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2012-08-19 19:37 | カテゴリ:短篇小説「祈り火と過ぎる夏」
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110719_153617.jpg

祈り火と過ぎる夏<1>
祈り火と過ぎる夏<2>


 カメラをかまえながら、けれどシャッターを切ることもなく、ファインダー越しに故郷を睨んでいた、そして無邪気な暴力によって急激な変化、破壊された村をくまなく歩いてみる。
祈り火の小舟が赤々と連なり流れる、あの川のほとりをとぼとぼとゆく。
河川敷には本来、たどり着くべきでないものが数多く見られた。
例えば村にひとつだけあったバス停、あるいは家屋か農作業小屋か、その痕跡を感じさせる瓦礫、壊され、原型を失ったものもの。
 河川の氾濫は容易に見てとれた、防波堤代わりに植えられたはずの松の木々が折りちぎられ、そして、行き場をなくしたようにそこかしこに放置されたままでいる。

 村人の多くは隣町の小学校に避難しているそうだ、すでに故郷を離れ、別の土地での生活に踏み切った者もいると聞いた。そもそもが過疎の進んでいた土地だ、このまま名だけを残して消えてゆくのかもしれない。
 今年は祭どころじゃないかもしれない。
 正直にそう思う。いま、何の祈りを、願いを火に委ねるのだろう。
私は思う。
かつてここに生きた者として、そしてその地を離れ別の地を選んだものとして。

 取材も何もなかった。
私はかつての故郷を、変わり果てた風景に溶け込むことのない異物として海から吹く冷たい風を正面から受けている。
 帰ろう、私は思った。
「帰ろう」か。ふと思ったことに自分の変化にも気づく。私の帰るべき場所はもうここではなくなっているんだ、記憶の遠くに置き去り続けた故郷はもう私の場所じゃない。

 ミズキ、背後からかすれた声が聞こえた。
私の名前、私を呼ぶ声。
聞き間違いかと振り返る、声の主は、あの日、光のなかに消えた父だった。




photograph and story by Billy.
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