして認識され、そんな場所だとしか認識されない。
 途切れた街から続く、途切れた世界の一端。
 だが、無人では、ない。
 



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