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2012-08-19 20:00 | カテゴリ:短篇小説「祈り火と過ぎる夏」
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110824_125113.jpg


祈り火と過ぎる夏<1>
祈り火と過ぎる夏<2>
祈り火と過ぎる夏<3>
祈り火と過ぎる夏<4>
祈り火と過ぎる夏<5>
祈り火と過ぎる夏<6>
祈り火と過ぎる夏<7>
祈り火と過ぎる夏<8>
祈り火と過ぎる夏<9>
祈り火と過ぎる夏<10>


 夏はもう残りも少なくなって、そのわずかな力を絞るように地上を照らしていた。
いまこの瞬間もどこかで誰が死を迎え、入れ替わるように新たな命が誕生したはずだ、それは繰り返し再生を続ける世界そのものの在り方とも言えるかもしれない。

 ミズキは東京に戻り、いまはまた元の生活を続けていた。そしてまたひとつ年齢を重ね、20代も後半を迎えた。
あの夜と明け方に見た大輪……そう、集まった人々が祈りを託したあの太陽は今日もまだあの日と同じように遥か上空で輝きを続けている。
見上げるとあまりにまばゆく、目を細めて左手で日陰をつくる。
垂れ下がった銀色のチェーンの時計は正午を指していた。

 あの日はまるで何かが始まり、何かが終わる、その両方を一度に経験したように記憶している。
 父とは会っていない。
彼には彼の新たな生活があり、すれ違った私たちはまたそれぞれにそれぞれの道を歩く、そう思うことができる。
道行く人々は相変わらずの日常を過ごしているようで、きっとそうでないんだろうとミズキは命というものを思い描く。

 昼食を終え、再び会社に戻る、次の取材先やその土地、プランを書き連ねたファイルを開こうとすると、見覚えのないメールが届いていることに気づいた、それは土地の再生を誓って奮闘する一人の青年からだった。

<元気ですか? 僕は変わらず元気です。まだまだ時間はかかるし、この先がどうなるかは分かりません。でも、この土地に生きることを選んだ者として、また新しい種をまき、少しずつ咲く花を見守り、いつかまた……いや、以前と同じには戻らないけれど……それを承知でゆっくりと歩いていきます。
また、祈り火の季節に会いましょう>

 その手紙を息もつがずに読み切ると、ミズキは大きく深呼吸して目を閉じた。
また生きる。まだ生きる。
どちらでもいい。生きることには違いない。
カメラを手にして、彼女はまた取材にゆく場所のピックアップ作業にとりかかった。
生きている限り、止まってはいられないのだ。


JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110818_181503.jpg



<終わり>



photograph,illustration and story by Billy.

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