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2012-08-30 20:10 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

  誰よりも速く走ればそれでいいんだ、そう、誰よりも。
  ガゼルが言って、それを合図にディータも駆け出した、僕は慌ててふたりの後を追う、その背に羽根があるかのように、風を裂いて加速してゆく、突然の行動に僕たちを監視していた兵が一斉に発砲する、もちろんそんなのが当たるはずがない、足跡か影か、わずかな過去を狙っているみたいにさえ思う、加速する意思は感傷を剥ぎ取るように直線を滑ってゆく。

  速度、それは絶対的な瞬間だ。僕は息を切らせながらひたすら体を躍動させる、ヒトだとか動物だとか……そんな感覚さえない、海から吹く向かい風の隙間を縫うようにただ進む。銃声と怒号がまだ聞こえてる、出自のわからない様々な言語で飾られたコンテナが立ち並ぶ倉庫街を抜け、無人の港にたどり着く。
  振り返ると荒れて傷ついた地が広がる。僕はただ、『ふたりに会ってこい』と言われ、よく理由も分からないままこの島にやってきた。
  分かったこともある、かつて混沌のうちに焼き払われたこの地はいま、不本意な再生を遂げさせられようとしている。ここに生まれ、生きた人びとの意思も、そして、この島を建造した人間の思いも放棄されてしまうかたちで。

  ガゼル、ディータ。僕は話し始める。
「なぜ、オヤジがあんたたちに会ってこいって言ったのか、それが分かる気がする。トーキョーへ行こう。ボスに会って欲しい、僕がオヤジと呼んでる、ラドラムに会わせたいんだ、いや、きっと、オヤジもそのためにここへ行けって言ったんだよ」
「……ラドラム、か」
  そういうことか、ディータはタバコに火をつけた。
  ああ、嫌いか、ディータはギャングなんて嫌うのか。
「いや、嫌うとか好きだとか、そんなのじゃない。ラドラム・ファミリーは知ってる。それでお前がこのシマに来たってことだな」
  そうだ、この島は政府によって廃棄された、そして流入してきた他勢力によって、支配を受けてる。
「俺は……ガゼル、ディータ、俺はいくら腐ってもニホン人なんだ、力を貸してくれ、バクスター一家と駐留軍から祖国を取り返す。この国は、俺たちの国なんだ」

  しかたねえな、ガゼルは火種を踵ですり潰した。
「お前の一味のシマなんかどうでもいい、でもな……」
  泥が泡をたてる波打ち際に唾を吐く、そして続けた。
「支配は嫌いなんだ、どうせ行くところもない、せいぜい抗ってやろうじゃねえか、なあ?」
「ああ」、ディータは仕方ないな、みたいな感じで同意した。
  面白いな、次の敵はニホン国臨時政府と支配者の合衆国、そして俺たちの故郷を奪ったマフィアか。
「最高だな、ディータ」
「最悪ってヤツだよ、どうしようもないな、お前は」

  キン、とコンクリートを弾く耳障りな音が届いた、ようやく追いついた追っ手たちは飽きもせず僕らを狙ってた。遠吠えとともに足音が波のようにやって来る。
  片目を下弦の月のようにしかめ、その夥しく群れる者たちを凝視していた、かかってこい、そう言わんばかりに。

「たったいま、この瞬間をもって」
「俺たちは仲間だ」
「お前がボスなら、こんなとき、どんな命令をする?」
  答えはひとつだった。
「総員、その命をもって帰還しろ、それ以外にない」
  港にはクルーザーが待機してる、僕たちは島を離れ本土に向かう、逃げろ、いまはまだ死ねない、僕たちはトーキョーへ帰るんだ。
 待ってろ、サンシャイン・アンダーグラウンド。必ず、この地は取り返す。
  いまはただ、逃げろ。
  誰よりも速く。


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the after years / the sunshine underground afterlife……the end.

But a story going around an island still continues.

Next trial “THE DIRTY COLORS”.

All Photograph,Image Illustration and Text……by billy.

thank you.

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2012-08-30 17:22 | カテゴリ:3minute rockin novel
photo:01




 潰れた月がひしゃげて曲がった猫の尾を照らしてた、片目をつむっているのはウインクしている訳じゃなくって、ネズミにかじられた傷を隠したいから。
 いい加減な遠近感、右の端に寄りながら、雑然混ざる夜をゆく。

 陽光射さない地下の街、咲き誇るのは紛いのガーベラ、有り合わせた塗装済み、返り血みたいな赤には命がなかった。
 かび臭い道端、その側溝、体を埋める汚れた男。
 あきらめた顔をしていた。まだ生きているのに、彼の眼には何も映っていなかった。

 時計を持たないコールガールは昼夜を知らず、かすれた声で男たちを誘ってる、一夜限りなら愛もカネで買えるらしい、光を失くした地下の街には体を売買させる手配師たちが跋扈している、それはすでに世界中のどの国にも、どんな街にも存在している。
 ヒト紛いのイキモノたちは暗黒時代の到来をずっと待ってた、連中は地上の光を浴びると脳みそが溶けてしまうと教えられた、だから、昼間は外には出ない。
本物の光は知らない。
そんなの知りたいとも思っていない。
 そして退屈しのぎに乱闘騒ぎが始まって、血が流されるたびに囃子声が路地を走り抜けてゆく。

 陽のまばゆさを知っている、少女は倒れた男をずっと見続けていた、彼がその命を終えるとき、連れてゆかないといけないからだった。次々にヒトはヒトを傷つけ合って、灰色の風が吹く。
 ふわり歩く彼女の周囲だけは光が射していた。


<了>

━━━━━━━━━━━━━━━

photo:02



遠い太鼓
ピアノと森と空
〝sign〟

━━━━━━━━━━━━━━━

performed by billy.
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2012-08-29 08:39 | カテゴリ:tsu after life
JACKPOT DAYS!! -reading poetrical beat punk--110412_181712.jpg


JACKPOT DAYS!! -reading poetrical beat punk--110412_181731.jpg



the sunshine underground / after life

 ねえ、と僕は言う。
「まずはとんずら、でしょ」

 すでに周囲は包囲されているようだ、ビルの屋上から、螺旋階段から、そして巡回しか能がないと思われたネイビーの軍服たちの数名がはばかることもなく僕らにその銃口を向けていた。
「火は用意されているみたいだな」
「タバコどころじゃないな、全身が灰にされちまいそうだ」
 へへへ、逃げ場を奪われたとは思えない、ディータとガゼルは顔を見合わせ、くわえ煙草で笑顔さえも浮かべてた。
 僕は思う。このふたりは死を恐れないわけじゃない。
 自分は死なない、そんな過信があるわけでもない。
 覚悟があるだけだ。彼らが生きたその足跡は、誰が隠そうとも語り継がれてゆく。“本当に生きた”人間は死後でさえ、その痕跡は決して消え去りはしない。
 ディータとガゼル。ふたりはこの生と死の狭間にあって、その状況さえも飲み込み、余裕さえも漂わせ、きっと、死と戯れている、極限に慣れ、いまある命を楽しんでいる。

 じゃあ、とガゼルが言う。
 また逃げなきゃしかたないか、ディータが言う。
 再生を遂げつつあるアンダーグラウンドのことなんて彼らはしらない、僕もまた詳しくはない、長い髪を振り乱してガゼルは言った、
「誰よりも速く走ればそれでいいんだ」と。



……続劇

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2012-08-29 08:37 | カテゴリ:tsu after life
JACKPOT DAYS!! -reading poetrical beat punk--110411_195028.jpg


JACKPOT DAYS!! -reading poetrical beat punk--110411_192133.jpg


the sunshine underground / after life

「何年ぶりだ? ずいぶんアンダーグラウンドも変わっちまったみたいだけどな」
「ガゼル。臨時政府はこの島を合衆国に明け渡したんだ、だが、本土が押さえられたいま、ここは再び不要になった、そのあたりはジタン、君のほうがよく知ってるはずだ」
  ディータは僕の手に刻まれた刺青に気づいていた、だけど、そのことを口にはしなかった。

  何を言おうとしたか、それとも僕には話すことなんてなかったのか。ガゼルとディータ。ふたりはただ再会だけを望んでいた、そうだとしても、何か大きな、価値観の変容さえももたらす二匹のチンピラ。僕はそのふたりの背中を交互に見つめた。大柄ではない、鍛えあげた筋肉を持つわけでもない。
  それでも、彼らが無意識に放つ圧倒的な存在感。幾千の戦いをくぐり抜け、なおもその渦中に生きようとする静かな覇気。知恵や仁義や、正義やモラルをもってしても、刻みつけられた「命」の痕跡には太刀打ちさえもできない、それが分かる。感じる。
  喉元に切っ先を突きつけらても、ふたりなら唾を吐いて微笑みさえも浮かべるだろう。
  タバコをよこせ、そんな軽口さえも叩くだろう。

  オヤジ。
  あんたが僕にふたりに会ってこいって言ったのが分かるよ。トーキョーに生きる人間にはこんな強く激しい心臓を持ったヤツはいない。
 ピストルやナイフなんかでは屈することのない何かを持つ人間はいる。死を恐れないヤツだ。でも死にたいわけではなく、命を引き換えにしても譲れないものを持ち、しかも、死なないヤツだ。
  そして、彼らは優しい。僕が知り合った誰よりも。

「さあ、何からやろうか」
  ガゼルが言った。
「ビールでもってわけにもいかないみたいだ」
  ディータは楽しくってたまらないように笑顔を浮かべる。
  ねえ、と僕は言う。
「まずはとんずら、でしょ」



……続劇
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2012-08-29 08:34 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

  やっぱり。 やっぱり、生きていたか。
  そして、この地で巡り合うのも決まっていたような気がする。
「久しぶりだな、ディータ」
  そうつぶやき、俺はゆっくりと広場に足を踏み入れた。

  僕は再会するふたりを見ていた。
  騒ぎ立てるでもなく、涙が流れるでもない、数年ぶりになるんだろうふたりの再会は歓喜とはまるで違うものだった。過酷な運命を生き延び、僕には、いや、ふたり以外の他人には立ち入ることも感じることもできない、特殊な磁力が同じ時間、同じ場所にガゼルとディータを導いたんだと分かる。

「タバコを吸いたいんだ、火を貸せよ」
「ほらよ、相変わらずのマルボロか」
  ふたりは互いに火を点け合って、美味そうに煙を吸い込んだ、ガゼルは金髪に細い指を差し込んでがしがしと頭を掻きむしる、ディータは眉根に皺を寄せ、鼻の下を右人指で擦ってる。
  きっと、ふたりは何度もこんなやり取りを繰り返したんだろう。
  月日を経ても、変わらないものはある。

「こいつはジタンだ、サンシャイン・アンダーグラウンドに侵入したときに一緒だった。な?」
  僕はガゼルにアタマを叩かれて、初めて会うディータに無言で小さく礼をした。
「そうか、僕はディータだ、訳ありで……いや、実際はたいした理由なんかない、里帰りってとこだ」
 監視つきでな、ガゼルは姿勢を変えないまま、その左右で色の違う眼球だけで、あちらこちらから僕らを睨む軍の人間の存在を知らしめた。すでに射撃態勢に入っている兵もいる、だけど、ふたりはまるで意に介さないようだった、発砲がなされても、彼らには当たることがない。足下の石を削るのが精一杯だろう、この地において、ガゼルとディータには威嚇さえ通じない。

「……ふたりは……再会だけが目的じゃない……よな?」
  どうかなあ、同じセリフで笑い合う。言っただろう里帰りだって、ガゼルが言ってディータは笑った。そうそう、僕らは何も目的なんて持たずに行動してるんだ、と。

「何年ぶりだ? ずいぶんアンダーグラウンドも変わっちまったみたいだけどな」
「ガゼル。臨時政府はこの島を合衆国に明け渡したんだ、だが、本土が押さえられたいま、ここは再び不要になった、そのあたりはジタン、君のほうがよく知ってるはずだ」
  ディータは僕の手に刻まれた刺青に気づいていた、だけど、そのことを口にはしなかった。

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……続劇
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2012-08-29 08:31 | カテゴリ:tsu after life
JACKPOT DAYS!! -reading poetrical beat punk--110404_163048.jpg


the sunshine underground / after life

  ジタン、もう一人生きてるんだ、所在は分からないし連絡もついていない、でもな、俺の友人もやはりアンダーグラウンドに向かっている。
  ディータ、お前も島へ向かってるんだろう、俺たちはまた、あの地で再会するんだ。

「小綺麗になっちまいやがって」
  かつての面影をどこかに探しながら新たに建造された都市のメインストリートをゆく。
「いまはもう、サンシャイン・アンダーグラウンドなんて呼ばれてないんだろうな」
「呼び名はばらばらなんだ、もうニホンなんて名前の国もなくなるかもしれない、軍の侵攻を受けてから国家の存続が危うくなって、そのときにマフィアや移民たちが大量に流入してきた、純粋種のニホン人は山村部や地方都市に逃げるしかなかった、そこで小さなコミューンをつくってるって聞いたことがある」
  そうか、俺は屈託なく話す少年の顔を眺めた、黒髪の黄色人種だが、その目は薄い茶で、何種かの血が混じった人間だと分かる、踵でリズムを打つような独特の歩き方もニホン人ではない。
  だが、彼は自らをニホン人だと言う。生まれた国を祖国と表現するのに人種は関係がないはずだ、俺にとってのサンシャイン・アンダーグラウンドがそうであるように。

  ジタンはトーキョーを拠点にする、ある「ファミリー」の一員なんだと言う、ギャングのことだろう、左手の甲と首筋に同じマークの刺青がある、一味への、あるいはボスへの忠誠の証なんだろうか。
  彼は屈託なく無邪気な印象を与えるが、肝心なことに話題が及ぶと表情を曇らせる、しばらくの沈黙を経て、別の話を切り出す。一昼夜を共にしているが、俺はジタンがこの島に侵入した理由も聞いていない。
  もっとも、ここに来た理由に関しては俺も話していない。友達に会いに来た、としか言いようがないが、ディータが島にいると知ってきたわけじゃない、里帰りなんてのどかさもない。

「ほら、あれがこの島の平和を祈念して造られたモニュメントだ」
  ジタンが指差した先には石の壁に包まれた噴水の広場があり、赤と白のストライプの旗がなびいていた。
  足下の土は懐かしい感触がするが、その広場はアスファルトで固められている。島の中央……そう、俺が率いた島の住民たちのほとんどが撃ち殺された因縁の場所。
  すくみそうになる足を引きずりながら、その噴水に歩いてゆく、ふいに吹き上げられていた水流がやんだ、そしてそこには俺たちのほうを真っ直ぐに見てタバコを吹かせている男がいる。

やっぱり。
やっぱり、生きていたか。
そして、この地で巡り合うのも決まっていたような気がする。
「久しぶりだな、ディータ」
  そうつぶやき、ゆっくりと広場に足を踏み入れた。

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……続劇
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2012-08-29 08:29 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

 島へ渡る連絡橋、その真下に這うパイプ。それをつたってゆけば、必ず島へたどり着くだろう。
僕はひとりでも立つ力を手にし、君にまた出逢うだろう。
何も与えられずに生まれてきた、わずかに手にしたものは奪い取られた、しかも、僕は僕らの生存さえ嘲笑った人間に飼われてたんだ。
決着をつけなくちゃならないだろう。
僕らの生まれた、故郷のために。

  指先で感触を確かめながらパイプの上を這い進む、たどるたびに埃と錆が僕を包んだ、知らない間にあたりは夜の闇に覆われていたが、光になるものはここにはなかった、遥か下、海面には静かな波にたどりついた月の明かりが消えかけたランプのように儚く明滅を繰り返していた。はやり続ける鼓動を抑えながら、ただただ、暗闇の直線を僕は進んだ。

  夜が明ける。
  一夜をかけて、僕はようやく対岸に着いていた。フェンスはちょうど、ひと一人がくぐり抜けられる程度に格子が切り取られていた、恐らく、僕と同じやり方で入島したものがいるんだろう。
  切断され先端の尖った網に背中を擦られ、周囲の気配を嗅ぎながら、ついに僕は立ち上がった、
全身の埃を払い、汚れの酷いジャケットは脱ぎ捨てた。物陰を見つけ、僕はサンシャイン・アンダーグラウンドの様子を眺めた。

  故郷。
  僕とガゼルが出逢い、生き延びた場所。けれど不思議に感慨はなかった。その風景はあまりに思い出の地とはかけ離れていたからだ。もちろん、細部を見れば、かつてのサンシャイン・アンダーグラウンドの名残りはうかがえる、だが、島の何処からでも見上げることができた鉄塔はやはりなく、そして、あいつと……ガゼルと並んだ、廃車を積み重ねた高台も見当たらない。
  そして、ガゼルが指揮し、その果てに崩されたクーデター、あの虐殺の広場はその歴史を覆い隠そうとするように、コンクリートで硬く塗られ、さらにその表面を鋼鉄で張った建造物が太陽光を遮断していた。

  見る限り、アンダーグラウンドは新たに再生していた。ネイビーの軍服が火器を担ぎ闊歩している、島に生きると思われる人々の足取りは確かで、食うに困るような貧困がのさばった、かつてのスラムではない。だが、やはり、煙と埃が混じった風が鳴り、国籍を判別できない人種が目につく。
  やはり、法の下に庇護された地ではないのだ。

  島の中央、噴水が飛沫をあげる公園に足を運んだ、平和を意味し、僕らが存在したことをなかったことにするつもりか、鳩をかたどった彫刻までが広場を取り囲む。
  なにを眺めるでもなく、僕はただ、石のベンチに深く沈みこんでいた。意味の無意味を思うでもなかった。
  僕はただ、過去を懐かしむために来たわけじゃない。

  空腹と解けた緊張のせいか、いつの間にか眠りについていたらしかった。
  夢だろうか、あるいは幻かもしれない。

  千切れて落ちながら瞬間だけ激しく光を放つ、噴きあげては消えてゆく水の向こうに、並んで歩くふたりの姿が見えた。
  身を隠すでもなく堂々と中央を歩いている。
細長いシルエットだ、背の高いひとりはわざとらしい金髪で、もうひとりはまだ幼さを残してる、ちょうど、このアンダーグラウンドに生きたころの僕みたいだ。
  くわえタバコで、きっと口笛を鳴らしてるだろう、好戦的でどこか不敵な笑みさえ浮かべ、合わせた両手の拳の節を鳴らしながら歩いてる。

  ガゼル、と僕はつぶやく。その自らの声に目を覚ます。再び落ちてゆく太陽、一日が燃え落ちてゆく。
  その肩を、対向する誰かにぶつけながら男は歩き続けてる、きっと「へへへ」なんて不貞腐れた笑顔を浮かべ、人差し指で鼻の下を擦ってる。
  その姿は輪郭を伴って、ゆっくりと近づいてくる。
  夢でも幻でもない、それは、ガゼルだった。


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……続劇
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2012-08-29 08:24 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

「あんた、そんなところで何やってるんだ?」
  振り返った俺の視線の先、波間から顔を出した岩の上に人の姿を確認できた。
波を打ち、砕けた水が光を乱反射させていた、眩しさに眉をしかめる、声の主は細長い両手を広げ、頼りない足場を楽しんでいるようにさえ見えた。

  俺はその姿を凝視した、細長いシルエット、全身を黒で包んではいるが、声やその肢体の印象から攻撃性をまるで感じなかった、島の人間ではないと判断するには充分だった、そして、その青年には敵意もない。
  ディータを、あるいはディータにしてみれば俺になるのかもしれない、どちらにしてもその無防備さはアンダーグラウンドに生きたころの俺たちを思い起こさせた。もう戻ることのできない少年期ってものなんだろう。センチメンタルだと分かっていて、それでも、俺は「ただ、生きることが全てだった」時代から離れられずいる。

「さあな、じゃあ、お前は何をやってるんだ?」
  少年はそれに応えず、海面から出た岩を踏み場にしながら駆けるようにやって来た。下半身、それも膝から下の筋力とバネ、並大抵のものではない。純粋なニホン人ではないだろう、何気のない動作のひとつだけでも、人種の差は必ず露になる。被服に覆われた下に蠢動する筋肉は隠すことができない。
  島に入りたいんだろう、息ひとつ切らせず彼はそう言った、まだ少年の声だった。同類だ、俺は瞬時にそれが分かった。
  同じ種類の人間の匂いがする、それは俺が世界中の貧民を見てきたからかもしれない、彼から感じるのはどうしようもなく同類であると云うことだ、国籍や人種ではない、アンダーグラウンドに生きた人々、そしてディータ。遺伝子に組み込まれたように色濃い孤独が華奢な肉体から悲しくなるほどに漂っている。

「目的は知らないし聞かないけどさ、とりあえずはあんたもこの島に用事があるわけだ、そうゆうことで間違いないだろ?」
  ああ、短くそう伝える。
「じゃあ、夜になるまでここにいよう、昼間は監視が強いしさ、面倒ごとは少ないほうがいい」
「サンシャイン・アンダーグラウンドは以前とは……お前が知っているかどうか分からないけど……いったい、どうなってるんだ?」
  俺と少年は長く垂れた防風林の葉の下に身を寄せた、互いに身を寄せ、タバコに火をつけ合う。
彼がくわえたそれは見たことのない銘柄だった、いわゆる闇タバコだろう、かつて、サンシャイン・アンダーグラウンドでもそんなものを製造している連中がいた、味も香も申し分ない、だが、それを口にするのは階級制が定着した欧州圏の貴族たちと、彼らと契約を持つギャングたちだ。

「このシマは……ああ、縄張りって意味のシマだけど。たぶん、あんたが思うものとはまるで違うものだと思うよ、俺は……いや、俺たちはさ、ニホンに生まれたんだ、純粋種のニホン人じゃないけどね、けども、やられっ放しってのは我慢できねえからさ」
「負け戦であっても、やるとやらないじゃ違うもんな」
  そうだね、そのとおりだ、少年は満足そうに下を向いたまま笑った。

「俺はジタン、とりあえずその名で通ってる、本名なんて知らないよ、だから、それが俺の名前だ」
 そうか、お前も同じか。俺は……、
「ガゼルだろ、あのサンシャイン・アンダーグラウンドの暴動の首謀者のガゼル。やっぱり、生きてたんだな」
  そうだ、俺は答えた。 ジタン、もう一人生きてるんだ、所在は分からないし連絡もついていない、でもな、俺の友人もやはりアンダーグラウンドに向かっている。
  ディータ、お前も島へ向かってるんだろう、俺たちはまた、あの地で再会するんだ。

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the sunshine underground / after life

  内臓までを吐き出してしまうほどの拒絶反応、心臓は激しく鳴り続け、全身の痙攣は止まなかった、僕はどうにか抑えようと深く深く息を吸い込む、身体じゅうの血液が沸騰しているみたいだった、その熱は右手に集まり、冷えた外皮を溶かしてしまうような気がした。
  解放しろ、その言葉が僕を動かした、ガゼルの声に聞こえた気がした、でも、彼はここにはいない。
  僕はぼくの意思によって、人を殺したんだ。
  解放、それは、僕の影のように付きまとう男を殺害する以外になかっただろうか。突然にその生を閉ざされた男の顔がフラッシュのように何度も浮かぶ。割れたサングラスから覗いた眼は開いたままだった。
  あの顔を忘れることはできないだろう、僕は震えの止まらない膝で、どうにか立ち上がった。

 もう後戻りはできないんだ。
  過ぎた時間はすでに過去として記憶のなかにしか生きられない。影を撃ち殺した僕は、それを背負って、血肉として前を向く以外にない。
  耳を済ませる。
  波飛沫が、海鳥の羽ばたきが、そしてサイレンが聞こえる。雑然としながら、懐かしくもある。
  ガゼル。僕はお前みたいに強くはなれない。いつも君がそばにいた、僕は君といることで自由で何もかもを超越できるような錯覚のなかにいた。

  島へ渡る連絡橋、その真下に這うパイプ。それをつたってゆけば、必ず島へたどり着くだろう。
僕はひとりでも立つ力を手にし、君にまた出逢うだろう。
何も与えられずに生まれてきた、わずかに手にしたものは奪い取られた、しかも、僕は僕らの生存さえ嘲笑った人間に飼われてたんだ。
  決着をつけなくちゃならないだろう。
  僕らの生まれた、故郷のために。


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……続劇
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the sunshine underground / after life

  ハーバーを抜けると風景は刷新されていた、見る限り島の周囲はぐるり一周を高い鉄網が囲み、何重にも張られた有刺鉄線が外部のものの侵入を阻んでいる。網目から島内の様子を伺う、そしてその風景は、俺たちがかつて生きたサンシャイン・アンダーグラウンドとは別の世界にしか見えなかった。

  面影がないわけじゃない、一見であれば荒廃は変わらないし、雑然とではあるが、かつてにように工業地帯があり、そしてまばらながら行き交う人の姿も確認できる。
  何が違うかと言えば……その場所に存在する人々の歩みに確かな目的が感じられるところだろう。いま、このサンシャイン・アンダーグラウンドに生きる人々はかつての俺たちとは違う、なんらかの意思を持ってここに集まったと云うことなんだろう。
  濃いネイビーの制服がライフルを手に徘徊している、島にいる者を監視しているのか、侵入者を警戒しているのかまでは分からない、どちらの任務も兼任しているのかもしれない。

  空を突くほどの高い煙突から灰色が流れる、それは鉛を溶かしたような雲に混ざり、陽を塗りつぶし、切れ間から黄金が鋭く地に刺さる。その光のなかに、跳ねるように踊る子供の姿はない。

  ディータと別れてしまってから、俺は世界を転々としながら、時々、この小さな島を思った。
何処にいても、そこにいる自分に違和ばかりを感じてたんだ。居場所を探す旅だったと言えば感傷的に過ぎるだろう、それでも、自分に与えられた場所がないと云うのは、わけもなく酷い焦燥に駆られる。
  サンシャイン・アンダーグラウンド。そして、それを有するニホンという国家が破綻し、経済的、軍事的超大国の統治下に置かれたという話は聞いた。結果としては、それがアンダーグラウンドではなく、本国内に数えられないほどのスラムをつくり、外資の流入も手伝って、無国籍国家の様相を呈しているらしいことも。

 そのとき、ニホンに生まれ育った人々は、なんの抵抗もなくあきらめたのだろうか。

「あんた、そんなところで何やってるんだ?」
  振り返った俺の視線の先、波間から顔を出した岩の上に人の姿を確認できた。
  波を打ち、砕けた水が光を乱反射させていた、眩しさに眉をしかめる、声の主は細長い両手を広げ、頼りない足場を楽しんでいるようにさえ見えた。



……続劇
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The sunshine underground -after life


 落ちたはずの橋は新たに架けられて、格子で完全に封鎖されていた。堅牢なロックで施錠され、周囲は鉄線が張られ、誰の立ち入りも拒んでいる。
 なら、なぜ、島に繋がる経路が必要なんだ?
 あたりにひと気はない、なのに、海上には漁船に見せかけた武装船がいくつか浮かんでる。
 僕がいま、ここにいること。
逐一、その行動は連絡されてもいるだろう。アンダーグラウンドは、僕らの故郷は、新たに蠢いている。遠目にもそれは分かる。

 おい、僕は背後に付きまとう黒ずくめの男に声をかける。もちろん返事はない。堂々と姿をさらしながら、それでも、存在のないものとして振る舞う、だけど、あのサングラスの下の目は獲物を狙う爬虫類さながら、僕を睨めつけている。
「あんたらのボスに伝えておいてくれないかな? 今夜のエサはいらないって」
 ジャケットから携帯電話を握り、影に向かって投げつけた、同時にそいつは懐に手をやる、僕は正面から突き進んだ、
単なる人形じゃなかったか、言葉にならない声、悲鳴と咆哮のふたつを喉から放ち、意思を持つ影に堅く握った右をぶつけにかかった、だが、捨身の攻撃は身を反らされかすりもせず、僕はつんのめりながら前方にあった植え込みに突き刺さる、その僕の後頭部に硬質な感触が当てられる。
指じゃない、ピストルだ。

「そうはいかない、今日もいつもの時間にエサを与える、そう決まっている」
 まるで抑揚のない声だった、落ち着きとは違う、あらかじめ決められた音声をパターンに応じて発声しているだけのようだった。
「なるべく無傷で帰らせたい。幼稚な抵抗はやめてもらいたい」
「大人しくしろ、と?」
「そうだ、飼われているのは、お前も、そして私も、同じだ」
 わかったよ、僕はそう言って両手を広げた、突きつけられていたピストルから力が抜ける。
いまだ、僕は身を返し、影の手首を握った、そして引鉄にかかったままの指を抑えこむよう、渾身の力で男の手を握りしめた。

乾いて冷たい音だった。
 男はすでに絶命していた。
指が震えていた、膝から下の感覚が麻痺したようにただ、その場に立ち尽くす。
僕は、人を死なせた。離れなければ、逃げなければ、脳は体にそう指令を発しているのに、全身が鎖に縛られたように身動きできない。

 なにやってんだ、逃げろ。

 誰かの叫びが、聞こえた。いや、聞こえたんじゃない、それは内側から、僕の胸の奥……心臓から突き上げるような力。血液が逆流する。
……ガゼル?
そんなはずはない、ヤツはここにはいない。

解放しろ、解放するんだ。

 解放、その言葉が血液をめぐり、全身を駆け抜けた。ふいに熱が蘇るのを感じた、膨大な熱、マグマになる。それが鎖を溶かし、そして胃のなかに残るものすべてを容赦なく吐き出した、排水口になったように、体じゅうの中身を外へ出し尽くす、呼吸さえ困難になるほど、溜まり続けた何かが溢れた。



……続劇
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2012-08-29 08:13 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground -after life-

  波は穏やかに光をたたえていた。
  ハーバーは部分的に改修がなされていた、以前の、俺が知るアンダーグラウンドには、クルーザーやヨットを停泊させるような港はなかった。閉鎖された造船ドッグがあり、建造半ばに放置された生き場のない船が何隻も悲鳴をあげながらひしめき合い、亡霊のようにたゆたっていただけだった。

  汚濁の海は変わらない。相変わらずの悪臭になぜか安堵さえ感じる。垂れたオイル、泡になって、半球をいくつも打際につくり、そのなかに爛れた虹が浮かんでいた。そのいくつもが重なり、ひとつの大きな半球になり、緩慢な速度で割れる。波紋は広がらず収縮して隅に泥として溜まってゆく。 何度もそれを繰り返す、それをしばらく眺めていた。
  思えば、そんな風景ばかりを見てきた気がする。
  美しい風景はどこにでもある。だが、それは瞬時に汚されてしまう宿命を併せ持つ。美は恒久的なものではなく、感じる一瞬にしかないと、俺はよく知っている。

  水平の向こうからいまだにサイレンと銃声が風に乗せられてくる。あの水夫の名前はなんだっけな、よく聞く種類の名前だった、アジアの後進国のどこか、そのあたりのギャングあがりなんだろう。いくつもの国から、いまだ経済大国のような勘違いをした情報力のないチンピラがこの国に流入していると聞いた。

  表層だけを捉えればそう見えるのも仕方ないのかもしれない。制度として機能しているわけではなく、厳密にはまだ民主主義を保ってはいる。だが、そんなものは俺がアンダーグラウンドにいたころから崩壊していたはずだ。
 やつらはやつらで、幻想を追いかけてるんだ。

  俺はなるべく姿勢を低くしたまま、ジャケットに忍ばせたナイフの柄を握って島内に向かう。
気配を感じる、この島は、生きている。
  周囲を伺う、張り巡らされた有刺鉄線はそう古いものではない、南の岸壁にはテトラポットまである、あの日、すべてが焼き払われたはずなのに、葉をつけはじめた背の低い緑も視界にある。
  そして、俺たちが睨み続けた鉄塔こそないが、何かが……そう、何かが煙を吐いている。鉛に似た色の、決して空には馴染まない人工的な呼吸がある。
  俺たちはない誰かの手が、この島に及んでいる。

  なあ、ディータ。
わけも分からないまま、俺たちはたったひとつの故郷を追われたんだ。黙ったままにはいかないだろう?
無駄に世界中を放浪してたわけじゃない、俺は俺なりに、ここへ戻るための準備はしていたんだ、お前とまた、ひと騒ぎを起こすため、それだけのためにな。

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……続劇
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2012-08-29 08:09 | カテゴリ:tsu after life
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The sunshine underground -after life-2

  いま、お前はどこにいるんだ、音量を最小限に絞っているにも関わらず、鼓膜に食い込むような、耳触りな声。そして、その声は僕を咎めているようだった。
 電話の相手は……言うなれば僕の飼い主だ。主人の機嫌を損なうと僕は食べることさえままならない存在なんだ。

  相手の感情、気配と云うものは素早く察知しなければならないらしい。真っ直ぐに気分を言葉にするのはこの国においてはあまり喜ばれないことだと知った。誰に教わったわけでもない、ただ、アンダーグラウンドを離れ、それを保有していたニホンと云う国に暮らすようになって気づいた。

「別に……ただ、少し外の風に当たりたくなっただけです」
  噛みつくように所在を聞き続ける電話相手に、僕はそれだけ言って切り、携帯電話の電源をオフにした。

  被験者A。
  それがいまの僕のもう一つの名だ。軍は本国に乗り込んだ僕の身柄を拘束し、騒動が収束したあとは「抗体を持つ世代」として、ある機関で検体として、ありとあらゆる手段で僕を調べあげた。
  あの特殊な環境下で生まれ育った人間は恰好の研究対象だったわけだ。

  動物園ってものがあるんだ、ガゼル。野生動物を鉄の檻に封じて見世物にしてるわけなんだけど、捕食動物であることを忘れてしまってるんだ、外敵もいないそのなかに生きるのはどんな気分なんだろう。
  僕はそのなかにいる動物たちを観ながら、自分自身の姿に重ね合わせたことがある。
いっそ牙など持たずに生まれてくれば、そんなふうに思ったりするんだろうか。
それとも安住の地を与えられて、その幸運に身を委ねているだけだろうか。
分からない。
分かりたいとも思わない。

  かなりの制限こそあるものの、すでに僕は研究対象ではなくなって、少しだけの自由を手にすることができた。
  お払い箱ってことだろう、だけど、僕は、闇にされた歴史の生き証人だ、檻から解放されても、首輪は外されていない。

  生き延びるためには、選ぶ方法がなかったんだ。
  あの海を望む高台から、遠く霞む島を見ている。その僕を見ている者がいる。皮肉なものだ。見放されて生まれた子供だったのに、大人になったいま、何処に行くにも監視されてる。

  なあ、ガゼル。
僕はまたあの時のように、再び牙を剥くことができるだろうか。
もう一度、島に目を凝らす。眉をしかめ睨んだところで、あの鉄塔は見えやしない。
僕は……あのころを捨て、忘れたふりをして生きなきゃならないんだろうか……。



……続劇
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2012-08-29 08:06 | カテゴリ:tsu after life
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The sunshine underground -after life-2


“Is it seen? That's a patrol boat of an army!……Dangerous any more. I meet with pursuit,is it heard?"

 すでに領海に侵入した俺たちは、海軍の追跡を受けていた。制止を命令する言葉が響く。
 威嚇のつもりか、機銃の掃射も始まっていた。海面をちぎるように弾丸は放たれる、雇いの操舵手はただ無駄に焦るばかりだ、そして、この国はすでに他国の軍による警護の下にあるようだ。

  黙って走らせてろ、そう言いかけてやめた。大丈夫だ、連中は装備こそかなりのものだが、肝心の技術がない。俺たちが乗る船を狙うほどの度胸もない。

“It's a surface of the water that a tribe aims. I don't take on"

 当たる気がまったくしない、領海線から追い出したいだけだろう、国籍も分からないたった一隻を相手にする経験なんて彼らの取扱説明書には載っていない。
  デッキに出てタバコに火を点ける。後方から迫る軍の船に中指を立ててやる。硝煙とともに鼻をつく臭い。
  どの海を巡っても、それぞれににおいは違う。
  もちろん、俺は嬌声に溢れたリゾートののどかな海のにおいは知らない。誰のものでもないはずの、海図に記されただけの、いくら目を凝らしても見ることのできない線。そんな線上に漂う血や熱や、……そう、俺や奴が信じなかった、だが、ヒトよりも信用された金ってやつのにおい。

  遠くに島の影が揺れて見える。
  あの鉄塔はない、だけど、俺たちを眺めるように、あるいは嘲笑い見下ろすように屹立した姿を、俺はよく憶えてる。記憶や思い出のようにあたたかくはない、傷ついた背骨のように存在だけが続いてる。
  幻影、みたいなものなんだと思う。

  虐殺のあと……国外に追放された、ゆく場所なんてなかった、行きたい場所もなかった。
でも俺の呼吸は続いていた、脈動も終わらなかった。俺は俺の幻影を追うように旅に身を投じ、そのなかで何度も同じ夢を見た。
そして帰ることを決めたんだ。

“A harbor ……is to seen,there and…… would you like?”

 スピーカーから破れて聞こえる、その声と俺の乗る小船に肉迫する巡視艇からの警告音、波を削るために乱射される機銃、すべてが激突して弾けていた。

「それでいい、それで充分だ」
“What?”

  思わず口をついて出たのは、懐かしい言葉だった。どこを旅しても、この言語だけは他では聞かない。
オーケー、親指を操舵室に向けて怒鳴った、そしてしつこく食い下がる狗に向けて叫んだ。

“My name by which a soldier will stop you and tag...is a GAZELLE!! ......I won't have a mind to meet you anymore!!”

  そして笑顔で手を振った、がたつき始めたエンジンが廃棄されたままの船の合間を擦りながら抜けてゆく。
 生きているんだろう、ディータ。
 俺は、ガゼルだ。



……続劇
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2012-08-29 08:03 | カテゴリ:tsu after life
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The sunshine underground -after life-

  かつて僕らは無力な少年だった。
  あらかじめ失われた環境で生まれ、誰の庇護さえ受けもできず、這うように、あるいはただ日々を生き抜く、そのためだけに生きていたんだ。
  そこは楽園なんかじゃなかった。どのような形容を用いたにしても、そこに暮らす人々には慈悲も慈愛も与えられず、同時に手にするほどの余力はなかった。 命がある限りは生き続ける、他に選択肢があるとすれば、きっと、緩慢なる死を待つだけ。

  それが僕らの生まれた故郷、サンシャイン・アンダーグラウンドと云う場所だった。
  僕たちは……そう、僕たちは用意された世界に生きることなんてできなかった。やがては消されゆく運命の場所、陽のあたらない地下とまで称された荒廃の地。廃棄を待つだけの人工島。

  あの日。
  僕らは……そう、同じ境遇に育ち、育て親であった男を殺めてまでも叛逆を示し続けたたった一人の友人、ガゼルはアンダーグラウンドから姿を消した、彼が率いたゲリラたちの多くは上陸した軍によって射殺され、あるいは拘束され、この地から離れることになった。
  戦後のニホンと云う国において最大の虐殺だったはずだが、それは隠蔽され、誰が語るわけでもない隠された歴史になっている。

  いま、再び僕はあの地に向かうことにした。
何年が過ぎただろう、もうサンシャイン・アンダーグラウンドは地図上にもない。
それを知るものもそう多くはないだろう。
  生きているか、ガゼル。
僕は生きている。ディータと云う、君に呼ばれた名を捨ててまで、どうにか生きてきた。
もうあの頃のような無力な子供ではない、でも、変わらないものもある。ヒトってものは過去から解放されはしないんだ。そして、忘れるべきでないものがあの地にある、それが分かる。

  年月を経て、風雨に曝された「KEEP OUT」の看板。月日を感じさせる。かつてのきみのように長く伸びた髪が海から強く吹く風に煽られる。その匂いには……血の匂いが混じってるように感じる。
  さあ、始めようか。
僕らの物語は、まだ終わってなんていないんだ。


……続劇



※今年1月~2月にかけて投稿した「the sunshine underground」の続編になります。

ついでにアメ限にしていた「the sunshine underground」の最終話は限定を解除してあります。
興味のある方はどーぞ。
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2012-08-29 07:59 | カテゴリ:poetrical punk 00B
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ずいぶん長い手紙を読んだ、少し迷ってぼくはそれを紙飛行機に、
ねえ、ほら、風に流されて、
どこまだって飛んでゆく、

それはまるで優しい歌だ、綴られた言葉のように、
過ぎた日々を笑えるように、また冷たい風が吹く、

光を胸に抱き続け、走り続けた夏の日々、
くだらねえ、それが口癖だったよな、
いまはまるで別の景色のなかで呼吸をしてる、

ずいぶん長い手紙を書いた、だけど切手は貼らないままで、
そいつをまた紙飛行機に、好きなように飛べばいいって、
あの約束の橋のうえから、

それはまるで優しい歌だ、綴られた言葉のように、
過ぎた日々を笑えるように、また冷たい風が吹く、
光を握り、走り続けたあの日々よ、
いまも思うよ、最高だった、
それはいまになって思うだけかな、

四季はただ僕らを押し流し、見たくないなかへ連れてゆく、
そんなことの繰り返しさ、

四季はまだ生きていて、
探すものを忘れたふりはできやしないや、
流れに沿えず刺さる傷は増えてくけれど、

流す血さえも笑い合えたあの日のことを、
いまは笑えないでいる、僕らはずっとこの世界に翻弄されて、

だけどほら見ろ、光は天から与えられるだけじゃない、
僕らはその光を自ら放つ力を手にしてる、

じゃあまたいつか、
あの約束の場所、その日を待つよ、
じゃあまたいつか、
あの約束の場所、その日を待つよ、



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2012-08-28 08:18 | カテゴリ:未分類
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名前はいらない、それは記号みたいに響く、
自分を名乗るも忘れそう、だから口を閉ざしてよう、
名前を忘れた、だからもう振り向かない、
そこらに咲いてる汚れたまんまの花と同じで、

あの娘の名前、それを決めたのころのこと、
その名になるまで彼女は別の記号で呼ばれてたんだ、
「なんでもいい」ってふて腐れ、なのに名前を欲しがった、

絶海の孤島にて、小さな入江に迷い込む、
白い腹見せ呼吸する、シャチはもう幾許もなく、
海鳥たちはケンカをしてて、くちばし、シャチを狙ってる、

その姿を見に行くから、ねえ、それまで生きててよ、死にかけのシャチ、助けてはやれないけれど、
名前がないから呼べやしないと彼女は言って、じゃあ、新しい名前を欲しいとせがむ、
“ありふれたのでもいいでしょう?”

名前をつけて、何度も何度も僕を呼ぶ、
それはまるで秘密の呪文、僕を開く魔法のカギで、暖かくってくすぐったい、

僕は生まれて初めて名前をもらう、
ありふれた魔法でも、それで僕はよみがえる、

僕はあの娘にふたりだけの名前をもらう。
ありふれた魔法でも、それで僕は生きられる、


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2012-08-28 08:12 | カテゴリ:未分類
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咲き誇らずも枯れるもない、ミドリに紛れて眠ってる、
彼女は褪せて鳴りもせず、沈黙だけを続けてた、
歌った日々は古い昔か、触れた爪を憶えてる、
美しい時代を過ぎて、鳴き声零れるときを待つ、

ピアノは孤独な森のなか、追われて生きる動物たちの、
悲鳴に耳を澄ましてる、焼けて倒れた樹々の最期や、
咲けずに落ちる花びらの、鳴らない声を忘れずに、
雨が降れば彼女は背骨を高くして、
子供たちをせめて静かに眠らせる、

萌ゆる森がいつか呼吸を取り戻す、その日になるまで声はなく、
目を閉じ魔法に満ちたころ思う、
吹きつける風に耐え、柔らかミドリが生き返る、
過去も未来も声にして、ピアノは静かに眠ったふりで、
彼女はピアノ、凍てる森にて春を待つ、


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☆自薦集

100年ピアノ

15の森

■outside gallerys -serendipity-


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2012-08-25 20:48 | カテゴリ:未分類
photo:01





赤紫のボーリングシャツを着た男、細長いシルエット、
固めたポマード、リーゼントはグレープフルーツの匂いがしてる、
ブーツの爪先、キズだらけ、

夜を生きる意気地無し、あてもなく徘徊してる、
生焼けのハンバーガーをアルコールで流し込む、
路地裏に迷い込んだら酔いは醒めない、

名前はないんだ、あったけれど捨ててしまった、
優しい思い出も、蔑まれた記憶さえ、
なにもかもに火を放った、

孤独を装うのが好きで、誰より淋しい男、
左の肘の上あたり、慈悲を浮かべる誰かの入れ墨、
気づけばいつも撫でていた、

父親は逃げた敗残兵、母親には会ったことがない、
ブラインド・レモンを真似る、退屈そうなギターを奏でる、
恋人ももういない、

ゴミを漁る野良猫や、宿代を欲しがる娼婦、
ガードレールを蹴飛ばす貧民、偽の銀を路上に広げるポニーテイル、
カラスがつつくゴミの山、道端に咲いて枯れないままの花、

花はひかりに見えたけど、男はそれを蹴飛ばした、
この街が嫌いで、だけど、どこにも行けない男、

蹴り飛ばして千切れた花のは光だ、それだけは覚えてる、
飛び散る花びら、色は光だ、それだけは覚えてる、


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photo:02


祈り火と過ぎる夏

祈り火と過ぎる夏 8
祈り火と過ぎる夏 9

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photo:03



〝joe〟
月と背骨と足元と
high time
砂漠に雨が降る
ルフトハンザの孤独


performed by billy.
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2012-08-25 16:29 | カテゴリ:未分類
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 八月最後の週末ですな。皆さん、夏バテなどしていませんでしょうか? 僕はどーにか生きていますが、この記事を書いている最中に二度も保存ができていないという憂き目に遭い、相当に疲れますた。

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8/25のバックリンク

旅のゆくさき
ペンギン星人の本音。

〝rusty blue〟

花を蹴り飛ばした
∞ジョニーの夏は旅に迷って。

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 さて、今週のビリーブログに登場した新しい画風について。なかなかに問い合わせが多く、いちいち説明するのが面倒……いや、もったいぶるつもりもないので、簡単に説明しましょうかね。
……と、思ったのですが、iPhoneから記事投稿ができないので、それはまた次回にします。
また不具合かよー……。

 ほいじゃ。

performed by billy.

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photo:01

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 夕刻にもなれば秋が漂い始める、落日は日々早くなり、日中はまだ暑くも夕風の茜色に伴い、夏はその終わりを様々な角度から知らしめつつある。
 男たちの旅も終盤に差し掛かっていた、武者修行のドサ周り、ジョニー率いるパンクロックバンド「 ザ・シガレッツ、2012夏のツアー」は幾多の困難と波乱を刻みながら、あとわずか数カ所を残すのみである。

 バンを運転するヒラサワくんのケータイが鳴った、助手席でタバコを吹かす天野くんがそれを受ける、着信はマネージャーのまどか嬢だった。
「うわ、まどかさんじゃん……ジョニー、代わってくれよ、こぇぇんだよ、あのコ……」
 後部席のジョニーは地図を拡げていた、ナビなどあるはずもない彼らの旅は地図が必須である。
「ん、いいよ」
 ジョニーは拡げていた地図を天野くんに渡す、代わりにケータイを受けた。
「あ、もしもしジョニーだけども」
「あんたに電話した覚えはないんだけど!」
 いきなりご立腹の様子である。
「ヒラサワくんは運転してるし天野くんはまどかさんがニガテなんだって」
 ジョニー、余計なこと言うな、振り向いた天野くんは人差し指を重ねてバツ印を示す。
「まあいいわ、あんたたち、いまはどのあたり? もうそろそろ△□市じゃないの?」
「んー。それがさ、よく分かんないんだよね」
「地図見なさいよ、現地についたら合流するから」
「合流?」
「様子見ってところよ」
「え、用済み⁈」
 ジョニーは思わず聞き返した、その仰天してしまう言葉にヒラサワくんは急ブレーキをかけてしまい、天野くんは額をフロントガラスに激しく打ちつける、コーヒーはこぼれ、積み重ねたスポーツ紙が崩れ、ジョニーがヒラサワくんと天野くんの間に突っ込む。
「用済みじゃなく様子見‼ 次のライブ会場には私も行くから‼ で、いまはどこなの⁈」
 ジョニーは座席下に落ちた地図に目をやる、そして開いていたページにある言葉を伝えた。
「いてて……いまは……ええと……も、もすくわ?」
「……は?」
 ヒラサワくん、天野くん、そして電話の向こうのまどかさん、三人の声が揃う。……もすくわ?
「あ、これ、日本地図じゃなかった、俺、世界地図を見てたんだね……。変な地名ばっかだなーって思ってたんだ」
 迷うわけだった、ジョニーにナビゲーターはできそうにないらしかった。



〈ロックンロールはつづいてく〉

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イケメン・ジョニーはスーパースター⁈ (おまとめ篇。)

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☆ジョニーとペンギン、接近遭遇

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祈り火と過ぎる夏
祈り火と過ぎる夏 <最終話>

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performed by billy.




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2012-08-23 09:06 | カテゴリ:未分類


赤紫のボーリングシャツを着た男、細長いシルエット、
固めたポマード、リーゼントはグレープフルーツの匂いがしてる、
ブーツの爪先、キズだらけ、

夜を生きる意気地無し、あてもなく徘徊してる、
生焼けのハンバーガーをアルコールで流し込む、
路地裏に迷い込んだら酔いは醒めない、

名前はないんだ、あったけれど捨ててしまった、
優しい思い出も、蔑まれた記憶さえ、
なにもかもに火を放った、

孤独を装うのが好きで、誰より淋しい男、
左の肘の上あたり、慈悲を浮かべる誰かの入れ墨、
気づけばいつも撫でていた、

父親は逃げた敗残兵、母親には会ったことがない、
ブラインド・レモンを真似る、退屈そうなギターを奏でる、
恋人ももういない、

ゴミを漁る野良猫や、宿代を欲しがる娼婦、
ガードレールを蹴飛ばす貧民、偽の銀を路上に広げるポニーテイル、
カラスがつつくゴミの山、道端に咲いて枯れないままの花、

花はひかりに見えたけど、男はそれを蹴飛ばした、
この街が嫌いで、だけど、どこにも行けない男、

蹴り飛ばして千切れた花のは光だ、それだけは覚えてる、
飛び散る花びら、色は光だ、それだけは覚えてる、
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2012-08-23 07:44 | カテゴリ:未分類
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架空の地図は落書きだらけ、あちらこちらに宝の印、
心臓だけを喰いちぎれた、もう咲けないブーゲンビリア、
ミドリと赤いを混じらせた、花びら宙にこぼれてた、
捨てられないまま忍ばせた、手紙はスペルを間違えている、

彼はこの世界にはいない、
夏の喧騒過ぎたころ、月が見渡す夜の海に消えてしまった、
良くも悪くもなかったと、うそぶく舌は細くて長い、

出航間近の帆船は、
羽根を一枚、ツバメにもらう、
美しく凪ぐ水平、ひとりは口笛、月の砂漠を、
聴き飽きた昔話を瞼から遠ざけた、
再び港を離れるころに、咲き忘れた一輪は、
孤独を握る手にはない、優し過ぎた思いはもう、
ここから先には要らないらしい、
銃声が聞こえてる、届くのは煙のニオイ、

航路はここから先にまた、広がり続けてゆくらしい、
ツバメは黄金くわえてる、そいつの速度が羅針盤、
自由が幻だとすれば、旅立つこともないだろう、
南から突き抜ける、蒼い風に頬を打たれて、
架空の地図には失われた国だらけ、
いま手にするのは航路を綴る白いキャンバス、
それくらい、
それくらい、
ツバメの羽根とそれくらい、


━━━━━━━━━━━━━━━

photo:02



祈り火と過ぎる夏
祈り火と過ぎる夏 5
祈り火と過ぎる夏 6

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photo:03



LINK IN THE PARK

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performed by billy.


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2012-08-22 08:45 | カテゴリ:未分類
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--101227_195008.jpg


背中をたたく嘆きの風はどこを彷徨う弱虫か、
水晶はまだ見つからず、途方にさえも暮れてみる、
凪ぎ海、東へ泡立つ青を眺めた、

旅路の果てに眺める先は、またも終わらぬ新たな風を、
水平から髪をなびかせ、

〝少し疲れた?〟

波は声でつぶやいた、華奢な光と優しさを抱き、
手を降りながら際立つ白を降らせてる、

〝強がるなんてやめにしたんだ、少し疲れた、
でもまだ見果てぬ海が待つのなら、羽根を休めた鳥がまた、
陽を求めてゆくように、僕もやはりそうするんだ〟

嵐が待つならそれもいい、修羅が待つもスリルにできる、
まだ果ては遠くとも、凪ぎ青なんて不毛に過ぎず、

東の方角、神を起こしに、新たな海がそこに待つなら、
その波に抱かれてみるよ、それしかないや、そうするよ、

この航海がまた、孤独を際立たせるにせよ、
穏やかなる日々に生きるは早いらしい、
それしかないや、そうするよ、
何を見渡す、すべてが青の世界はそこに、
赤は赤とて淫らなる日々、返り血すらも愛おしい、

生々しくいまこの瞬間を生きてやる、
生々しくもこの瞬間だけを生きてやる、

performed by billy.
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2012-08-22 08:29 | カテゴリ:未分類
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110914_121601.jpg


砂漠に雨が降っていた、極める苛烈に削られて、
不毛に過ぎる日々を追憶、浮上できぬ精霊たちは、
その定めを反転させよと血さえ飲み込む、

大いなる、慈愛は誰が何処で享受する?
与えられぬもまた寄る辺すらなく、続くは酔い夢、
たどりし金と銀の夜、柔らなる雨が流れた、

旅に生きしは、あらゆる枷から放たれど、森に帰る星を眺めた、
夜明けを待つ勇み足たち、ろくでなくもまた続く、

優しく降るは流星の、十字を描き滑りゆく、
尾が漂わせた光の金貨、盗賊たちは砂の上、手の平には溶けた砂、

激しく鳴るは惑星の、生まれては燃え尽きる、
影に沿うは自身の記憶、夜の惑う星たちも、やはりは雨を待つだろうか、



graphic and text by Billy.
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2012-08-22 08:23 | カテゴリ:未分類

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渇いた喉と土埃、花さえ泣けない貧民街、
阿呆を演じる彼はいま、指笛だけで鳥を呼ぶ、
昨日は何も食べなかった、汚れた残りが胃を巡る、
いっそ吐けば楽だろうに、一滴さえも無駄にはせぬと、

笑い声を聞きたい男、命さえも冗談にして、
削りに削りて束の間を、集う者には餓鬼ぶる幼稚を演じてられる、

それを見る、君は彼を笑ってやりな、
それを見る、君は笑う以外に術をもたない、
この世のなにに価値を問う? 溢れ返る笑えない冗談と、

罪を認めぬ自堕落と、まぜ返して名を売る者と、
正論らしきを吐き出して、ヒトを思わぬ紛いばかりが闊歩する、

夕凪をあきらめて、朝を眺める刻を眠って、
太陽と睨み合う、いっそ焼いてくれれば良かろうに、

空を眺めていたところ、なにも変わりゃしねぇって、
薄く爛れた乳白色の野蛮な月に、
吐き出すべきが燻る体、血が赤くなければ良かった、
生も死でさえ笑い飛ばせる悪になれれば、

食べられるのを待つイヌとネコ、
渇きと飢えに苦しむのもいまのうちだけ、
それを見る、君は笑い声さえ忘れたふりを、
それを見る、僕はまぶたが開かないふりを、
瞬きながら過ぎる凪、荒れ狂う刻もいる、
なぜならヒトはケモノだろうよ、
それを忘れたケモノだろうよ、


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“juellica”
デビル・ガレージ



JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--海賊ビリー ロゴマーク.png


――――――――――――――――――
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2012-08-22 07:42 | カテゴリ:ペンギン星人物語
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 もはや単なるペットと化したペンギン星人がそこにいた、そことはつまり彼が宿主に選んだリョウタ少年の自室だが、当のリョウタは困惑するばかりである。
「もーすぐ夏休みが終わるんだけど……君はいつまで地球にいるつもりなんだい……?」

 ずっと水族館にいてくれたら良かった、それが少年の偽わざる心境であった、彼にとってペンギン星人の存在は招かれざる客に過ぎず、また、その来訪理由も分からない。
「ずーっとグウタラしてるだけじゃん、着ぐるみクン……」
「グウタラとは失敬な、君は私たちペンギン星人の真の姿を知らないだけだ」
「真の姿……? 変身するの?」
「うむ。満月を見ると大猿ならぬ大ペンギンに……」
「……ウソだろ」
「……よく分かったな。ウソだ、ペンギン星人は巨大化などしない、実は攻撃態勢になると母船に装備したレーザービームで地球をまるごと焼き尽くすことができる……ような技術は現状ではない。いずれそうなると良いのだが」
「結局、なにもできないんじゃん……」
 図星だった、ペンギン星人には特筆すべき事柄はなかった。狼狽を悟られぬよう、ペンギン星人は努めて冷静なふりをする。
「私たちは友好的な関係を築くべく地球にやってきた、私たちペンギン星人は母なる星を棄てた星間移民だ」
 地球侵略はどこへ行ったのだろう、リョウタは素直に思う。
「君と離れている間にも、金髪の青年と友好関係を築いたばかりだ、ジョニーとか言っていたな」
「外人じゃん……喋る着ぐるみが珍しかったんだね……」
 人種は無関係だ、魂の交歓があれば良いはずだ、ペンギン星人は誇らしげにそう告げた。
「よく分からないけど……僕は巻き込まれたくないんだよ……」
「……」
 いきなりの本音に言葉を失うペンギン星人だったが、姿勢は変えなかった。動揺に気づかれると快適な住居を失うことを知っていた。


<つづくんかいな……>

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ここまでのペンギン。

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祈り火と過ぎる夏

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祈り火と過ぎる夏 3
祈り火と過ぎる夏 4

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performed by billy.

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2012-08-21 08:59 | カテゴリ:未分類
photo:01






熱はまだ残ってた、温もり触れた手、
ちぎれて消えてってたんだ、残る手ハットをひっつかむ、
二度とは戻れない場所を、まぶた描いて消し去って、
投げたコインで行き先探す、生まれた街に伸びる影、

振り返らずに踏み締めた、ずいぶん汚れたブーツは赤く、
ハットと同じ色してる、カウボーイを気取ってたいね、
くすむ黒のキャデラック、エンジン鳴らして横たわる、
旅立つサインに火をつけた、

何はひとつも答えなんてなかったよ、
あきれるくらい僕は手ぶらで、あてすらなく漂流してく、
なくした左手、それを探しに行きたいわけじゃなく、
残った片手に握るものを探すだけ、

名前なんて捨ててしまった、愚痴るよりは歌っていよう、
砂風まじりのラジオが歌ったロックンロール、ちっとも懐かしくなんてない、
口笛吹いて指を鳴らした、
もうここには戻らないと振り返りもせず、またどこか歩き出す、

旅立つサインに人差し指でピストル放った、
旅立つサインに人差し指でピストル放った、


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少年たちとホラームービー
対岸にトランペット
トワイライト・ジャズ・シアター

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祈り火と過ぎる夏

photo:03



祈り火と過ぎる夏

祈り火と過ぎる夏
祈り火と過ぎる夏 2


performed by billy.


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2012-08-21 08:20 | カテゴリ:ペンギン星人物語
“JACKPOT DAYS” all performed by Billy.-夏休み ペンギン 宇宙人 画像.jpg



 地球征服をもくろみ飛来したペンギン型の宇宙人と、その世話役になってしまった少年、リョウタ。
 理屈っぽいが害らしい害もなく、ただのんびりバカンスを過ごしているようにしか見えないダメペンギンが繰り広げられないドタバタの愛憎劇……。
 ダラダラ続く夏休みの不可思議談……。



ペンギン星人の来襲。
ペンギン星人の周辺調査。
ペンギン星人との接近遭遇。
ペンギン星人の休息。
ペンギン星人の夏休み。
ペンギン星人の地球侵略。
ペンギン星人の行方。
ペンギン星人の捕獲。

ペンギン星人の本音。

 早く追い返せばいいのに……。


“JACKPOT DAYS” all performed by Billy.-海賊ビリー ロゴマーク.png
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2012-08-19 20:00 | カテゴリ:短篇小説「祈り火と過ぎる夏」
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110824_125113.jpg


祈り火と過ぎる夏<1>
祈り火と過ぎる夏<2>
祈り火と過ぎる夏<3>
祈り火と過ぎる夏<4>
祈り火と過ぎる夏<5>
祈り火と過ぎる夏<6>
祈り火と過ぎる夏<7>
祈り火と過ぎる夏<8>
祈り火と過ぎる夏<9>
祈り火と過ぎる夏<10>


 夏はもう残りも少なくなって、そのわずかな力を絞るように地上を照らしていた。
いまこの瞬間もどこかで誰が死を迎え、入れ替わるように新たな命が誕生したはずだ、それは繰り返し再生を続ける世界そのものの在り方とも言えるかもしれない。

 ミズキは東京に戻り、いまはまた元の生活を続けていた。そしてまたひとつ年齢を重ね、20代も後半を迎えた。
あの夜と明け方に見た大輪……そう、集まった人々が祈りを託したあの太陽は今日もまだあの日と同じように遥か上空で輝きを続けている。
見上げるとあまりにまばゆく、目を細めて左手で日陰をつくる。
垂れ下がった銀色のチェーンの時計は正午を指していた。

 あの日はまるで何かが始まり、何かが終わる、その両方を一度に経験したように記憶している。
 父とは会っていない。
彼には彼の新たな生活があり、すれ違った私たちはまたそれぞれにそれぞれの道を歩く、そう思うことができる。
道行く人々は相変わらずの日常を過ごしているようで、きっとそうでないんだろうとミズキは命というものを思い描く。

 昼食を終え、再び会社に戻る、次の取材先やその土地、プランを書き連ねたファイルを開こうとすると、見覚えのないメールが届いていることに気づいた、それは土地の再生を誓って奮闘する一人の青年からだった。

<元気ですか? 僕は変わらず元気です。まだまだ時間はかかるし、この先がどうなるかは分かりません。でも、この土地に生きることを選んだ者として、また新しい種をまき、少しずつ咲く花を見守り、いつかまた……いや、以前と同じには戻らないけれど……それを承知でゆっくりと歩いていきます。
また、祈り火の季節に会いましょう>

 その手紙を息もつがずに読み切ると、ミズキは大きく深呼吸して目を閉じた。
また生きる。まだ生きる。
どちらでもいい。生きることには違いない。
カメラを手にして、彼女はまた取材にゆく場所のピックアップ作業にとりかかった。
生きている限り、止まってはいられないのだ。


JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110818_181503.jpg



<終わり>



photograph,illustration and story by Billy.

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