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2012-08-19 19:57 | カテゴリ:短篇小説「祈り火と過ぎる夏」
祈り火と過ぎる夏<1>
祈り火と過ぎる夏<2>
祈り火と過ぎる夏<3>
祈り火と過ぎる夏<4>
祈り火と過ぎる夏<5>
祈り火と過ぎる夏<6>
祈り火と過ぎる夏<7>
祈り火と過ぎる夏<8>
祈り火と過ぎる夏<9>


 それぞれが持ち寄った花火たちは残り少なくなり、そして見知らぬ同郷の人々、この地に縁のある人々はぽつりぽつりと自らを語り始めた。
ある人は生まれ育った地であり、現在は他の地にて生きている。
またある人はこの地に生き続けてきたが、今回、別の土地に生きることを決意したと言う。
迷いはあるが、今後を考え、土地の再生に余生を費やす覚悟があると話す老夫婦がいて、しかし、それにどれくらいの時間が必要なのか、それは分からないとこぼした。

 最善であるべきこと、それは誰にも分からない。
今日を生き延びた、しかし、明日が無条件に用意されているとは限らない。

「もともとは……」
 ソウスケは遠く昇り始めた太陽に向けて話しはじめる。隣にいるその横顔が赤い陽に照らされ、徐々にはっきりとしてゆく。
伏し目がちな眼差しと、こけ落ちた頬。もつれた少し長い髪。
ミズキはその青年のかすれた話し声を目を閉じて聞いている。

「祈り火の祭はもともと、この地に生きて亡くなったご先祖に生きた花を流して海に送るのが、そのはじまりだったらしいんです。あまり知られていないけれど、ここは農地にも漁場にも向かなくて、それを人が住める場所にしたのがご先祖さまたちだから。いつの間にか村興し、町興しの祭になって、少しずつかたちを変えてしまったんですけど……」
 小舟に灯火を浮かべて祈る、願う。ずっとそう思って祭を見てきた。ミズキはその歴史を知らなかった。
「じゃあ、いまの祈り火の祭は、先祖の方々にはあまり喜ばれないかもしれないね」
「そんなことはない」
 ソウスケは即座に返す。やや語気を強めたが、ミズキに向けられたのは精一杯の笑顔だった。
そんなことはないよ、ソウスケはもう一度、そう言った。
うん、ミズキはただそれだけを返す。

「ほら、また新しい日が来た、祭ではなかったけれど、祈り火そのものかもしれない。ね?」
 立ち上がったソウスケは誰かにではなく、自分に告げるように、けれど、その場を共にする人々にも伝えるように、東に浮かび上がる大輪を指差した。
その背中をミズキはいつまでも記憶していようと見続けていた。


JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110824_182032.jpg




story and photograph by Billy.


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