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「おおー…………っ」
 感嘆の声をあげた男たちは取り囲んでダンボールの中身を見つめていた、そのなかに詰め込まれているのはCDだった、彼らバンドにとって記念すべき初の音源、デビュー・ミニ・アルバムである。
「ダストスター・ギヤ・パンク」と名づけられたそのアルバムは5曲入りで1500円、初版5000枚である。

「長かったような短かったような……だな」
 根元まで吸い込んだタバコを空き缶のなかでからからと振る、満足げなため息とともにヒラサワくんはその一枚を手にとった。
 平坦な道のりではなかった、むしろ、この日が来るとも思えなかった。しかし、新人というにはいささかの年輪を感じるその手には自身がリーダーを務めるバンド、自らのベースが仲間と共鳴する音楽が封じこまれている。
 感慨深い……これ以上の言葉は思い当たらない。そして……俺たちはまだこれからなんだ……。

「ヒラサワくん……?」
 声に気づくと両側から覗き込む顔がふたつ。ジョニーと天野くん(ジャック)である。
「なに……ひとりでブツブツ……お腹痛いの?」
 悲しみの表情さえ浮かべ、ジョニーはヒラサワくんに問う。
「え……? 俺、なんか言ってた?」
「年金とか工藤ちゃんとか海外出たいとか……ずっと喋ってたよ、なあジョニー」
 怪訝に眉をしかめて天野くんが見つめている。
「…………なっ……? え、俺、喋ってた?!」
 ヒラサワくんは知らぬうちに呟いていたようだった、頬がみるみるうちに紅潮する。
「い、いや、なんでもないよ、独り言だよ?」
 数秒間を掻き消すかのように彼は手を振った、離陸しそうな高速運動だった。

「これでついにロックスターに……」
 ジョニーは笑みを浮かべた、視線は鋭く窓の外の夕陽を射抜いている。
「うん……うん……」
 天野くんも同意する、感極まってか涙を浮かべていた。
 まるで無名のインディー・バンドが一枚のアルバムでスターダムにのし上がれるはずはないのだが、彼らにそんな冷静さがあるはずもない、地上数十センチは浮き足立っている。
「や、ジョニー……水を差すようで悪いが……そんな一気にスターにはなれないから……」
 冷静さを取り繕うようにヒラサワくんが言う。
 そう、彼らはこのアルバムを携え再び旅に出ることになる、なにせ借金があるのだ、それを返済するために組まれたハードなスケジュールが待っている。
「全部売れたら……何億円とかになるのかな……」
 ジョニーは話を聞いていなかった、そして計算もできていない。全数が売れたにしても一千万にも及ばないのである。
 そしてまた彼らに旅の季節が訪れる。男たちは旅芸人なのだ。

「高く飛び上がるには助走が必要だからさ」
 ヒラサワくんは言う。それに呼応するかのように、ジョニーは事務所を飛び出し、夕に暮れゆく街を走っていった、徐々に速度をあげ、やがては音速にまで到達するだろう。


〈ロックンロールはつづく……ついでに、ジョニーさんも連載一周年。〉

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