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2012-06-13 07:47 | カテゴリ:3minute rockin novel




 それが幻のようなものであったとしても……誰にも説明できず、その必要もきっとない……私は時間を超えて、生きている現実を超えて、空想の果てにある、現実の対岸に存在した『世界の終焉』という着地点に小さく飛躍した。
 そこにいたのは、『君』としか呼んだことのない、対岸に生きる男の子。
 彼は多くを話すことなく、ほとんど何も話さないまま、私が逃避の先に見た景色……それは私が生きる世界と平行して存在するもの……そんな光景に導いてくれた、それはやはり美しくも儚い命そのものだったような気がする。

 別れの挨拶なんてなかった、気づけば彼の姿はなかった、本当にあっけなかったけれど、それでいいんだと思う。
 疑問だらけだけど、それは私が生きる世界も、束の間、体験したもうひとつの世界も、きっと変わらないんだろう。
 私がいま立つ場所にしても、それは変わらず疑問符ばかりがあたりに浮かんでる。答えなんて……なくてもいい。明確な解答が用意されてしまったら、きっと、その瞬間にありとあらゆるものは終焉を迎えてしまう。

 対岸は別の世界のように見えて、少しだけ足を伸ばせばちらりと私たちに振り返る。想像に過ぎない世界は想像の範囲なだけ、やがては現実にも変わってゆく。

 駅のスロープから見える川、黄金の夕陽と伸びてゆく影。梅雨入りしたばかりの湿った風、名前も知らない二人が並んで歩いてゆくのが見える。
 私たちは何も知らない、そして私たちを知らない誰かは、いま、私が眺める景色に溶け込むふたりを同じように眺めたのかもしれない。

 私は思い出す、そして少しずつ忘れてく、楽園は過去として記憶のなかで変化もしてゆく。
「バイバイ」
 そうつぶやいた。行き先のない声はぽとりと地面に落ちてゆく。
 一歩を踏み出す、それから駅に背を向ける。立ち止まって振り返る。階段から吐き出された人々が家路を急ぐ。
 人の波に追い越され、そのなかに紛れてゆく。
「バイバイ」
 聞き覚えのある声が聞こえたような、そんな気がした。
「じゃあね」
 私は水溜まりに映った太陽をジャンプして、その向こうへ駆けてゆく。


<前回まで>
楽園はイレギュラー
楽園はイレギュラー #2
楽園はイレギュラー #3
楽園はイレギュラー #4
楽園はイレギュラー #5
楽園はイレギュラー #6
楽園はイレギュラー #7
楽園はイレギュラー #8

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