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2012-12-29 18:06 | カテゴリ:イケメン・ジョニーはスーパースター?
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それゆけジョニー!

キザエモン? あんたキザエモンなんだ? ぎゃはは、超かっけぇ!」
 電話の向こうでまどかさんが爆笑していた、手足をバタつかせているのか、デスクやらオフィス機器を蹴り飛ばしているのか、興奮を隠せない様子だった。
 むう。ヒラサワくん……もといキザエモンは思う。
 いくらマネージャーとは言え……この娘は俺より二十歳も年下なのにな……。
「おい、キザエモン! 残りの二匹も元気なの?」

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 男たちがツアーに出て二ヶ月。
 CDの売り上げは芳しくないそうだが、ライヴの動員は増加しつつある。
 彼らのライヴ・パフォーマンスが投稿された動画サイトは再生回数が五万回を超え、その超人的な演奏が一部マニアの間で話題にもなっていた。
『……スロー再生するとボーカル/ギターのヤツが時々消えてる』
『……瞬間移動するギタリストがいる』
『一秒間に54回、ストロークしている』
『ベーシストはドザエモンとか言う名前らしい』
……など、音楽的な評価よりも超常現象を扱うようなウワサがほとんどだったが、それでもジョニーら「ザ・シガレッツ」は急速にその名を上げていた。

 だが、変わらずの機材車暮らしだ、彼らには宿泊代がない、後部席ではジョニーが毛布にくるまっている。生まれたばかりの小動物を思わせる寝顔だった。

「大変だ大変だ大変だ!」
 鬼気迫る表情でバンに駆け寄って来たのは天野くんだった、彼は朝食を買い
にコンビニへと行ったはずだった。
「なんだようるさいな……あっ、天野くん手ぶら……朝メシはどうしたんだよ」
「朝メシどころじゃないよ、キザエモン!!」
「……キザエモンって呼ぶなよ……」
「今日、世界が滅亡するんだって……!」
 絶望さえ感じさせる沈痛さで天野くんは言った、巷で話題のマヤ暦の預言をどこかで聞いてきたのだろう。
「……そ、それ、ほんとに……?」
 騒動に目覚めたのはジョニーだった、パジャマの袖で目元をこすっている。
「それ、誰が言ったの……?」
「えと……マ……ヤ? そうそうマヤってヒトらしいよ!」
「……誰?」
 この場合のマヤは人名ではないのだが、もちろん、彼にはそんな予備知識はない、当然、ジョニーにもない。キザエモンだけが『やれやれ』と首を振る。
「マヤ……さん……。とんでもないことを言うヒトだねぇ……」
「ほ、ほんとに世界が終わっちゃうのかな? ま、まだやり残したことがいっぱいあるのに……」
「例えばなんだよ……?」
 こいつらの相手はほんとうに面倒だなぁ……キザエモンはそう思う。
「……例えば? ……例えば……なんだろ……? あ、俺、カノジョが欲しい? ジョニーはまどかさんいるし、キザエモンは奥さんいるじゃん? 俺だけカノジョがいないよ? もうすぐクリスマスなのに……」
「……今日、世界滅亡ならクリスマスは失くなるだろ……」
「世界滅亡かぁ……なんで滅亡するんだろ……?」
 真に受けてはいるがジョニーに焦る気配はない、他人事のようでさえある。
「そりゃあ……? なんかすごいことが……」
「なんかって……そんな曖昧な答えじゃ……なんにもできないじゃん……」
「た、確かにそうだな……。キザエモン、こんなときはどうすりゃいいの?」
「……とりあえず朝メシだろ。天野くんとジョニー、コンビニ行ってこい」
「コンビニ……そうか!」
「まずは腹ごしらえだね、さすがヒラエモン! 行こう、天野くん!!」
「よし、行こうジョニー!」
 ふたりは世界滅亡の朝にコンビニへと駆けて行った。

「こんな日に開いてるなんて……コンビニってマヤさんよりすごいね、天野くん!!」
 
<ロックンロールはまだまだ続く……>

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前回までのジョニーさんたち


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2012-12-25 07:31 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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時計じかけのオーケストラ

 バースディ・タウンに今年もクリスマスの日がやってきました。
 時計台の下につくられた小さな街、バースディ・タウンは今年も変わらず刻々と時間を知らせてきました。そして今日はロッソやルッカ、街に暮らす人々にとっても楽しみなクリスマス・イヴの日です。
 この街には小さな小さなオーケストラがいます。
 朝、お昼、夜……。

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 たった三人の楽団は毎日毎日、時計台の下の街に暮らす人々のために時間を知らせるために演奏してきました。
 雨の日も風の日も、そして、今日のような雪の日も……。

「吹雪だ……寒い……寒い……凍りついてしまうよ……」
 寒さが苦手な太鼓の彼は言いました。
「うるさいなー、君は……。寒い寒いと言っても……あたたかくなるわけじゃないんだから……」
 オーケストラのリーダーで、いちばん年長の彼が言いました。

 たった三人だけのオーケストラは雪のクリスマスの日にも、いつもと同じ音楽を演奏していました。
「今日くらい、いつもと別の音楽をやりたいな……」
 金髪の彼が言いました。
 いくら音楽が好きでも、同じ曲ばかり演奏していると退屈してしまうのです。
「だけど……僕らはそんなたくさんの曲をやれないよ……」
 そうです。彼らは仕掛け時計の人形たちです。好きな音楽をやることはできません。

「だけど……僕らだって生きてるんだから……」
 きっと好きな音楽が、鳴らしたい音楽を演奏できると思ったのです。
「やりたいことができるはずなんだ」
 そう言って初めての音楽を鳴らし始めました。演奏したことのない音楽でした。

 時計じかけの小さな小さなオーケストラは「ジングルベル」を鳴らしていました。
 バースディ・タウンにクリスマスが響きます。そして時計台の下をゆく人々もその音楽に耳を傾けていました。
 人が作った時計じかけのオーケストラには、バースディ・タウンに生きる時計の精たちは、人の想いが生きています。
 たった三人の生真面目なオーケストラは、雪の聖夜に歌い続けました。
「心があれば人形だってヒトより強く生きられるんだ! 心がなければヒトだって人形になっちゃうんだぞ?」
 降り続く雪のなか、金髪の彼は叫びました。

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〝merry x'mas〟


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2012-12-24 18:26 | カテゴリ:日々のこと
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 こんにちは、ジャポンの皆さまお元気でしょうか。
 ワシこそサンタクロース、かの有名なプレゼントを配布しまくる世界最高クラスの善人じゃ。
……だがのう……今年はもうヤメにしたんじゃ。見りゃ分かるじゃろうが、ワシはじいさんじゃ。
 トナカイにソリを引かせて世界を巡るなど酔狂なことは他の誰かに任せて、ゆっくりお茶でも飲んでいたいんじゃ。
……世知辛い話じゃが、プレゼント代金もバカにならんからのう。頼むのは無料でも、いざ働くワシのことも考えてみんかい。
 そんなわけじゃ。身勝手な欲望なんぞきいてはおられん。プレゼントは個々に用意してくれたまえ。
 じゃあの。


……酷い記事だけども……(笑)。
私、今日こそ「ワンピース・フィルムZ」を観に行こうと思っております。


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2012-12-21 07:28 | カテゴリ:文芸パンク
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探さなきゃ

探さなきゃ、あの娘が待ってる、
砂でできたベッドルームでなくしたものを探してる、
それが何だか、きっと彼女にも分かってないけど、
それでも、あの娘はなくしたはずを探してる、

冬空醒ました花火とか、雲のつくる白い坂道、
ペリドットのミサンガと、ほどけ落ちた石一粒、
マントみたいなカーディガン、埃を引きずっていた、
置き去りにした甘い温もり、夜の星にもらった香水、

探さなきゃ、あの娘が待ってる、
砂埃に咳き込みながら、淋しそうに笑ってる、
迎えに行かなきゃ、きっと宝石抱えてる、
それでもあの娘は捨てられないって抱いている、

目鼻の剥げた古いピノキオ、オルゴールの子守歌、
色褪せカーテンぶら下がる、
世界に夜がきて、
置き去りにした指輪、外れたルビー、

見つけるよ、
あの娘がいる街、空の下、似た星の下、
なくさないよう抱いてなよ、
手にした儚さ気づいているけど、
それでもあの娘はそこで待ってる、

探さなくちゃ、
行かなくちゃ、
見つけなくちゃ、
抱きしめなくちゃ、

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時計じかけのジュヴナイル
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時計じかけのジュヴナイル<10>
時計塔のある街で



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2012-12-20 07:28 | カテゴリ:文芸パンク
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今日もまだ

ぽつんぽつんと、投げかけては落ちる言葉を、
いくらも重ねて拾い集めて、
手のひらにてその軽はずみを手繰り寄せては、
散りゆく花にも似たそれを、慈しむよう嘆かぬように、

ふざけ合って悲しみなんてないふりをする、
それから前を、ランプが照らす数秒先に思いを馳せる、

ぽつんぽつんと、誰に聞いた偉人の名言、
そんなのいくつか宙に浮かべる、分かるようで分からない、
それは所詮、他人の言葉、
手繰り寄せても響いてくれない、
軽く弾んで、一瞬だけ空をゆく、
水たまりには淋しい蒼が高みに映る、

じゃれ合うのは葉を落とした裸の枝々、
かすれた声で喜びあう、そんなふうに聞いてみようと耳を済ませる、

明日があるなら誰かにとって、
優しい日になりますように、
明日があるなら誰かにとって、
生まれた日でありますように、
ヒトを分けて隔てることがないような、
満たされた日がありますように、
足りない言葉をもってして、
光のなかへ願いさえもかけてみよう、


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時計じかけのジュヴナイル
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時計じかけのジュヴナイル<7>
時計じかけのジュヴナイル<8>
時計じかけのジュヴナイル<9>



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2012-12-19 19:15 | カテゴリ:イケメン・ジョニーはスーパースター?
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go! johnny and his friends!!

「……で、君たちは何をやってるわけ?」
 寒風のせいではないだろう、しかめた眉と刻まれた深い皺、ネイビーの制服に身を包んだ男がジョニーたちをねめつける。
「や、お昼を……」
「ジョギングを……」
「もうすぐロックンロール・スターをやるんです」
 同時の返答だったが、その答えはそれぞれだった、その身なりに相応の対応をしたつもりの天野くんではあるが、ここはサービスエリアである。
 言わずもがな、ジョニーに至っては希望、願望と言うべき類の返答だった。

 廃車寸前のバンから降りてきた不審者三名。
 ねずみ返しの断崖絶壁を思わせるほどに屹立したリーゼントの43歳、ヒラサワくん。
 ジャージに半纏、脱いだニット帽の下からクジャクの尾を思わせるモヒカンが登場の天野くん。
 そして自らを「ジョニー」と名乗る金髪の青年はよれたストライプのパジャマ着、しかも裸足である。
 あまりの違和感がサービスエリアを包み、降車した瞬間、彼らは職務質問を受ける羽目になったのだ。
「……ザ・シガレッツ? 知らないなぁ……ほんとにロック・スターなの、君たち……」
「いえ、まだ駆け出しなので……」
 駆け出し感から程遠いヒラサワくんが応対する、ジョニーたちと会話されると警官の不信感が増してしまう、アタマのイタイ連中だと思われてしまう……それは事実でもあるが、いまはツアーの最中なのだ。

 警官は思う。ヘンな連中だがとくに問題はないようだ、真っ当なニンゲンではなさそうだが犯罪に走りそうな気もしない。
「まあ……人前に出るときはもう少しマトモな格好をしてください。あ、一応、名前と連絡先だけ聞いておきますので」
 慣れているのだろう、極めて事務的だった。
「ジョニーです。職業はバンドマン、ケータイは持ってません、家もありません」
 堂々たる態度でもってジョニーは宣言した、名前から境遇まですべて怪しい。
「ジョニー……そこは本名だろ……あ、僕は天野です、天野ジャック(ジャックの由来)。この金髪イケメンは僕の納屋に住み着いてます」
「ジャック……? それも本名ではないでしょう……納屋に住んでて……」
 なんだか面倒な連中に関わってしまったな、報告書にはなんて書こう……。ジョニーとジャックと……ああ、そうだ。
「あなた、彼らの保護者……ではなさそうですが、あなたのお名前と連絡先だけで結構です」
「ヒラサワ……です」
「下のお名前は?」
「それ……どうしても必要ですか……?」
 ヒラサワくんは名を名乗りたくなかった。しかし、言わないことには聴取から逃げられそうにない。
「一度しか言いませんよ……。僕の名前は……平澤……喜左エ門です……」
「へ?」
「キザ……ドザ……なに?」
 ジョニーと天野くんは顔を見合わせる、そう言えばヒラサワくんの名前を聞くのは初めてだ。
「一度しか言わないって言ったのに……」
 意を決してヒラサワくんは口にする。
「平澤! 喜左エ門! ヒラサワ・キザエモンですよ、僕の名前は!! だから言いたくなかったんだよ!」
「き、キザエモン……!」
「どこまでが姓で……どこから名前か分からない……」
「そ、それ……今度こそご本名で……?」
 警官も含めて大騒ぎの一行である、まさかの本名であった。
「なんだか……飛び道具みたいな名前だったんだね、ドザエモン……いや、ヒラエモン……キザエモン……」
 ジョニーは早速間違えまくる。
 平澤喜左エ門は真っ赤になり俯いていた、そう、彼は名乗るたびに何度も笑い者になってきたのだった。

 ジョニーと天野くん(ジャック)、そしてキザエモンの旅は続く……。



<ロックンロール珍道中は来年も続く……>

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前回までのジョニーとジャックと平澤喜左エ門。

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左利きのテディ
∞クラクション・アディクター
フリックスター
∞マジェンタ
アグレシオン

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2012-12-19 08:44 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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“手袋、マフラー、鮮やかなネオンの夜の、
街は喧騒、祝いの言葉、行き交う人はどこか急いで誰かの待つ場所へゆく”

「ねえ、ママ」
「なぁに?」
「聞こえる?」
「ええ、久しぶりね」
「シュクフクのカネ、だよね」
「そう。私たちヒトが命を刻み続ける時間を祝福する鐘……久しぶりね」

“祝福はこの街の、時計がいつも鳴らしてくれる、
富む者にも貧しきものも、老いも若きも命は命と差をつけず”

「時計、直ったんだね」
「しばらく動いてなかったものね」
「誰が直してくれたの?」
「誰かしら……きっと、時計の精じゃないかしら」
「それ、誰?」
「仕掛け時計なのよ、あの大時計は」
「シカケトケイ?」
「そう、仕掛け時計。ずっと昔……あなたやママやパパが生まれるよりずっと前にね、あの時計は造られたの。この街に住むヒトがずっと幸せでいられますようにって」
「……ふうん」
「だから、あの時計の下についている鐘のね、その下には小人さんたちが住んでいるのよ」
「小人さんが時計を直してくれたのかな」
「きっとそうよ。時計の下には小さな国があって、その国はバースデイ・タウンって言われているの、命の誕生を祝うために造られた、小さな小さな国……そこには小人さんたちが住んでいて、街をずっと見守ってくれているの」

“幸せって言葉は誰も、ありふれたもののよう、
選ぶ価値には違いがあって、それはヒトを狂わせもして”

「僕のことも?」
「もちろんよ。あなたのこともそれからこの世界に生きてるヒトや動物や花、命のあるもの全て」
「ねぇ……いつか、小人さんたちに会えるかな?」
「どうかしら……ママも会ったことはないの。だけど、いつか会えるかもしれないわね」
「ほんとに?」
「いい子にしてたら、きっとね」
「楽しみだなぁ……」
「さぁ、帰りましょう。雪が降ってきたわ」
「今年は初めてだね」
「きっと、時計の国の小人さんたちがクリスマスを祝って降らせてくれたのよ」
「うん。いつか時計の国に行ってみたいな、僕」
「時計の妖精に会えたらいいわね」

“真実だとか噂とか、そんなのほんとはどうでもいい、
夢と幻その二つ、自由に描くくらい誰もが持って”

「時計の妖精さんたちは……普段、何をしているの?」
「私たちと変わらないわよ。ゴハンを食べて、歌ったり絵を描いたり……恋をしたり、人に優しくしたり……当たり前のことを当たり前にしてるしかないの。……分かるかな?」
「うん。ママはいつもそう言うから……ママ?」
「なぁに?」
「お腹減っちゃった。帰ろうよ」
「そうね。帰りましょうか」

“僕らは生きる、この命がある限り、
意味の有無などそんなのどうでもいいって思わない?”

ネジを巻いたらまた明日、今日くらいはいつもより、
少しだけは優しい人に、優しい人になってみよう、
君が住む街、そこが変わらず君の居場所である限り……。


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時計じかけのジュヴナイル


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illustration,text,photograph by Billy.

thank you.
merry X'mas.
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2012-12-19 08:42 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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目覚めると僕は突き出したレンガの縁の上にいた。
しがみついていたはずの長針からは手を離して落下してしまったみたいで、遥か上に時計が見えた。
僕は生きて動いてる、秒針が回転する音、その瞬間を刻む音が上空から吹きつける風に乗せられて届いてきた。

あのとき……そう、僕が長針にしがみついて止まってしまった時間を動かそうとした瞬間……突然、動いた針の振動で僕は落っこちてしまったんだ。たった一分の時間の経過だけで、あんなに大きく揺さぶられるなんて考えてなかった。
「……雪?」
周囲を見渡すと白く光る結晶が舞っていた。手のひらでそれを受け止めてみる、みるみるその結晶は僕の体温に溶けてゆく、小さな星があたたかな水に変わってゆく。

それは雪じゃなく、時計の文字盤や針を停止させていた氷の破片だった、再び動き始めた時間が氷を小さな粉にして、僕やずっと下に眺めるバースデイ・タウンに粉雪を降らせていた。
帰ろう。
僕はそう思う、ルッカの待つ僕のふるさとへ。彼女と育った大切な街、バースデイ・タウンへ。
時計は時間を刻んでる、バースデイ・タウンもきっと動いてる。
ルッカが僕を待っている。


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「おかえり」
バースデイ・タウンで僕を待っていたのは、少し大人びた笑顔のルッカだった。
髪型のせいかな、そう思ったけど、よく分からない。
「ただいま」
ずいぶん久しぶりみたいに思った。笑顔の彼女、生きて動いている彼女。
「ね、見て」
ルッカは言う。指差したのは、もう高く遠すぎて微かに輪郭がつかめる程度の、あの時計。
「ロッソ、君がさ、時間を取り戻してくれたんだよ。だからバースデイ・タウンはまた動きはじめたの」
時計じかけの街、バースデイ・タウン。
粉雪は溶けて小さな雨になり、ささやかに降り続けていて、街の外にはアーチがかかっていた。
虹だった。

虹を見つめながら、僕はそっとルッカの手を握る。柔らかくて温かい手。生まれて初めて、つなぎ合わされた手。何も言葉はなかったけれど、気持ちもつながったように彼女の手にも少しだけ力が入る。

また僕たちは時間を刻んで生きてゆくんだろう。
街にまた夜がくる。
明日の朝、またいつものような優しい時間が来るとは限らないけれど、それでもいい。
時間が止まってしまったら、また動かせばいい。
優しい夜がすべての人を包んでくれたらいい。
いま、僕はそう思った。


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時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>
時計じかけのジュヴナイル <7>
時計じかけのジュヴナイル <8>
時計じかけのジュヴナイル <9>
時計じかけのジュヴナイル <10>

時計塔のある街で

「時計じかけのジュヴナイル <クリスマス編 おわり>」


all illustration and story by Billy.
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2012-12-18 23:43 | カテゴリ:文芸パンク
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廃景でも僕らは歌う

廃景、戦争好きの皆さんへ、
街は更地、荒れ地になって、銃火器たちは引き揚げた、
瓦礫に吹く風、雨になれば洗われるかな、
煙のニオイ、まだ、どこか燃えてるのかな、
くすぶった感情は、いまだ余熱を持ったまま、

ここは非武装地帯、中立の街だった、
僕ら誰もピストルなんて持ってはいない、
せいぜい果物ナイフくらいだった、

スコールみたいなショットガン、
乱射、進撃、雨あられ、
死傷者、惨劇、神祈れ、
次は誰を悲しませるの?
ずっと遠い向こう空、泣いてる誰かを想像しよう、

瓦礫道をスキップしながらミイラの親子が歩いてた、
口笛が淋しそう、何を思ってるんだろう、

歌っていれば少し楽しい、
歌っていれば嘆いてられない、
皆殺しには失敗したね、
僕ら、まだ生きてるよ、廃景で歌ってる、

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時計じかけのジュヴナイル
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時計じかけのジュヴナイル<4>
時計じかけのジュヴナイル<5>
時計じかけのジュヴナイル<6>


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2012-12-18 08:00 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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時計は止まってたんだ、秒針だけが震えながら前後していたけれど、長針と短針は凍りついて時間は止まってしまっていたんだ。
へり背をつけて、あごを引いて真下に目をやるとバースデイ・タウンが小さな庭みたいに見えて、そしてそのさらに下にはバースデイ・タウンを巨大にした街が見えた。

時計塔の下には巨人が住んでいる、それは噂なんかじゃなかった、そこにはアタマにネジのない巨人たちが西へ東へ行き来していた。
ときどき、僕のほうを見上げる巨人がいる。
違う。
僕を見ているんじゃない、時計を見ているんだ。
時計が止まってしまっても生きて動くことのできる人がいる。
じゃあ、僕らは、バースデイ・タウンって一体なんなんだろう……。

「そんなことはどうでもいいんだ、僕は凍ってしまった時計をなんとかしないと……」
口にしてはみたものの、どうすればいいのか分からない。
でも迷ってる時間なんてないんだ、僕は助走をつけて走り出し、全身をバネにするつもりで跳び上がった。
届かない。
落ちる……。
弧を描いて落下してしまう自分の姿が脳裏をよぎった、そのときだった、振り切れるほど伸ばした手に握っているペンダントのチェーンは長針の先、その矢印のかたちをした尖端に引っかかって、僕は宙に吊られていた。
手繰りよせるように、這い上がるように手を伸ばし、僕はその巨大な長針にしがみつく、手が痺れるくらい冷たかった、表面に氷が張った文字盤に体が触れ、あまりの寒さに僕は気が遠くなりそうだった。

どうせ、いずれ止まってしまうんだったら、無茶をしたってかまわない。
僕は体を振り子のように左右に揺さぶって、どうにかもう一度、時間を再開させようともがいていた。
ずっとずっと見ていたい笑顔があるんだ。


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時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>
時計じかけのジュヴナイル <7>
時計じかけのジュヴナイル <8>


illustration and story by Billy.


<つづく>

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2012-12-18 07:59 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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走り出す、僕は見たこともない高く遠くそびえる塔に向かって走り出していた、止まった時間を取り戻すために。
僕らが住むバースデイ・タウンは鐘が鳴らない限り、そして時計が動き続けない限りは動かないってルッカが言った、僕は彼女に渡されたペンダントを握りしめ、ひたすら塔を目指して走る。
本当のところ、僕にはよく分からない、それでもいいって僕は思う、たかがしれた僕の力ではルッカのネジを巻き続けることなんて出来やしない、だからといって、僕はこの世界が、この街が、大切なガールフレンドが沈黙してしまったバースデイ・タウンなんて要らない。

「ロッソ、あなたは盗賊になるんでしょう? じゃあ、失われてしまった、塞がれてしまった時間を取り戻してきてよ」

ルッカはそう言ったんだ、それだけなんだ、僕がこの世界にいる理由ってやつがあるんなら、それは大切な人がいる世界をあきらめたりはしない、それだけなんだ。

誰もがたどろうともしなかった巨大な時計へと続く階段がある、あまりに冷たい風が四方から吹きつけて飛ばされてしまいそうになる、僕はルッカに手渡されたペンダントを握りしめ、這うように階段を登ってゆく。
凍りついて止まった時計のネジをもう一度、巻き直すんだ。

円状の時計塔に巻きつくように螺旋を描く階段を駆け上がる。
塔を形作るレンガは積み重ねられたそのひとつひとつが異常に大きい、僕の背丈くらいはあるかもしれない。まるで小人になってしまったような気がした。
それに対して階段は僕の歩幅に合わせているかのように……いや、バースデイ・タウンの住民に、と言うほうが正しいのかもしれない、とにかく、そのサイズの比率は不自然だった。
塔をつくったものと階段をつくったものはそれぞれ違うような気がした。」
どちらでもいい。誰がなんのために造ったのか、誰のために造られたのか。なんだっていい。僕は無心を心がけ、僕自身がネジを巻いているかのように階段を登ってゆく。
やがてその先にはきりきりと耳障りな音を立てて、表面が青く光る時計の文字盤が見えてきた。


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時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>
時計じかけのジュヴナイル <7>

illustration and story by Billy.


<つづく>
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2012-12-18 07:57 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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「ルッカ……」
頬に少し赤みがさした彼女はいつものようにクールな佇まいではなかったし、どこか焦点が合っていないようで僕を見ているのか、それとも僕の背後の風景を見つめているのか分からなかったけれど、それでも僕は安心して深呼吸ができたんだ。

「ルッカ……目を覚ましてくれたんだ……」
「ロッソ……」
「街は……バースデイ・タウンは停止しちゃってる、ネジが巻かれないと朝が訪れないっていうのは、例え話なんかじゃなかったんだね……君のネジを巻いたのは僕なんだ、少ししか巻けなかったんだけど」
ルッカは目をこすり、周囲を見渡してから小さく溜め息をついて話しはじめた。

「そう……ロッソがネジを巻いてくれたんだね……ありがとう……でも……」
「でも?」
「ロッソ一人ではバースデイ・タウンすべてのネジは巻けない……ねぇ、今朝、鐘は鳴ったの?」
鐘。朝と昼と夜に響く祝福の鐘。鳴ったんだろうか? 聞かなかったような気がする。今朝のバースデイ・タウンは何も音がなかったような気がする。
「分からない、でも鳴ってないような気がする……。でも、どうして?」
「……私たちバースデイ・タウンに住む人や動物や……そう、命があるものたちは時計じかけなの。いつもと同じように朝を迎えて陽が沈むまでの間、ずっと時計が動いていてくれるから、私たちは生きて動いていられるんだよ」
時計……僕らの住むこの街の遥か頭上にあるという、巨大な時計。
かすんで見ることはできない、あまりにそれは高く遠くて、話に聞いたことしかない。
そんなのは単なる噂だと思っていたけれど。
「ロッソ」
ルッカは真っすぐに僕を見つめて言った。
「きっと時計が止まってしまっているのよ。理由は分からないけど、鐘が鳴らないのも私が起きられなかったのも、街が寝たままなのも、時計が止まっているからなの……」
ルッカは一気にまくし立てたけれど、僕にはその意味がよく分からなかった。
時計? それが止まると僕らは生きてさえいられない? よく分からない。
「ロッソ、君は盗賊になるんでしょう、君や私たちのために止まった時間を奪い返してきて、お願い……」


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時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>
時計じかけのジュヴナイル <7>

illustration and story by Billy.


<つづく>
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2012-12-18 07:28 | カテゴリ:文芸パンク
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冬の魔術師

映りこんだその顔は、不愉快そうに睨んでる、
ひどく痩せて目だけがギョロつく、
どこかで見た記憶の男、

感情なくして醒めたふりする、
虚ろいながら緩めたシルクのネクタイ、
中指にはスカルのタトゥー、
隠すためのジルコニアンリング、

イカサマの手品師は、
光を放つすべてを嫌悪、
熱の源、太陽を消してしまうマジックを考える、

東の方角、神が起きたら そいつを引き抜いて、
もっと濃い夜だけを用意させてやるって決めた、

スパナを手にした手品師は、
自分を睨む男を砕いた、
塵に散らばる破片のひとつずつに分散した小さな顔に蔑まれ、
悲鳴をあげてそこに倒れた、

かけらを拾い集めた手品師は、
二度と自分が映りこんだりしないよう、
知る限りの様々で鏡を塗り潰し、
鉄の枠に封じ込める、

神の姿は変えられなかった、
けれど男のイカサマは、
星にある色すべてを映す、
ステンドグラスに変えていた、

もう自分を見なくていいとなでおろした胸、
最後の無色を突き立てて、
鮮烈なる赤にした、
よろめきながら欠けたピースをはめ込んで、

男は神が目指める前に眠った、
男は神が目指めるより早く消えてった、

━━━━━━━━━━━━━━━
時計じかけのジュヴナイル
〝JACKPOT DAYS〟-image


時計じかけのジュヴナイル<1>
時計じかけのジュヴナイル<2>
時計じかけのジュヴナイル<3>

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〝JACKPOT DAYS〟-image
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2012-12-17 17:59 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
〝JACKPOT DAYS〟-111220_091120.jpg

もし世界が停止してしまったら、君は誰をいちばん最初に想うだろう。きっと、それは君にとっていちばん大切な人だって僕は想うんだ。
転がるように街を走って、僕はルッカのところへやってきた。
幼なじみで、ずっとそばにいてくれたガールフレンド。
不確かで不思議なこのバースデイ・タウンに生まれて、僕には彼女の存在だけが確かなものだったんだ。

「ルッカ!!」
彼女の姿を見つけた途端、僕は叫んでた。
停止してしまったバースデイ・タウンに何が起こったのかは分からないけれど、彼女さえ目覚めてくれたら、それだけでいいような気がしたんだ。
「ルッカ……なあ、起きろよ、ルッカ」
肩を揺さぶって何度も名前を呼び続けた、だけど、返事はなかった、彼女の頭からは巻かれていないネジが飛び出していて、その姿はまるでからくり人形みたいだったんだ。

バースデイ・タウンに生きるすべての命はネジを巻かれて朝に目覚める。
例え話なんかじゃなかった、ルッカの頭にもネジがある。
僕は恐る恐るそのネジに触れてみた。
温もりはまだ残ってた、彼女の肩や細い指と同じように温もりがあったんだ。
「ルッカは……生きてる、死んでなんかない」
なにをどうすればいいのかなんて、まるで分からなかったんだけど、気づけば僕は夢中でそのネジを巻いていた、この街の命がすべてネジを巻かれることで命を吹き込まれるんだとしたら、他に方法はきっとない。

どれくらいそれを続けたんだろう、ようやくネジは回転しながら少しだけ奥に沈んでいった。
「ロッソ……?」
か細い声が聞こえる、ルッカが目を覚ましたんだ、ルッカは生きてる、死んでなんていなかった。
「ルッカ……良かった……」
「ロッソ……街は……バースデイ・タウンは……?」
彼女は真っすぐに僕を見て、そう問いかけた。
なぜかは分からない、だけどそのとき、僕はルッカの目を見て、彼女がこの街の秘密を知っているような、そんな気がした。


〝JACKPOT DAYS〟-111220_084855.jpg

〝JACKPOT DAYS〟-111220_102814.jpg


時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>

illustration and story by Billy.


<つづく>
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2012-12-17 17:58 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
〝JACKPOT DAYS〟-111219_172049.jpg

僕は目覚めるといつものように街をゆく。そこには変わらないままのバースデイ・タウンがあるんだってことを確かめてるような気だってする。
夜のうちにネジはちゃんと巻かれてて、昨日とそうは変わらない景色が広がっているんだって。
家にいちゃ分からないから、景色を横目にしながらルッカに会いに行く。

だけど。
その日は違ってた。

陽は昇っているのに、とっくにネジは巻かれたはずなのに、いつもの朝の賑やかな笑い声も、向かい合うたびのしつこいくらいの挨拶もなかったんだ。
通りにいる人の姿はまばらで、彼らだって止まってしまってたんだ、挨拶しても返ってこなかった。
昨日の続きは、今日という日は、当たり前みたいにあるわけじゃなかっただ。
音がない、それだけでまるで別の世界に紛れ込んでしまったみたいな気になる。
心臓を掴まれたみたいに胸の奥が痛くなって、僕は道端の花をやる、その花は咲いてなんていなかった、巻かれていないままのネジが突き出して、止まってしまっているように見えたんだ。

ルッカ。
僕は彼女のことを思い出す、胸のドキドキを我慢しながらひたすら走って彼女がいるはずの家へ向かった。
「ルッカ!!」
叫んで開けた戸の向こうにいたのは、眠るように静かな彼女が座り込んでいた。


〝JACKPOT DAYS〟-111219_172038.jpg


時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>


illustration and story by Billy.


<つづく>
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2012-12-17 17:56 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
〝JACKPOT DAYS〟-111218_182135.jpg

このバースデイ・タウンに住む僕らには、見ることができないくらい高くに時計があるんだ、その時計は塔の頂上にあって、街は塔の途中につくられた。
朝を、昼を、夜を告げる鐘は街の少し上にある。
あまりにも大きくて、その鐘が鳴ると街は痺れたように揺れてしまうくらいなんだ、バースデイ・タウンのある時計塔は地上から真っ直ぐに空まで伸びて、この街の下、地上には巨人たちが住んでいるらしい。そんなの単なる噂だろうって思ってるけど、実際に見たことはないから僕にはよく分からない。

時計が回転を続けて、時間を刻む限り、街も僕らも生き続けてゆくらしい、この国に住む人はずいぶんと長く、そんなふうに暮らしてきたらしいんだ。
いくら見上げても、目を凝らしても、頂は輪郭さえ見えない。耳を澄ませば秒針の音が少しだけ聞こえる。
風が鳴っているだけのようにも、遠くをゆく鳥の鳴き声にも聞こえる。

「明日はどこへ行こう」なんて誰も問わない。この国から出てく人なんていないんだ。
出てゆけないし、バースデイ・タウンに生まれたヒトはバースデイ・タウンにしか生きられないらしい。
きっと、なにか秘密があって、それは知らないほうがいいことなんだって、ルッカに聞いたことがある。
彼女のおばあちゃんのお母さんは時計塔の番をしてるから、他の人よりは国の成り立ちを知ってるみたいなんだ。

永遠に止まらず、時を刻み続ける時計に見守られて、僕らは生きる。
じゃあ、時計が故障したらどうなるんだろう?
ルッカも僕も止まってしまうんだろうか。
僕はずっとそのことを考えてるんだ、ルッカと出会ったその日から。

僕らは生きてるんじゃなくて、時計に生かされてるだけなのかな、そんなふうに聞いてみても、ルッカは黙って首を振るだけで、僕はまた空を眺める。

時計が止まってしまうかもしれないって、いつも気にしてるから。
そんな不安に限って、それは現実になってしまうものなんだ。


時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>


〝JACKPOT DAYS〟-111218_182206.jpg



<つづく>


illustration and story by Billy.
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2012-12-16 15:40 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
〝JACKPOT DAYS〟-111215_171750.jpg

夕方ごろになるとネジがゆるんで、僕たちは一日が終わってゆくことを知る、僕らは夜、眠っているうちに知らず知らずネジを巻いてる。
また明日、今日や昨日と同じようにバースディ・タウンで生きるために。

僕らはどこかでそれが当たり前だと思っているけど、本当にそうなんだろうかってよく思う。
僕は僕が生まれた瞬間のことを覚えていないし、小さかったころのことだってろくに覚えちゃいない。
ルッカはいつか「忘れながら生きてくんだよ」って僕に言ったことがある。
普段の彼女はそんな意味深な言い方はしないんだ、「子供みたい」とか「またバカみたいなこと言ってる」とか、そんなふうに僕をからかうだけで、あまり多くを話すほうじゃない。
盗賊になるって僕は半分本気で、けど、それは漠然とした願望かもって思ってる、ルッカは自分が何になろうとしているかなんて言わない。
彼女は何になるんだろう。どうやって生きてくんだろう。
聞きたいのに、僕はいつもそれが聞けないまんまなんだ。

「じゃあ、また明日ね」
オレンジの空にぽつんとルッカが手を振ってた。
表情までは読み取れなかったけど、その声色はいつもの静かで優しい彼女のまんまだった。
「うん、また明日」
僕は見慣れた街を、歩き飽きるほど歩いた道を戻ってゆく。
背の低い草の影は長く伸びて、その先は街の端にまで届いているような気がした。

夕方の鐘が鳴ると、高い壁の向こうから風が吹いて、冬がすぐそこにまできてるんだって分かる。
空高くにあるこの街は酷く寒いんだ、動物たちのなかには一冬の間、眠り続けてネジを巻き続けるやつもいる。
僕らはそうはいかないから、凍りつくような寒い冬がきても、バースディ・タウンでまた生きてくんだ、ネジが巻き続けられる限りはね。


〝JACKPOT DAYS〟-111215_172431.jpg


時計じかけのジュヴナイル <1>


時計じかけのジュヴナイル <2>



illustration and story by Billy.


<つづく>
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2012-12-16 15:39 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
〝JACKPOT DAYS〟-111214_173230.jpg

街を眺めるのが好きで、僕はいつもここへくる。この大きな街灯は街を照らすようには出来ていないみたいで、バースディ・タウンの真逆に向いてる。僕らが行くことのできない、まだ見たこともない、大地にある別の国のためにあるんだって聞いたことがある。
ここはバースディ・タウンのなかでいちばん高い場所。街を囲む壁以外ではね。壁を登ることはできないんだって、風にでも吹かれたら真っ逆さまに落ちてしまうし、第一、その壁はねずみ返しになっていて、ヘリコプターでもないと上がれない、この街にはそんなものはないから、誰も上がってみようとさえしない。

「なあ、ルッカ。いつか、あの壁の向こう……他の国を見てみたいって思わない?」
僕はそんなふうに問いかける。
なんど、同じことを言ったか分からないくらいだし、彼女の反応も決まってる。

「ロッソはいつも、この国じゃお宝なんて見つからないって言うよね」
彼女は笑う。それは子供をたしなめるみたいな言い方で、お姉さんみたいに感じる。
だけど僕らは同じ歳、来年には15歳になる。
彼女はルッカ、僕はロッソ。バースディ・タウンに住んでる。ついでに彼女の隣にはザジって名前の、いつも逆立ちして歩いてる妙なイヌがいる。

バースディ・タウンでは15歳から働くことができるんだ、リンゴやバナナを育ててもいいし、鼓笛隊に入ったり、小説家や研究家にだってなれる。

僕は……何度言っても笑われるんだけど……国を出て盗賊になるつもりなんだ。
彼女だって連れてゆきたいし、仲間だって探してる。世界中の宝を巡る冒険をして、未知の財宝を見つけるんだ。


〝JACKPOT DAYS〟-111214_173301.jpg

前回→時計じかけのジュヴナイル <1>


illustration and story by Billy.


<つづく>
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2012-12-16 15:37 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
〝JACKPOT DAYS〟-111214_001911.jpg

遥か高い空の上の時計の針が午前6時を示した瞬間、鐘の音が響き渡って朝がはじまる。それは新しい一日のはじまりを祝福する音色だと聞いたことがあるけれど、僕にはあまり実感がない。
誰が誰を祝っているのか、それがまず分からないし、第一、年がら年中、朝が早いのがあまり好きになれない。

朝が始まるとネジが巻かれて花だって咲く。夜がくると巻き終わって花はまた翌朝を待つ。
この国はみんなそうなんだ。生きているものは花だって犬だって猫だって……そう、もちろん、僕らだって朝に巻かれたネジが回転を終わるまで起きていられるんだ。

夜がくればこの街は静かに眠り、また翌朝の祝福を待つ。それをずっと繰り返してる。
この街の名前はバースディ・タウン。
誰がそう名付けたのか、僕はまだそれを知らない。
この街に生まれた僕らはここから外には出られないって、口を揃えて皆が言うんだ、街は高い壁に囲まれているし、その壁の向こうは空だから、地上には降りられないんだってさ。パラシュートがあれば降りられるのかもしれないけれど、まだ僕は壁の向こうにある景色を見たことがない、たぶん、この街のほとんどの人は見ようとも思っていないんだと思う。

僕は朝がくるといつも真っ先に街を通り抜けて、壁の次に高い、巨大な街灯に登ってるんだ、ほんとはそれも禁止されてるんだけど、黙っているから誰も知らない。

ここはバースディ・タウン。
僕らの生きる、小さな小さな空中の街。
朝昼夜に祝福の鐘が響き渡る街。
誰もかれもがネジで動いてる、なんだか操り人形みたいな街。
いつかこの街を出て、よその国を見てみたいって、僕はいつも思ってるんだ。


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illustration and story by Billy.



<つづく>
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2012-12-14 07:24 | カテゴリ:文芸パンク
〝JACKPOT DAYS〟-image



怠惰を貪るスモーカー、煙のなかで息をする、
まるで監獄、ベルベットの地下2階、
地上にタバコはなくなった、
煙を吐けば罪人になる、いびつに尖る神経質、
外には番犬、ネイビーグレー、制服が睨んでる、

白く塗り潰した世界地図をキャンバスに、
空想の新しい地図を描く、
海を創って、陸を描いて、
カミサマ気取りで赤いマルボロくわえてる、

国境なんてなくなって、言葉はひとつ、
アスファルトは使わない、
チェリーの種を吐き出して、けらけら笑うテンガロンのカウガール、

白く塗り潰した世界地図をキャンバスに、
妄想ふざけた海図を描く、
船は騒いで、島に流れて、
海賊気取りで琥珀葉巻をくわえてる、

焼き払う世界地図、煙る世界、
ねえ、新しい海を探そうか、
焼き払え世界地図、煙れよ世界、
ねえ、新しい星を見つけてよ、
ピリ・レイスみたいになれよ、間違いだらけの世界は愉快、
答えなんかありゃしねえんだ、
真冬に咲くクローバーの花は何色だか知りたいような、そんな気分、
そんなのどうでもいいって笑えってやれよ、


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☆☆
☆☆☆

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2012-12-13 22:20 | カテゴリ:3minute rockin novel
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牙を抜かれた獣が嗤う

 その檻のなかにいる生き物たちは牙を抜かれ、与えられる餌で空腹を知ることもない。
 消毒液で体を洗い、不快な臭いを漂わせることもない、飼育係を襲えば殺処分にされると分かっているし、愛想よくしていれば、追い出されることもない。
 休日にはボールで戯れ、御主人の機嫌を損なわなければ死ぬまで安泰。
 野生に戻りたいなんて思わなくなって、剥く牙はもう失った。
 毛づくろいして小綺麗にしていれば、狭さに慣れてしまえば、こんな楽な生き方はない。

 抗生物質で無菌にされた生き物は、無傷で生きていようとしてしまう。飼い馴らされるに抗わなければ、檻のなかも悪くない。

 さあ、俺に餌を投げろ。じっと見てるだけじゃ、芸はやれないね。
 野生なんて忘れたんだ、さあ、何かくれよ。
 飼い馴らされた生き物は今日も愚痴をこぼしてる。
 飼い馴らされた生き物は歯のない口を広げて笑ってやがる。

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白銀のジュリオール
彷徨ブルー
“delayed flow”

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2012-12-13 20:50 | カテゴリ:小説 「流星ツアー」
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60年ぶりに飛来する流星群・ナイトライン。
古来から願いを託された流れ星、それを前に人々は何を思い、そこへゆくのか。

8月2日から8月12日に渡り連載しました「流星ツアー」、その全編を。

流星ツアー #1
流星ツアー #2
流星ツアー #3
流星ツアー #4
流星ツアー #5
流星ツアー #6
流星ツアー #7
流星ツアー #8
流星ツアー #9
流星ツアー #10
流星ツアー #11
流星ツアー #12
流星ツアー #13
流星ツアー #14
流星ツアー #15
流星ツアー #16 (最終話「星に願いを」)


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彼らは語り次ぐだろう、この夏のことを、そして託した願いのことを。
流星は遠ざかれども、人々は願わずにはいられない。

命は続いてゆく。



※この物語は親しいブロガーさんのページで「獅子座流星群」の話題になっていたとき、「天候がいまひとつだから見られないかな……」なんてコメントをやり取りしていて、その時に「じゃあ、俺が流星を見せる」なんて大袈裟なことを言い、それがきっかけでスタートしました。

流星が観測される予定の日に最終回をもってくるため、削ったエピソードが多く、また朝夕の2回更新で一気に突っ走った記憶があります。

また、架空の設定ながら明確に現在の日本を舞台にしたのは初めてでした。

この物語の続編を期待されていましたが、イメージを残したままで書いていません。
来年、やろうかとも思っています。

いわゆる小説の体裁で書いたもののなかでは、これが自分でも一番好きです。自画自賛に過ぎませんけどね(笑)。

おヒマのある方はどうぞ♪
お忙しい方はまた時間のあるときに♪



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2012-12-13 07:30 | カテゴリ:文芸パンク
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ロデオ・ディアブロ

ワニ化粧の長いリムジン、躊躇いすらなく小鹿をはねた、
ガロン単位でガソリン飲んだ、消えてく命に気づかない、
傲慢さに無自覚だから、ガードレールを乗り越えて、
暗黒広がる崖下虚無のゼロのなか、炎上しながら吸い込まれてく

ディアブロ四肢に宿らせて、胸のロザリオをかじり斬る、
ドリフトしながら峠を走る野犬の群れは56頭、
火を吹きながら喉笛鳴らして、燃え上がるのは赤いエンジン、

差別主義を隠した紳士、弱きを資力で武装する、
走り屋ムダすら気づかない、愚けさなんて無意識だから、
ガードレールを乗り越えて、暗黒広がる崖下虚無のゼロのなか、
炎上しながら吸い込まれてろ、

命はきれいばかりじゃなくて、汚れたものも咀嚼する、
毒も薬も食べ尽くせ、壊れた躯を再生させる、
それくらいに食べればいい、

ディアブロ心に棲まわせて、カミサマってヤツ嘲笑う、
ドリフトしながら街を斬る、
野犬の群れは56頭、解放しながら返り血浴びて、
燃え上がるのは赤いエンジン、


━━━━━━━━━━━━━━━

“evergreen”
evergreen 2nd half
“sadistic”

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2012-12-12 18:46 | カテゴリ:文芸パンク
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漆黒を駆け抜ける、夜明けはまだ先、
東に赤みは立ち昇らない、南の遠く港まで、
タミルは跳ね馬またがって、

振り返る過去には火柱、
いまだ漂う煙は流れ、
かすかな光が睨む先に影を伸ばして、

背に纏うは敵の旗、
尖る塔になびいてた、
勝利や敗北、そんなものは要らないんだと少年タミル、
果てのないエクソダス、

暗黒はもう抜けた、
陽光には遠くとも、
やがて昇る光の温度を覚えてる、
勝ち名乗りはあまりに不要だ、

振り返る優しきは、
いまだ胸に仄かに燈る、
速度をあげろ跳ね馬よ、
なびけ背に纏う旗、

青と黒の中間あたり、
影を抜き去りタミルは走る、
その姿は見よう次第に重なる過去で、

自由と云う名の逃走が、
また僕らを待っている、
自由と云う名の闘争が、
また僕らを待ってる、

かの地で待つ彼女を連れに、
かの地で待つ彼女を連れに、



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2012-12-12 18:44 | カテゴリ:文芸パンク
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尾を振らねば捨てられた、
噛みつけばやはり同じで、
弱きとして映らねば、
不要に過ぎると言い放たれる、

放火を経て赤く染まりしその背中、
牙剥く舌に垂れる赤、
群れなす獣はガソリンを吸い、
座礁のタンカー食い散らして、

重金属の犬は生まれた、
誰の狗にもなりはしないと、
鈍い黒の毛並みに炎、滑走する赤レンガ、
死神でさえも追えぬ速度で、

要らないものは要らないなりに、
刃向かう爪と義を噛んで、
氷の道にはイバラの花が、千切りながら駆けてゆく、

重金属の犬が生まれた、
ヒトごときの手を舐めはしないと、
逆立つ毛には紅蓮が宿る、
疾走する暗黒を、重金属が群れなし暴れ走ってく、


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2012-12-12 18:41 | カテゴリ:文芸パンク

走る風を見てた、
校舎の裏の小さな丘から駆けるように抜けてゆく、
風をずっと見つめてた、

春、夏、秋、冬、
屋上の柵にもたれて、せっかちに翔けて去る風を見続けた、

彼らにさらわれた生まれたての若葉の不幸や、
老体を撫でられてるかのように横たわる大樹、
役割を終え、ただの一言すら愚痴らず、散らばる枯れ葉たち、

さらさら、
そよそよ、
かさかさ、
感情隠して、その身を風に委ねてる、

ささやかな反抗心で棄てられた答案用紙や、
無抵抗に転がる砂埃、
意味の有無を問わず、ただ無目的に非情な風を見続ける、

ひとつの季節は過ぎ、
星はまわり、私はまたひとつ大人になる。

好きと嫌いに関わらず、
それを繰り返し続け、
新しい季節の訪れを待つ、
春はまだ遠く先だ、だが恐れることはない、

君には僕が、
僕には君が、
人には人が、
柔らかく繋がる、

君と年齢を重ねる奇跡をくれた、
この世界にときには感謝する、

僕たちは儚く、瞬間にうつろう幻に過ぎない、
だが、交わした想いは決して幻になどなりはしない、

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2012-12-11 22:34 | カテゴリ:3minute rockin novel
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牙を抜かれた獣が嗤う

 その檻のなかにいる生き物たちは牙を抜かれ、与えられる餌で空腹を知ることもない。
 消毒液で体を洗い、不快な臭いを漂わせることもない、飼育係を襲えば殺処分にされると分かっているし、愛想よくしていれば、追い出されることもない。
 休日にはボールで戯れ、御主人の機嫌を損なわなければ死ぬまで安泰。
 野生に戻りたいなんて思わなくなって、剥く牙はもう失った。
 毛づくろいして小綺麗にしていれば、狭さに慣れてしまえば、こんな楽な生き方はない。

 抗生物質で無菌にされた生き物は、無傷で生きていようとしてしまう。飼い馴らされるに抗わなければ、檻のなかも悪くない。

 さあ、俺に餌を投げろ。じっと見てるだけじゃ、芸はやれないね。
 野生なんて忘れたんだ、さあ、何かくれよ。
 飼い馴らされた生き物は今日も愚痴をこぼしてる。
 飼い馴らされた生き物は歯のない口を広げて笑ってやがる。

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白銀のジュリオール
彷徨ブルー
“delayed flow”

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2012-12-11 18:59 | カテゴリ:poetrical punk 00B
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>
あの船はもう沈んでしまった、だけど僕らを乗せて走った、
ナイフで刻んだふたりの名前、手描きの旗が風になびいた、
いまでもずっと憶えてる、世界は愛に満ち溢れ、
誰よりずっと、美しい季節を手にしてたんだ、

ふたり揃って憧れた、あの娘は元気にしてるかな、僕らは順に想いを告げて、
そしてあっさり撃沈したね、慰め合おうもバカバカしくて互いに互いをからかいあった、
下らない冗談ばかりで夜を潰した、いまになればよく分かるよな、
あの娘はちゃんと僕らを見てた、

相も変わらずろくでもない日々、
それなのに、何かが始まるような予感だけは続いてる、
だからこうして手紙を書いた、くそったれな少年時代をもう一度、
笑い飛ばしてやりたいからさ、

“love and peace”

帰ったらまた会おう、バカは死ぬまでバカのまんまで、
いつだって笑ってられる、
そんなふうに思うんだ、



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2012-12-11 18:57 | カテゴリ:未分類

夜をゆく足の音、凍りついたレモンをかじる、
そんな音によく似てた、秒速5センチくらいで夜は、
さらなる深みを増してゆく、

胸に十字を光らせて、漆黒へと紛れゆく、
神の扉をこじ開けに、手にはスパナとリボルバー、
きざなそぶりでビールをあおる、

海岸沿いを波乗りたちが焚火をしてる、
射抜く目つきで餓鬼らを制した、
辺境にてどこ吹く風を演じてみれば、

夜をゆく足の音、凍りついたレモンをかじる、
そんな音によく似てた、秒速5センチくらいで夜は、
さらなる深みを増してゆく、

悪魔を気取るつもりで歩く、
愉快不愉快どちらもない、
握りしめたレモンかじって、
跡のついたそいつを投げる、

夜はさらなる深みを手にし、
世界中から光が消えた、
ちぎれた鉄を混じらせた、
そんなにおいが鼻をつく、

星が瞬く、それがどうした、
無邪気な外様が巣くう夜なら、
やがては遠く辺境へ、誰が為に風は鳴る、
夜の響く踵を鳴らし、深みゆく闇をゆく、


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2012-12-11 18:54 | カテゴリ:poetrical punk 00B
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久しぶりだね、そっちはどうだ、
僕は相変わらずってとこだ、良くも悪くもなくってさ、
きっとあのときよりもろくでもない、そんな感じさ、

この街には陽は陽が射さない、
年がら年中、鉛みたいに分厚く重い、
雲がずっしり空を覆ってて、気が向いたら錆びの匂いの雨を降らせる、
だからだろうか、誰彼なくいつだって憂鬱そうで、
アスファルトばかりを睨む、

ときどき僕は思い出す、君と生きた季節のことを、
ちょうど今頃、そっちは雨季になるだろう、
濡れた花弁の紫の、鮮やかさが好きだった、
昼夜もなく働いたよな、手にした全部を握りしめ、
小さな船を僕ら手にした、そいつはまるでくすぶる衝動そのままに、
僕らを導く光そのもの、

あれはそう、夏を迎える少し前、
だけど陽は唸るように熱かった、

風を受けた僕らの船は、水平線まで駆けてった、
永遠さえも手に入れた、そんな気分でふたり騒いだ、
無邪気に信じられたころの話さ、何処までだって進んでゆける、

憧れたのは遥か昔の航海者、
彼らを真似て、ラッパ飲みした不慣れなラム酒、
デッキブラシを抱きしめて、昇る朝日に起こされた、
酔いの醒めない僕らは吐いた、



※後半へ。
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