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2012-11-02 20:01 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
〝JACKPOT DAYS〟-111222_084632.jpg

目覚めると僕は突き出したレンガの縁の上にいた。
しがみついていたはずの長針からは手を離して落下してしまったみたいで、遥か上に時計が見えた。
僕は生きて動いてる、秒針が回転する音、その瞬間を刻む音が上空から吹きつける風に乗せられて届いてきた。

あのとき……そう、僕が長針にしがみついて止まってしまった時間を動かそうとした瞬間……突然、動いた針の振動で僕は落っこちてしまったんだ。たった一分の時間の経過だけで、あんなに大きく揺さぶられるなんて考えてなかった。
「……雪?」
周囲を見渡すと白く光る結晶が舞っていた。手のひらでそれを受け止めてみる、みるみるその結晶は僕の体温に溶けてゆく、小さな星があたたかな水に変わってゆく。

それは雪じゃなく、時計の文字盤や針を停止させていた氷の破片だった、再び動き始めた時間が氷を小さな粉にして、僕やずっと下に眺めるバースデイ・タウンに粉雪を降らせていた。
帰ろう。
僕はそう思う、ルッカの待つ僕のふるさとへ。彼女と育った大切な街、バースデイ・タウンへ。
時計は時間を刻んでる、バースデイ・タウンもきっと動いてる。
ルッカが僕を待っている。


〝JACKPOT DAYS〟-111222_084621.jpg


「おかえり」
バースデイ・タウンで僕を待っていたのは、少し大人びた笑顔のルッカだった。
髪型のせいかな、そう思ったけど、よく分からない。
「ただいま」
ずいぶん久しぶりみたいに思った。笑顔の彼女、生きて動いている彼女。
「ね、見て」
ルッカは言う。指差したのは、もう高く遠すぎて微かに輪郭がつかめる程度の、あの時計。
「ロッソ、君がさ、時間を取り戻してくれたんだよ。だからバースデイ・タウンはまた動きはじめたの」
時計じかけの街、バースデイ・タウン。
粉雪は溶けて小さな雨になり、ささやかに降り続けていて、街の外にはアーチがかかっていた。
虹だった。

虹を見つめながら、僕はそっとルッカの手を握る。柔らかくて温かい手。生まれて初めて、つなぎ合わされた手。何も言葉はなかったけれど、気持ちもつながったように彼女の手にも少しだけ力が入る。

また僕たちは時間を刻んで生きてゆくんだろう。
街にまた夜がくる。
明日の朝、またいつものような優しい時間が来るとは限らないけれど、それでもいい。
時間が止まってしまったら、また動かせばいい。
優しい夜がすべての人を包んでくれたらいい。
いま、僕はそう思った。


〝JACKPOT DAYS〟-111221_121033.jpg

〝JACKPOT DAYS〟-111222_084737.jpg

時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>
時計じかけのジュヴナイル <7>
時計じかけのジュヴナイル <8>
時計じかけのジュヴナイル <9>
時計じかけのジュヴナイル <10>

時計塔のある街で

「時計じかけのジュヴナイル <クリスマス編 おわり>」


all illustration and story by Billy.
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