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“JACKPOT DAYS” all performed by Billy.-パンクロッカー ジョニー.jpg



 青年は欠伸を堪えていた、曲がりなりにも勤務中であるという意識が働いていたのである。
 店内は薄暗い、レジから離れたトイレ付近の照明は明滅を繰り返し、さながら怪奇映画の様相である。その白色灯の規則正しい点滅を眺めないよう、彼は前方やや下あたり、レジカウンターに貼りつけられた「おでん一品50円から!」の文字を逆さに睨んでいた。
「50円か……安いな……俺はタダだけど……」

 勤務先であり、休憩室を占拠してしまった状態のジョニーである、失態は許されない。解雇されてしまえば、その時点で彼は仕事と住居、そのふたつを同時に失くしてしまう。
 そうでなくとも、すでに幾度となくミスを重ねてしまっている、店長による「次やったらオマエ、もうクビだからな」、その言葉が呪文のようにジョニーの脳内を駆け巡る。

「……とは言え、ヒマはヒマだな」
 誰ともなく呟いてみる。
 深夜のコンビニ、チェーンではない独立愚連隊のような店である、その外観からは店舗であるかどうかも怪しく、日中にも増して客は訪れない。勤労意欲がほとんどゼロのジョニーに相応しく、店自体もそれほど真剣に経営はなされていないのだ。
 経営者も午後九時までにはジョニーに店を任せ、自宅なのか飲み屋なのか、ともかく何処かへ消えてゆく。経営に対する意欲はそれほどないようで、店が店として存続できていればいいらしい。そのあたりの詳しい事情を聞いたには聞いたが、とくに関心もなく、ジョニーの記憶からは削除されてしまっている。



 安酒で全身を満たし、よれよれとひと気のない住宅街をゆく不審な者がいた、真冬だというのにレザーのライダースの下はTシャツだか、破れたデニムからは寒風に晒され、赤くなった細い膝をのぞかせている。
 毛玉だらけのニット帽を深く被り、餓死を直前に待つ野犬が最期の気力を振り絞るよう、においの元を探していた。
 思えば数日間、ろくなものを口にしていない。食糧目当てに忍び込んだライブの打ち上げ会場も、所詮はアマチュアのパンク・バンド、数だけを集めたアルコールと寄せ集めのスナック菓子のみだった。

 彼はパンク・ロッカーである。
 いや、ほんの数週前までパンク・ロッカーであった。やはりアマチュアのバンドを率いていたが、メンバーでありバンドの顔であったボーカルが脱退してしまったのだ、以降、彼のバンドは活動していない。こっそり紛れた打ち上げでは食糧にありつけず、そしてバンド活動も座礁してしまった。やけ酒では酔えども抱える問題はひとつとして解決しなかったのだった。
「サマになるボーカルさえいれば……ホンモノのパンクスさえいれば……」
 彼はぶつぶつとつぶやきながら、暗い住宅街に漂う匂い……おでんではないだろうか……に吸い寄せられ、こじんまりとした、薄汚い商店の扉を開けた。

「……っしゃいませ」
 お世辞にも歓迎されているとは思えない、やる気のない返事だった、だが、その声の主と視線が激突した瞬間、彼の体はイナズマに撃たれたように、あるいはマシンガンで蜂の巣にされたような、そんな衝撃に襲われたのだ。
 レジのなかにいたのは……痩身にして長身、獲物を狙う獣のような鋭い眼光、くわえて客商売とは思えないふてぶてしさ。逆立つ金髪とその派手なアタマがサマになる外見。
 ジョニーである。

「うおおおおお!!」
男は興奮のあまり叫んだ、店内であることさえ忘れて吠えた。
……こいつだ、俺が探していたホンモノのパンクスは……!!
 なんだ、この胸の高揚……運命ってヤツか。まさかこんなショボくれたコンビニ紛いで探し求めた真のロックンローラー、リアルなパンクスに巡り合うなんて……!!

 なんだこのヒト……。ジョニーは入店するなり雄叫びをあげる極めて不審な客を訝んでいた。
 ウオオオオオ、か。
 魚……ここは鮮魚店ではないんだけど……。か、帰ってくれないかな……。怖いな……。
「き、君!! 名前は? 名前を教えてくれっ!!」
「……ジョニー……ですが」
「ジョ、ジョニー……」
 この男……まさかあのジョニー・ロットンの生まれ変わり……あ、いや、ジョニー・ロットンは生きてる……じゃあ、シド・ヴィシャスの……!! なんてことだ、俺は、こいつとバンドをやらなければならないんだ……!!
 意味のわからない義務感が彼に去来した、思考は飛躍し、矢継ぎ早にジョニーに質問を投げ続ける。
「き、君、パートは?」
「パートではなく、アルバイト……どっちでもいいかもしれないけど」
「じゃなくて! バンドやってるだろ、担当はっ?」
「よくわかんないけど、番頭つうか店番……かなぁ」
「店番よりパンクやろうよ、ジョニーくん!」
「パン食うなら……買ってから外で食べてくんないかな……」
 違うよ!!
 不審者はそう叫んだ。
「僕とバンドやろう!! 君は……ジョニー!! 君はホンモノのパンクだ、俺とロックンロール・スターになるんだ!!」
 ロックンロール・スター。
 スター。
 そうか、それだ。スターになる。かつて求人誌でスターの募集を探したじゃないか。俺は……ロックンロール・スターだったんだ……。
 始めてさえいないのに、ジョニーはロックンロール・スター気分になってしまっていた。

 ジョニーはパンク・ロッカーになった。



check!!

失笑必至の前回まではこちら♪


(不敵に不定期に続く)



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