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2014-03-31 12:00 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「四月になれば私は」


「……おまえ、なにそのカッコ……」
「いいでしょ」
「どういいのか分からないけど……」
「……あんた、いま、私のことをバカだと思ってるでしょう?」
「いや……うん、まあ。思ってるかな……」
 四月をすぐそこに控えた街をまだ冷たい風が吹き抜けてゆく。あたたかい陽射しは光線になって、そこらじゅうを照らしていた。
 私は卒業したばかりで、髪型を変えたばかりの彼と紅茶を飲んでいた。学校帰りによく来た、公園のベンチ。ほんの少ししか経っていないのに、彼はなぜか懐かしそうな表情だった。

「……で。私をバカだと思っている君。君は春からどうするの」
 魔法使いをイメージした私はとことん日中の公園にはそぐわない。だいたい魔女なんて職業はない。
 バカげていると知っていて、それでもやってみたいことがある。
「あー。まあ……」
 彼は口ごもる、ほんの少し前に豪語していた夢から離脱したばかりだから。
 ズルいとは思わない。でも、仕方ないと思えるほど私たちはまだ諦めることに慣れていない。
 まだ散らずに残ってくれているサクラを眺めた。言葉はなかった。もう手を繋ぐこともなかった。
 ふたりだった。
 いまはひとりとひとりになった。それくらいの時間だけは過ぎてしまった。

「いつの間にか……そんな気がする」
 そうだね。いつの間にか私たちは取り込まれてゆく。季節は私たちを追い出してゆく。過ぎて欲しくない時間だけは駆け足で逃げてゆく。
 子供のときはそんなふうに思わなかった、そう思えるくらいには私たちは大人に近づいてしまったんだろう。

「じゃあさ……」
 ずっと私を見ていたくらたその視線。それもそう、いつの間にかどこか遠くを眺めてばかりになっているって気づいているのだろうか。
「魔法、使ってみてよ。一度だけでいいから」
「魔法?」
「魔法使いになるんでしょ、君」
「そうだね……そうだったよね……」
 ふいに風が鳴る、視線の先のサクラが宙を舞う。
「止まれっ!」
 舞い降りるひとひらに私は出来もしない魔法をかけてみる。
 その瞬間、彼は声にはせずに笑っていた。
 私もきっと笑っていた。

 いま……いま、ほんの少しだけ時間が止まったよね……?








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