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2013-06-30 15:48 | カテゴリ:イケメン・ジョニーはスーパースター?
イケメン ジョニー イラスト 画像

「それゆけジョニー‼」


モデル 桐谷美玲 イラスト 画像

 まるでつむじ風のような速度をもってジョニーとまどかさんは帰ってきた、本当に走ってきたようだが二人は息もきらせていない。
 決意のあとだ、まどかさんは吹っ切れた表情を浮かべていた。
「……ん? なんかいい匂いがする……」
 子犬のように鼻をひくつかせてジョニーが言う、彼らのアジト……練習場所と住居を兼ねた納屋……は、すぐそこに見えている。

モヒカン リーゼント バンドマン イラスト 画像


「あっ、帰ってきた。おーい、ジョニー!」
 遠くから手を降るモヒカンがいた、その隣のリーゼントは団扇を仰いでいる。
「よっ、どこへ行ってたんだよ?」
 帰還したふたりを待っていたのはバーベキューだった。
 待ちぼうけを食わされていた天野くんとヒラサワくんはあろうことか狭い路地裏にてバーベキューの用意に勤しんでいたのである。
「こんなところで火を……ガチンコのバカね、あんたたち……」
 怒りや呆れを越え、もはや浮かべるべき表情もないようだった。
「これかぁ、いいニオイは……」
 一方、ジョニーは顔をほころばせる、お腹も鳴る。
「よし、じゃあ食べよう!」
 網の上では蛤が開き、焼けた肉が音を立てていた。

 ほんの数時間前まで解散の危機だったバンドとは思えない風景だった。久しぶりに雨はあがり、西から赤い陽が刺している。

……知らないまんまでも、わざわざ言わなくってもいいや、まどかさんは思う。
……肉に肉に肉に魚介に……美味しそうだなぁバーベキュー、ジョニーは思う。
「ほら、これ」
 ヒラサワくんはふたりに缶ビールを差し出した。
「……で、ジョニーとまどかさんはどこに行ってたんだ?」
「え……ああ……それは……」
 ふいに問われ、まどかさんは答えに詰まる、あえて真実を告げるべきでもない。
「うんこだよ」
 当然のようにジョニーは言う。そして矢継ぎ早に肉を頬張る。
「ちょ、それまだナマ……」
 慌てる天野くんを尻目に、焼けているかどうかをまるで気にせずジョニーは喰う。
「……うんこ……? なんだそりゃ?」
「めちゃめちゃでっかいウンコしてきたって気分なんだ」
 親指を立てて笑顔さえも浮かべてみせる。その発言に迷いはない。だが、やはり真意は伝わらない。
 ほんとバカだなぁ、コイツらって……まどかさんは思わず吹き出しそうになる。
「ジョニーが言ったとおりよ。あんたたちはバンドやるの。最強のバンドね。あたしが飼育してあげるわよ」
 缶ビールで頬を赤くした彼女は言った。
「飼育……この前は調教だったのに……」
 ますます酷い言われようだな、そう思いながらヒラサワくんは笑っていた。
 そしてこの夏もロックンロールが続いてゆく。


<来週もロックンロールが続く予定>

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前回までのおバカさんたち。


流星 ツアー 表紙 画像

〝JACKPOT DAYS〟-image

あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)

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あの人への想いに綴るうた

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2013-06-27 10:34 | カテゴリ:Simplog
イチロー 宝 国宝

■イチロー選手 #イチロー #野球

 なんのかんの言っても、イチロー選手が日本人の誇りだと思う。


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2013-06-26 08:47 | カテゴリ:少年ゾンビ高橋。
少年 ゾンビ キャラクター イラスト 画像


「少年ゾンビ高橋。#4」


モデル 西島秀俊 イラスト 画像


ゾンビ 少年 イラスト 画像


 冗談だろうと思いながら巡査は消臭剤と防腐剤を手渡した、いつから放置されていたのかさえ分からない、ラベルは色褪せ、埃が白く積もっている。
「体に悪いと思うよ……」
 ムダだと思っていながら、一応、注意だけはしておく。
 曲がりなりにも彼は警察官なのである。
「そんなの分かってるから」
 意に介さぬ様子で高橋くんは喉を鳴らして一気に飲み干した。その姿はまるで部活動のあとの麦茶を飲む少年のようである。

……厄介なのに関わっちゃったなぁ……。
 巡査は思う。なぜよりによってゾンビなどがこんな平和な村にいるのか。そもそもそんなものがほんとに存在するのか。
 逡巡しても答えはない。あるはずがない。
「で。君はこれからどーするんだい?」
「どーするって言われてもね……」
 その表情に困惑はない。諦観も達観もない。特殊な状況を受容するほど大人ではなさそうだが、少なくとも嘆いてはいない。
「まぁ……夢を持って生きてくよってワケにもいかないし。死んでるみたいだしね」
「君、親御さん……とかいないのかい?」
 穏便に済ませられる事象なのかどうか分からないが、ともあれ交番に置いてゆくわけにもいかない。
「んー……。居ないんじゃない? そのあたり記憶にないけどね」
「そう……」
 参ったなぁ、巡査はそう口にする。
「映画とかなら……うん、研究施設とかに保護してもらうところなんだけど……ググッても出てこないだろうなぁ……」
「おまわりさん、現実を見なよ。そんなのあるわけないじゃん」
「けど、ここにいられても困るんだよ……交番はゾンビ少年の宿泊所じゃないんだから」
 高橋くんと巡査は同時に腕を組み、そして溜息をもらす。
「行き先が決まるまでこの町で静かに暮らしてくよ」

 高橋くんは身寄りのない孤独な老人のように答えた。


<なんとなく続いてしまうらしい……>

個人的に忙しい状況で更新が変則的になりそうなので、コメント欄を閉じることが増えそうです。ご了承くださいやで。
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少年ゾンビ高橋。
少年ゾンビ高橋。 #2
少年ゾンビ高橋。#3


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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)

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2013-06-26 01:51 | カテゴリ:文芸パンク
ユーキリス パブリック・エネミー イラスト 画像

「パブリック・エネミー」


まるで造花のようだった、表情のひとつさえない、
愛した人は手のなかで、凍る色で永久の眠りに、

足元の砂をつかんだ、手のひらにできた砂漠は、
潤いもなく崩れてく、下卑た笑いに視線を送る、
奴隷商は笑ってた、

弱きはさらなる弱きを見つけ、
晒し出してひたすら叩く、それが此処の在り方らしい、
神々は黄昏る、人は愚かに人を売り買い、
卑しい力で跋扈する、

血を吐き出したユーキリス、
俯いて嗚咽を殺す、握りしめた手のひらに、
閉じた瞼に浮かぶ者々、それを地獄へ導く術を握りこむ、

逆襲のユーキリス、
踏みつける、孤独が凍る痛みに変わる、
名を変え、背中に終わりを背負い、
薄暗い地下から地下へ、
奴隷商へと変わるたび、
悪辣へと下卑た笑いを浮かべては、
死を売るものへと身を落とす、

失くしたものをいくつ数えた?
首筋には幾多のキズが、
目を閉じ恋人描いては、
そこにいるのは笑顔だけ、
ユーキリスは踏み出した、
足跡には傷痕が、
そして二度とは振り返らない、
彼はもう血も流れない、


━━━━━━━━━━━━━━━
<you can REDO.>
荒天のクライフ
シューレス・ジョー
フリックスター


〝JACKPOT DAYS〟-image

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2013-06-25 22:56 | カテゴリ:文芸パンク
〝JACKPOT DAYS〟-110517_194133.jpg

「砂時計の街のデューイ」


その街、どこを見上げても時計があった、
どれもが狂ったまんま動いてる、
誰もそれを気にしないのか、或いは慣れてしまっているか、
それぞれがそれぞれに、好きな時間を刻んでる、

バスは日に2度、街を出てゆく者だけを乗せ、
そしてひたすら南へ向かう、
太陽が充ちる場所、
そこには何があると云うんだろう、
乾ききったエンジンは、泳ぎ疲れた魚みたいだ、

デューイを名乗る男は盗賊、
何もかもを盗んだあとだ、欲しいものなど何処にもないと、
宝のありかばかりを記した地図を焼く、

盗んたものは片っ端から売り飛ばす、
奪えないなど世界にはない、
“誰も彼も大事なものなど持っちゃいないさ”
欲しいものなどひとつもない、
手にした途端に売り捌く、

ある日、デューイは酔いの醒めない朝に気づいた、
傷つけたぶん傷ついてたんだ、何もかもを手にしたようで、
どうしてこんなに乾いてるんだ、

メモ帳めくって、せめて話し相手を探す、
そうか、もうこの街には誰もいないか、
痛みが走る体で窓の外を眺め見る、
痩せさらばえた、
その胸に手をあてて、

乾きの果てに涙も出ない、
乾きの果てに涙も出ない、


〝JACKPOT DAYS〟-image

〝JACKPOT DAYS〟-image

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2013-06-25 11:56 | カテゴリ:イケメン・ジョニーはスーパースター?
photo:03


「それゆけジョニー・サマー!」


photo:01


「まどかさん、あのさ……」
「ん?」
 燃え落ちる西陽を背にしたジョニーがいる。か細いシルエット、頼りないライン。酷使のせいか掠れた声。
「俺……商売とか契約とか……そーゆーの分からないけどね」
「うん」
「ヒラサワくんとか天野くんと……まどかさんもそうだし……バンドだしチームじゃん。ここでバンド辞めちゃったらダメだよ。先のことなんか知らない。続けてもダメかもしれない。でも、辞めて、諦めても後悔すると思う。それならさ……」
「なら……?」
「バンドやろう。俺らはロックンロール・バンドなんだから」
「……お、お前……」
 たまには……いや、初めて良いこと言ったんじゃない? だけどそれは言葉にならなかった。しなかったのかもしれない。
「まどかさん。帰ろう、ヒラサワくんや天野くんがいる、俺たちの場所に」
「うん!」

 そうだよ、彼女は思う。
 どのみちバクチ稼業なんだ、やりたいことをやらないと言い訳しながら生きてゆくことになる。
 諦めさえしなければ、きっと私たちは最強になれる。
 だから行くんだ。見通しがなくても甘くってもいい。
 生きていればさえ奇跡は毎日起こせる、そんな気がする。
「よし、帰るかジョニー!」
「うん!」

 ふたりは一気に駆け出した。睨みつけるのは風の先の一点だけだ、未来は無条件に呼んではくれない、迎えにゆくくらいのつもりで走る。

……後。
 人の限界を超えたふたりの暴走は「突如発生した小型のハリケーン」として報道されるに至る。
 誰ひとり怪我がなかったのが幸いだった。

photo:02



<ロックンロールは加速しながら続いてゆく……>

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ジョニーが読めるのはここだけ!

〝JACKPOT DAYS〟-image

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2013-06-25 10:08 | カテゴリ:文芸パンク
イケメン 油彩 イラスト 画像


「移民の歌」


風が鳴り始めた。
西から東へ、少し尖った乾いた風。海に舞う鳥みたいな泣き声。
新しい風なんだろう。どこから吹き、どこへ流れるのか、僕は行く先を眺めてみた。
荒れた地がひろがる。そこなは道らしい道はなく足跡も見当たらない。

僕は思う。
風の声に耳を澄ませ、空が涙すときは両の手を広げ、稲妻が喚き散らす夜にはその叫びを浴びてみようと。

朝焼けに目を細め、幾億の星を数え、太陽に灼かれても砂上を歩き、凍てつく氷の国でも立ち止まることはなく。

新しい世界で新しい名前を呼び、
新しい街で新しい想いを抱き、
新しく出会う人々の鼓動を、この痩せた体に刻み続ける。

光を追い、光を求め、闇に触れることを恐れることもなく、この2本の足で歩き続ける。

孤独に負けない心を持ち、体温と同じくらい優しい言葉を探してみる。

抱いた想い、そんな全てを自分の言葉で紡いでいたい。
愛だとか自由だとか優しさだとか。
希望や願い。
かたちにはならなくとも誰もが胸に宿らせる、命への想い。

少し休んだら、また、立ち上がろう。
目を閉じて、微かに感じる光に手をかざして。

〝JACKPOT DAYS〟-image

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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
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2013-06-24 08:42 | カテゴリ:poetrical punk 00B
“JACKPOT DAYS” all performed by Billy.-110623_172129.jpg

「野生の花々」


荷をトランクに詰め込んで、
青空の下、錆びたオレンジ、
土にまみれたタイヤはヒビ割れ、
埃が下がるミラーに映る、
いまはもう過去、過ぎた日々に口笛を吹く、
もう誰もいなくなった、
枯れ地に潤いだけを求めた、

雨季は何度も通り過ぎ、
続く灼熱、過酷な熱に背を撃たれ、
痩衰えた芽を抜いた、
かつてこの地に咲き誇りし赤い花、
ここに生きるがいる限り、続く命に限りはないんだ、
話す相手がいなくても、
手に地を握り、寝そべっては行く雲を見た、

“この地に花が咲くことはない、
土はもう死んでいるんだ”

嘆きと怒り、残されたいくつの言葉もいまなら笑える、
俯き加減に唇を噛む、笑えるような気がしただけだった、
青年はいま、この不毛の地を後にする、
苦渋の決意をかためたばかり、

いつかまた来る、強くしなやかなる手をもって、
歓喜の種を携えて、途切れた時間を繋ぎにくるから、
大地を抱きしめるくらいの慈愛、
僕にはそれが足りなかった、

18回目の夏が来て、
坂の向こうには海が、軋みながら走らせる、
ひび割れたサイドミラー、そこにゆらめく白い花、
別れを知って笑ってた、気づくことなく旅人はゆく、
気づかぬまま青年はゆく、

死にゆく大地はどこにもない、
やがては命が芽吹き出す、
ほら今日もまた、誰かが新たに生まれては、
連綿たる命が続く、



〝JACKPOT DAYS〟-image

〝JACKPOT DAYS〟-image

あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
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2013-06-20 18:46 | カテゴリ:poetrical punk 00B
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110617_113318.jpg

〝green〟


再び色を取り戻す、一度は落ちた歩道橋、
君が摘んだ生まれたばかりの緑、
走り抜けた日々、ふと振り返る、
曲線上を何度転んだ?

ほどけた靴紐、あげた手首はアロハのシュシュが、
息を弾ませ飛び上がる、
泥まみれのスニーカー、橋の下のバス停で、クラクションは騒々しいだけ、
いまになればこそばゆい、流行りの歌が空回る、
ありったけの熱だけが、
転がりながらも傷も恐れず、

雷が近づいた、
あの日は振り始めた雨を、避ける傘が花をつくった、
そこらじゅうには虹を待ってる人だかり、
空を切り裂く金色の線、心臓にまで響いてた、
地表にそいつが降り注いでも、当たるはずがないと知ってた、

終わらないもの、
そんなのどこにもないって分かる、
ときにこの空、仰いでみても、
なにが変わるはずもなく、ずるずる重ねるだけじゃなく、
明日を笑うくらいで、

あの日の手の温もりは、もう残っていないけど、
過ぎたことだと割り切れず、
いつもどこかで思い出す、
もう誰のものでもないのなら、
ハンモックでも吊してさ、しばらく休んでゆけばいい、
動物たちもやってくるから、


〝JACKPOT DAYS〟-image

〝JACKPOT DAYS〟-image

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2013-06-20 12:00 | カテゴリ:文芸パンク


「淋しがり屋の部屋」


淋しがり屋は小さな部屋を、もので埋め尽くしてる、
例えばひとつ、ありとあらゆる笑顔を載せた、
新聞紙の切り抜きだった、そこにだけは信じられる、無垢がいると思えたんだ、
壁には一面、古い古いサーカスの、
ピンナップを貼り巡らせて、目を閉じ耳に手をあてて、
喧騒、嬌声、聞き覚えの声を合わせて、
サーカスを待つ高揚を、胸の奥に浮かばせる、



CLICK STAR SWITCH

閃 ロックンロール ワールズエンド
天 草原 蟻
ゾンビ 祈り 砂時計


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2013-06-20 10:41 | カテゴリ:少年ゾンビ高橋。
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「少年ゾンビ高橋。#3」


photo:01


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 泥水にまみれ汚れた衣服はほころびも目立つ。見る限り欠損箇所こそないものの、彼自身の肉体も状態がいいわけではないようだった。
「……君……名前は?」
 恐る恐る聴取を始めた、もつれて束になった少年の髪から滴が落ちる。ほんの数秒で小さな溜まりが床にできる。
 建て替えさえ為されない戦前からの交番、その木貼りの古い床板だ、そのまま色移りしてしまうかもしれない。

「名前……名前は……えぇと……」
 名前……なんだっけ……そんなこと考えて生きてないからなぁ……あ、もう生きてないのかな……。
「高橋くん、でいいかな」
「おじさん、僕のこと知ってるの?」
「おじさんじゃない、僕はまだ三十歳だ」
 巡査はおじさん呼ばわりを嫌った。
「シャツの胸に刺繍がされてる。高橋、と。ずいぶん汚れているけど読めなくもない」
「ほんとだ……僕、高橋っていうのか……」
 泥か汗か血かそれ以外か、あるいはその数種が重層的に汚れの原因か。

……しかし。この薄気味悪く小汚い少年……保護したはいいが……このあとどうすればいいのだろう……。
「高橋くん……君さ……えぇと何から聞いておこうかな……いや、その前にさ」
「ん?」
「君が交番に来てからハエが……」
 巡査は払い除けながら現象を不審に思う。
「あー。おまわりさん、防臭剤とか殺虫剤とか、くれない?」
「いいけど……それ、どーするんだい?」
「飲む」
「え、飲む?」
「暑いじゃん? 腐敗も早いし虫も湧くし。消臭剤もあれば臭いもマシになるかなぁ……」
「……」

……なんだこいつ。だから田舎はイヤなんだよなぁ……いつまでこんなのと居なくちゃならないのか……。

「おまわりさん、僕、ゾンビみたいなんだよね。なんでそうなったか知らないけどさ」
 高橋くんはなんでもないことのようにそう言った。


<この続き、どうする? オチる?>

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少年ゾンビ高橋。
少年ゾンビ高橋。 #2


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2013-06-19 22:01 | カテゴリ:文芸パンク
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「流浪の旋律」


赤みの強いエンジの重なるレンガ街、
港の端には打ち上げられた魚が跳ねる、
波堤に潰れた波は一瞬白く、
返す水面、打たれた頬の痣の色、

船上、太陽浴びながら、
男はジンをすすってる、
焦げた針金みたいな体は滴る汗を拭わない、
沈みかけて揺れる漁船、
エンジン売っちまったから抵抗なく揺れるだけ、

移民たちは夜を歌う、
棄てたものが大きすぎて、過去を忘れたがっている、
街角集って、夜を歌うは生まれた地の子守歌、
今も血に流れてる、嘆くのは赤、悦び合うもやはり赤、

桟橋、タバコを吸いながら、
少女は海の彼方に希望を呟く、
もつれた髪を編み込みながら、
パールのピアスをいじってる、
飢えて死んでもこいつだけは手放さないって、
鳴る空腹には気づかないふり、
当たらない石、舞う鳥狙う、

移民たちは明日を歌う、
棄てたはずは柔らか過ぎて、
手にしたものは砂の果実に過ぎなくて、
街角集って、朝に歌うは故郷の子守歌、
今も血に流れてる気持ちはパール、



――――――――――――――――――

オペラの犬の朝
瞬光

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fc2

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2013-06-19 11:04 | カテゴリ:文芸パンク
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「傷痕と昼と夜」


夜に見紛う、夥しきは虫の羽根、
耳を裂くほど踊り狂うその景色、
窓から見つめる子供達はなんだかそれを不安そうにも嬉しそうにも眺めてる、

再生なんて信じない恋人達は、
キスをしながら終わりに目を背けて、
美しき想い出を抱きよせた、そして終わる世界で眠りを待って、
不良たちは羽根を焼き払おうって騒いでた、
終わる終わらないは別にして、
見慣れぬ景色がただ嬉しいだけらしい、

不愉快ながらも続いてた、
その世界に最期が迫る、
僕らはただその景色を流れる時間として、
もうそれでいいからって、

またいつかこの羽根を思い出す、
そんな日がくるのなら、
またいつかこの羽根を過去にする、
生き延びることができたなら、

舞い散る鱗粉、一粒ずつが発光してる、
舞い散る羽根から落ちる粉、
それで夜は明けてゆく、

どんなふうに明けるとも、
僕らはこの終わりを待つ世界に生きる、
そう、まだ生きている、
終わりを待つこの世界で、


━━━━━━━━━━━━━━━

photo:02


<dust stars memory>

メリーゴーランドに委ねてた

〝joe〟
月と背骨と足元と
high time
砂漠に雨が降る
ルフトハンザの孤独
ランドスケープ・フィクション・ビデオ
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2013-06-18 12:55 | カテゴリ:少年ゾンビ高橋。
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「少年ゾンビ高橋。#2」


photo:02


 不審者が徘徊している、そんな通報はこの町では珍しい。むしろ着任以来初めてのことだった。
 某ペンギン村よりも平和だとからかわれたことがある。ほとんど左遷に近いとさえ……。
 事件らしい事件とは無縁だった、だからこそ緊張と興奮が入り混じる……。

photo:03


「あつ……ゾンビにはキツイ……」
 高橋くんは誰に話すわけでもなく、とぼとぼと歩いていた。
「やばい……体が傷んできてるんじゃ……」
 すでに生命として活動を終えた高橋くんだ、当然として代謝がない。この時期、やはり恐れるべきは腐敗と寄生虫だ。
「あー。ゾンビって何してればいいんだろ……」
 しかし、ゾンビとしての意識が希薄な高橋くんは自らの身体に危機が迫っていることに気づいてはいない。

「なんだよあれ……小汚い子供じゃないか……」
 久方ぶりの事件かと思えば、身なりの悪い子供が歩いているだけである。
 安堵しつつ、同時にがっかりもあった。
 やはり平和だ、退屈なほど問題がない。子供が不審者扱いされるほどだ、適当に職務質問だけしておこう……。
「君、ちょっといいかな……」
 そのときだった。彼は強烈な腐敗臭に襲われたのである。
「くさっ!」
 思わず叫んでしまった、なんだこの少年は、どんな生活をしているんだ……?

「あ、おまわりさん……え、そんなに臭いの……っていやいやいや! そんな言い方しちゃダメじゃん……」
 高橋くんは子供のわりに礼儀を重んじるタイプのようだった。


<これひどいな……と思いながら、ひょっとしたら続くかも……>

━━━━━━━━━━━━━━━

前回の少年ゾンビ高橋。



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2013-06-18 12:55 | カテゴリ:少年ゾンビ高橋。
photo:01


「少年ゾンビ高橋」


「暑い……」
 目を覚ますと頭上は騒々しいまでに照りつける太陽が昇っていた、梅雨前線はどこへ行ってしまったのか、夏の空が広がっている。

「いったいいつから眠ってたんだっけ……」
 途切れがちな記憶を手繰りこもうとしてあきらめる、それが蘇らないものだと彼は分かっている。
 体中が痛むような気がした、だけど、気がするだけで痛みはない。なぜなら既に彼の身体からは感覚というものが失われている。

……えと……そうそう、梅雨に入ったらしいし、また暑くなるから……。
 少年は考える。
 今後の自分にとって必要なものを考える。
……肉体の維持には防腐剤でいいのかな……。不審がられるから消臭剤も……それから……ファブ◯ーズはオーデコロンの代わりになるだろうか。
……で。お腹すいたな……何を食べたらいいんだろ……。
 映画とかだと……だいたいは人を食べてるけど……。
……。
 いやぁ、ないない。そんなことしたら捕まるじゃん……そもそも食べ物じゃないし……食べたくないし……うーん……。

「いや、待てよ……」
 少年は気づく。
 ハラが減ったような気がするだけ、錯覚なんじゃないか、と。何故なら彼はすでに死んでいる。ハングリーな死者など聞いたことがない。
 そもそも栄養の摂取というのは生命活動のために行われることだ。活動を終えてしまったあとに食糧を摂る必要はない。
「うん……そうだ……食べなくても大丈夫だよ。ラクと言えばラクかな……」
 少年は思う。
 彼はゾンビである。

photo:02




<……なんだこれ、と書いた本人さえも首をひねってしまうところですが……ひょっとしたら続くかも>

━━━━━━━━━━━━━━━

<普段の記事はもう少しマトモです>

再生のアクアリウム
悪魔と天使のバラッド
モンスター


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あの人への想いに綴るうた

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2013-06-18 10:23 | カテゴリ:文芸パンク
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「スカイコレクターの悲劇」


空を睨んだ、
止まない汚れ雨が目にしみる、
晴れる日なんて憶えてすらない、
フリオールは雨の街で空にカメラを向けている、

日付が変わるだけ、それ以外は変わらない、
人は歳を重ねて老いてゆくだけ、
フリオールはくわえタバコで、
湿ったマッチに嘆いてた、

花も咲かず、空気は澱み、
道行く恋人たちさえ陰欝で、
色がつかない、棄てネコみたいに怯えて見えた、

フリオールは自分の歳を忘れてる、
季節がないから、数の列びも忘れているから、
彼は変わらず、名もない街の空を眺めてる、

今日も昨日と変わらない気がした、
きっと明日も澱み雨が降るばかりだ、

牛車が行き交い、
見知らぬ葬が列をなし、
燈したランプは風に消された、
悲しくて狂いそう、フリオールは街を呪った、

空を睨んだ、止まない汚れ雨が目にしみる、
晴れる日なんて憶えてすらない、
フリオールは空にレンズを向けている、

自由な空ばかりを夢想するからフリオール、
貨物列車に気がつかなくて、
レールにつまづきカメラは飛んだ、

その上、列車が走って行った、
その上、列車が走って行った、
気がつかないままカメラは散って、
代わり映えない空の彼方へ彼も散っていなくなった、

悲劇でもなく淡々と、
彼の終わりを誰が語りつぐでもない、
すべては予期されたこと、
空に焦がれたフリオール、
ようやく自由な青にいる、

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<read more entrys>

雨のカロン
最期は君と抱き合って
対岸にトランペット
うたかた
放課後

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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)

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あの人への想いに綴るうた

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2013-06-17 10:36 | カテゴリ:イケメン・ジョニーはスーパースター?
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「祝☆シリーズ通算第70話っ‼」


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「で、あんたはどーすりゃいいと思うのよ?」
 生温い風が横から吹いていた、すでに真夏を思わせる熱がわずかに冷まされつつある夕刻。
 意外なオファーを受けたふたりは結論もないまま、謎の有力者のもとを後にした。
「どうって……や、分かんない……なんの話だっけ?」
 はぁ、とまどかさんは溜め息をつく。踵を鳴らす、時々、立ち止まって眉を寄せる。その後をジョニーがついてくる。
「歩きタバコ、禁止っ!」
 まどかさんはジョニーが咥えたタバコをむしり取る、そして踵で捻じり消す。
 その様子は出来の悪い飼い犬と躾に厳しい飼い主のようにも映る。例えだけではない、現実的な関係性もそのようなものだ。
 残念なことは躾けているようで、まどかさん自身がマナーに疎いことである。

「俺ねー、そーゆー……グラビア? たぶん出来ないと思うんだよね……だってほら、俺がビキニ着てたらヘンじゃん」
「……は? や、何言ってんの……あんたなワケないでしょそこは! ビキニでグラビアやらされるのは私! あんたは……あんたは何やるんだっけ……?」
 なんだっけ? ふたりは同時に首をかしげた。
「あー、そうか、あんたは映画に出るとか……そんでアイドルとかやれって言ってたんじゃない?」
「映画かぁ……あのおじいちゃん……結局、なにやるんだろねぇ……」
「まあ……商売だよね、そこは。けどさー……」
 言葉が宙ぶらりんになる。続きはある、けれど、彼女自身も突破口を持たない現実が目の前にある。
……ほんとにこいつらでお金稼げると思ってたっけ……ほんとはたぶん、このバンドを見てみたかっただけなのかもなぁ……。
 うん、たぶんそうなんだよな……おじいちゃんの言うことはきっと正しい。正しいけど、あたしたちには楽しくない。だから迷う。

「まどかさん」
「……ん」
「俺、思うんだけど……」
 話し始めたジョニーいつになく真剣な声だった。


<長くなりすぎたので続きは次回っ!>

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[photo:04]
先天的ロックンロールの前回まで


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2013-06-16 19:55 | カテゴリ:Simplog
投稿写真

耳をすませば #simplog #photograph

いま遠く見上げる青み、
季節を告げる鳥たちが舞い踊る、
ときおり冷たさまじらす風は吹き、
花の匂いはふくよかささえ、

TVのなかの現実が、
作りこまれたフィクションならば、
どれだけいいか、

誰もが痛みをその胸に、
ここにいる小さきものも、
ソラとチと、風に願いだけ放つ、

いま耳を澄ませてる、聞こえるような、
そんな気がする、
願いと祈りとヒメイとイタミ、
いつか届く手紙を書こう、窓辺の鳥にそれを託そう、

僕らの生きるこの世界が、
再び優しく咲きますように、
僕らの生きるこの世界が、
いまも優しくありますように、


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2013-06-16 02:40 | カテゴリ:おまとめビリー
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「this week named......〝over drive〟」


オーバードライヴ、ギヤを鎖で固定して、
荒ぶる地平へ踏み込むアクセル、
合言葉は〝OVER THE BORDER〟、
国境線を突き破れ、

獣は夜にダイヤモンドを引っ掻いて、
ひたすら爪を磨いてた、
ボトルまるごと噛みちぎり、
火を噴くほどのアルコールを口から垂らす、

血のニオイがした、爬虫類で割ったジン、
神を欺く夜の向こう、

監視の兵、トランペット吹き鳴るサイレン、
速射砲に剥がれる地表、月光旅団は真夏に誓った想いを刻み、
つんざくノイズに苦笑いを浮かべてた、

月のあかりにネイビーワゴンが停まってる、
欠伸のエンジン、インディゴブルー、

朝が来るから、また走り出そう、
明日はまた違う景色が拡がるはずだ、
朝が来る前、また走り出そう、
昨日と違う世界へ君と、

サッドマン・ブルーズ
あの夏の給水塔で
ねがいごと
少年ゾンビ高橋。 #2
∞ジョニーの夏がやってくる。

マートン選手のHP

 おっそろしく蒸し暑い関西南西部です。久しぶりの雨、濡れたアスファルトの匂い。
 昨日の灼熱から一転、ミストサウナのような今日。全国的に曇天なんでしょうか? ともあれ、充分に水分を摂ってバテないようにいたしませう。
 皆さん、良い週末を。

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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)



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2013-06-16 00:08 | カテゴリ:Simplog
投稿写真

■青みがかる果ての一景 #simplog #poem

見慣れないまま風は過去を連れ去って、
明日は明日で考えないふり決め込んで、
キズにはとうに慣れたふり、赤い痛みを伴って、
めぐりめぐる季節はいつも、どうにもやりきれない気分にさせる、

口ずさむライラック、そらからまた夜の匂い、
サボテンには白い花、それを鳥が咥えて飛んだ、
遠くまでゆく、何処から来たのかなんて知らない、
青みがかる果ての一景、
青みがかる果ての一景、
その向こうの白い陽光、
変わらず佇む船乗りたちと、
指と指の間から、こぼれて落ちた砂々と、


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2013-06-14 11:22 | カテゴリ:ショートショート・フィクション
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「ねがいごと」


 森が朝を出迎えて、光がまた私たちを包む時間は羽根の生えた子供たちが歌いながら宙を待ってゆく。
 遠くを眺める。
 私は羽根を失くしてしまった、だから空を踊ることはできない。だけど、想いを持って、それを言葉にした人々が目覚め、再び、眠るまでをずっと見つめるのが好きだ。

 この世界は美しくもなく希望に満ち溢れたものでもない。誰もがそれを知っていて、なおも未来を願い続ける。
 愚鈍で浅薄で軽率で滑稽で……なのに、どうしたって人は人を想い、小さな体が張り裂けてしまうくらいのありったけでもってして希望を叫ぶ。
 思いどおりに行かなくって、何度も何度もつまづき転び、その痛みに慣れる前に別のキズにまた顔を歪め、なのに歯を食いしばって立ち上がる。

 ねがいごとはなに?
 
 君はいつか願いをかなえ、そして静かな笑みを浮かべている。その日はきっとすぐそこだからって、話しかけようとしてやめる。
 人々が呼吸し、やがて想いが森にたどり着くのを確かめて、私は羽根の生えた子供たちが光の花束を掲げて戻ってくるのを出迎える。

 ねがいごとは見つかった?

 届かなかった言葉。
 叶わなかった想い。
 そんなたくさん。
 いま、私が見つめる先に生まれ変わった「ねがいごと」が新しい羽根をもらってやってくる。

 私は聞いてみる。
「ねがいごとはなににする?」



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dead or alive
yankees trabelin'truck
ノイズ・アディクション
NEXT VISION


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2013-06-13 12:18 | カテゴリ:ショートショート・フィクション
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「あの夏の給水塔で」


「夏は帰ってくる?」
 彼との電話はいつもそこから始まる。いまだろくな挨拶さえない。
「分からない」
 僕はそう言う。いつもそれで逃げている。過ぎた季節に帰る気にはなれない、本当に帰れるわけでもない。
 それに。
 あの街にはもう給水塔がないと知っている。

 住み慣れた街を離れて何年経ったのか、もつれた糸屑をほどくように立ち止まったままの記憶をたどる。
 それでもはっきりとはしない。
 過ぎたことを忘れよう忘れようと生きてしまったんだろう、僕は生まれた土地を出てゆく思いでしか未来を描くことができなかった。

 その街は時間の境目のなかにいた。すでに役割を終えて置き去られてゆくものがあり、再生のために撤去されたものがあり、荒れ地にされてから咲いた花を見ることができ、そしてそのうえに土が撒かれて、やがてこの土地に生きる人のために多くの住居が造られつつあった。
 過去と決まったもの、現在はまだ用途のあるもの、やがての未来に必要とされるであろうもの。
 そんな場所だった、僕はそんな場所に生まれ育った。
 かつての少年であり、かつての少女であったすべての人と同じように。

 眼を閉じる、そして思い浮かべる。
 あのとき背伸びしても届かなかった給水塔に続く螺旋階段。もう使われていなかった、錆びた踏み場を誰かが踏み抜いてしまったのだろう、靴のかたちの穴が開いてた。
 
「もうすぐきっと手が届く」、何度も言いあった。
 誰も近づくことのない廃材置場は僕たちだけの秘密基地だった。
 給水塔も役割を終え、そこに立たされているだけだった。迷子だと素直に言えない子供のようにただ立ち尽くしているみたいだった。たぶん、僕らと同じなんだろう。

 いまなら。
 いまなら手を伸ばせば届くだろう。背伸びすら必要ないだろう。
 けれどあの給水塔に続く階段を昇ることはない。
 僕らの必要基地はトラック一台が何度か往復すれば全てが失くなる程度でしかなかった。
 洗い流され、花が咲き、そして土が盛られて、移り住む誰かのための建物になった。

 給水塔は僕らを待ってはいない。迷子でもない。行くべきとされる場所へと連れてゆかれた。
 記憶のなかの給水塔はいまもずっと背伸びをしても届かない、そんな遠くで逆光に光っている。

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風の強い日に
ランプ師のお話



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2013-06-11 21:47 | カテゴリ:文芸パンク
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思い描く草原は、果てなく遠く向こうまで、
緑色は背が低く、僕の膝をかすめるくらい、
見上げる空の送電線、
嫌味なほど真っ直ぐに、湖の向こう岸、白い羽根が口笛を、

黄昏れ刻まで吹いてみようって、取り残されたオレンジの、
裸に近い樹の下で、冷える霧の灰色の雨、
か細い肩を寄せ合って、

明日がくるって邪気なく信じた、
そんな日々はもう過ぎて、
疑うばかりでそれにも慣れた、
道しるべなんて何処にもなくて、
切り落とされた断崖の、冬の近づく海を見渡す、
あの岬の端の端、そこまで歩くくらいなら、
無邪気装い笑う恋人、立ち上がって地を蹴って

たぶん、そこは世界の果てで、
きっとそこが世界の終わり、
だってほら見て、白鳥たちが湖から離れてく、
だってほら見て、白鳥たちがずっと遠くへ飛んでゆく、



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2013-06-11 11:26 | カテゴリ:文芸パンク
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「sadman blues」


左の腕に抱き寄せた、ブランケットの中身は空で、
そこにはかすかな温もりだけが残されていた、
夜明けを待つのも億劫らしく、
あの娘はもう姿さえない、薄らぐ記憶でもう一度、

優しくなかった、
別の誰かに乗りかえた、それもまたいい、
止める理由はどこにもなかった、孤立のイタチは今日も泣いてる、

冷たくなかった、
ただの一度だけでさえ、36度を覚えてる、
頬のあたりに滴がいくつ、マイナスくらいでこぼれてる、
そして今日も空砲が鳴る、

ミラーを覗く、そこにいるのは痩衰えた色のない顔、
悲しむふりだけ忘れたふりだけ、夜明け前に見た夢は、
悲劇の殺戮、乗り越えたあと、
無人の地平に立つ鳥と、
その陽に浮かぶ羽根の影、

優しくなろうと、
誰が言おうが、変わらぬものを抱きかかえ、
背中に羽根のない男、いつか描いた空想画のなかの、

夜明けに見た色だけ探す、
夜明けに見た色だけ探してる、



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2013-06-10 12:12 | カテゴリ:イケメン・ジョニーはスーパースター?
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「かっとばせ、ジョニーくん!」


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「……いつでも相手になるわよ……かかってきなさい。あんたの全身の骨を砂利みたいにしてやるわよ」
「じゃ、じゃり……。あの……赤と白のボーダーを着た……メガネの外人……?」
「……なによそれ……?」
「俺ね、一度も見つけられなかったんだよ……」
「お前さん、そりゃ砂ー利ーじゃろ……」
「チャーリーよ‼ めんどくさいわね、あんたら!」

 スウィートの1フロアを自由に使い、どうやらそこを住居にしているらしい謎の老人。
 ジョニー率いるザ・シガレッツのパフォーマンスを目撃した彼によって召喚されたのだが、老紳士が放つ一言で場の空気は一変する。

「お前さんら……わしと取引しようではないか」
 君、そう言って老紳士は顎をしゃくる、どこから聞いていたのか、付き人らしきは恭しく彼にファイルを手渡す。
「ずいぶん……ずいぶんムチャな活動を続けているな……じゃが借金はまるで減っておらん……」
 眼光鋭くファイルをめくる、おそらくはバンドを取り巻く状況すべてが調査されているのだろう、彼は自らが持つ力がジョニーらとはまるで次元の違うものであることを態度でもって示している。

「そんなこと……そんなことないよ……分かんないけど……。え、あるの……?」
「あるわよ……ドンピシャってやつ……」
「だからこそ、じゃ」
 射抜く視線で彼はふたりを見定めていた。左右の眼がそれぞれの意思で動き、それぞれに威圧するかのようだった。
「わしの傘下に……メディア展開に相応しいコンテンツを持たない部門がある。ジョニーくんとムスメさん……君らふたりをスタアにしたいと思うわけじゃ」
「す、すたぁ……」
「バンド……バンドでってことじゃないわけよね、それ……」
「無論。あんなガチャガチャ騒々しい音楽なんぞ売れはせん。ムスメさんとジョニーくん……他のメンバーは何人か見繕ってある。片手間に音楽もやればいいだろう、曲は用意すればいい。ジョニーくんなら映画に、ムスメさんならグラビアに……多方向アイドル集団のような売り方じゃ、時代のアイドルを作るのが目的じゃ。やがてはグループの看板になる」

 バンドではなかった、彼のなかにバンドへの幻想はないらしい。
「じいさん……じゃあ、ヒラサワくんと天野くんは……」
「彼らに仕事が必要なら、なにかポジションをつくれば良い……衣装持ちでも付き人でも経費で落ちるしの。……もっとも、いまのバンドが仕事だとは思えんがね……君らはスタアになり借金もチャラ、迷うこともあるまい」
 もう良い、とばかり彼はファイルを閉じる。
「今のまま放蕩者としてバンドをやるか、無価値なこだわりなど捨ててわしと組むか。考える間もなかろう……」
「そんな……」
 まどかさんでさえも置かれた現実に砕けそうだった。見ないふりを続けたことでもあった。
「ジョニー……どう思う、あんた……?」




<いつもとは違う雰囲気のまんま次回へ……>

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前回まではおバカさに突き抜けたロックンロール

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2013-06-07 12:12 | カテゴリ:文芸パンク
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「放蕩者よ」


あばら骨にすきま風、貫通した風の声、
痩けた頬を流れる汗と、断続的なる呼吸と心臓、
走り抜けたつもりで跡を、
背にした景色が滲む視界、
足跡、雨風、消えてゆく、

鎖骨のくぼみ、指の節々、
裂傷痕の皮膚の下、青く細い血の管と、
熱をもつ掌よ、もはやそうも若くはない、
何もかもを手にできた、
勘違いした少年季、

星も月も藍色の宙、
発光する白い陽、
抑揚なく告げる日々の告白よ、
酔いしぐれや夏の昼、
斬り捨て御免と吐きし候、
血の色、もはや慣れにて至る、

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<one years later......>
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シトロエンとオルゴール
雨のカロン
渚にて
永遠の夏休み
通過駅のジラン

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2013-06-05 08:42 | カテゴリ:文芸パンク
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「荒天のクライフ」


夏の夜はガス燈の下、暗くなりゆく宙の花視る、
星は幾つだ、霞んでゆく右の眼を閉じ、
裸の足の踵に滲む、黒く爛れ照らされる赤、

今日は何を踏みつけた?
紛いの麦酒で胃を満たす、
裸天の舞を横目に欠伸、片目のネコは眠りつく前、
クライフ、痩せた胸に抱き上げる、
手にしたグラスにテキーラは、
幾何学模様、蝶でも蛾でも構わない、

金の座、銀の座、水銀さえも、
すべて選べる暴動主犯、
だから太陽、背を向けた、
月には煙を吐きつける、

〝王としてなら黒々しい規律にて、
奴隷商の座がある〟と、

嗚呼、何故こうにも愚かしく、
薄汚い手にて人を欺く?
荒んでゆくのはヒトだけなのか、
哀しみすらも忘れゆきそう、映る視界は斑模様、

クライフ、毒を飲み込んで、
瞼に刻みし荒景を、消してしまえと咥える銃口、
夜を迎える用意はできた、


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photo:02


<You Can REDO.>
アフター・サーフ
聴こえてくるアコーディオン
アイソトープ

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あの人への想いに綴るうた

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2013-06-04 10:05 | カテゴリ:文芸パンク
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「この先咲く花を見に」


もう過去を捨てたつもりで、新しい名前を作る、
使う言語も様々な、移民たちがここに集まる、

たとえば金塊詰めたトランク下げたポークパイ、
頬を汚した小さな子供、
フェンスの向こうに広がるミドリ、
そこには何かが待つんだと、震える胸に言い聞かせ、

流浪の日々よ、
生き絶えるまで続くだろう、
星を数えるなんて退屈さは持つはずもなく、

流浪の日々よ、
片手にカメラ、記者は物珍しさで彼らを追うんだ、
まるで世界の果てを見つめるように、

あるいは青い眼、なにを見てるわけもない、
初めて聞いた名前の恋人、背に羽根があるのなら、
あの有刺の鉄線さえ、
越えられるのかもしれない、

何もいらない、別の自分に生まれ変われるんなら、
忘れちまいな、もう誰も知らないばかり、

流浪の日々よ、
生き絶えるまで続くんだろう、
星を数える余裕なんてあるはずもなく、

流浪の日々は、
コートにナイフ、カメラは物珍し気に彼らを追う、
まるで世界の果てを見つめるように、

そう、眺め見るのはは世界の果てだ、
そう、ここから先は未踏の世界、
果てゆくのを無言に探す、
この先咲く花の色、せめては淫ら艶やかに、
この先咲く花を見に、

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ユリイカ
エンジェル・ダスト
焦燥のロードムービー
月の丘のオオカミみたいに
煙草好きのヤコブセン

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あの人への想いに綴るうた

ビリーバナー
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2013-06-03 12:00 | カテゴリ:文芸パンク

「青空」


青空よ、ひたすらにただ青いだけ、
お前もやはりは淋しいと思うんだろう、
広く大きく、それだけだから、
包めないばかりを誰かがこぼしてゆくんだろう、
もはや諦めさえも雲に乗せ、

雨の季節を待つ鳥が、
停まる木の枝、つけた葉を、
お前は遠く眺めるつもり、

雨雲よ、黒く染める鉄の地は、
お前は洗い流してしまいたいだろう、
不愉快さを抑えているのは苦痛だろう、
咲ける花は艶やかにも儚く脆く、
見つめる視座の高さを苦々しく思うだろう、

陶酔にて甘えてしまう、
過剰にも自己を酔う、
人は変わらず人で有り、
醜態晒して此処に在る、
最早、手を打ちようもなく、
望みは其処に微粒子として、
七日刻みで終を待つ、




CLICK STAR SWITCH

閃 ロックンロール ワールズエンド
天 草原 蟻
ゾンビ 祈り 砂時計


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