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2012-08-12 02:10 | カテゴリ:the sunshine undergr
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110130_213153.jpg



 何かが変わろうとしている、それは力による強制的な変化だろう。
この島を善意によって救うなどとは誰も考えてなどいない。
ここは病巣なんだ、ディータはいつかそんなふうに表現したことがある。
それは俺たちではなく、外から島を見る人々にとって、だ。
 ディータはラジオに耳をそばだてている。砂嵐とともに揺れる音、指先の神経を尖らせてチューニングを繰り返す。最近は日課のようだ。
そうやって外界の情報を得る。
そのほとんどは俺たちには無関係なことだ、株価がどう、どこかの国の内紛、そして殺人事件。
欠伸をする、遠慮なんかしない。
そうか、この島以外では殺人は重罪なんだ、同じ言葉を使っていても、その感覚のずれは埋めようもない。

「なにかマシなニュースはあったか」
 ディータは無言で首を振る。そして小さくため息をつく。
 知りたいことはひとつだけだ、謎の奇病の発生源がこの島だという噂が流れてる。

 サンシャイン・アンダーグラウンドには定期視察だと称し、本国の役人たちがモスグリーンのヘリであらわれる。
連中はいつも高価そうなスーツ姿で、マスクをし、何に触れるにも手袋をしている。
病巣、そう思うんだろう。事実は俺には分からない。ここでは人の死は珍しくもなんともない、死因を調べるヤツもいない。
 生きているか死んでしまったか。
それだけだ。
俺たちの世代のなかには本国へ帰還しようと考える者も多い。
それはしかたない。だが、誰もそれを実行できない。受け入れてもらえず、しかたなく島へ戻ってくることになる。

 ディータも……いや、ディータはそんなふうに追い戻された連中とは別の手段でニホンに潜入しようとしている。
ここに生きる全ての人々の権利と生存を主張したい、そんなことを真剣に話すときがある。
 ニホンの人間としての名前を持ち、教育を受け、別の人間に生まれ変わるつもりなんだろう。
 できるかどうか、それは俺には分からないし、なぜそれを望むのかも分からない。

 一度だけ聞いてみたことはある。
「ディータ、お前は本気でニホン人になれると思ってんのか」
「できないと思う。正規の手段ではね。サンシャインアンダーグラウンドのディータではなく、まったく別の人間になりすます以外にないだろうな」
 僕らはここで生まれたんだよ、この国籍や人権さえ持てない国で。
ガゼル、ずっとここには生きていけないって分かってくれよ。
僕は自分だけ逃げてやろうなんて思っていない。
きっかけを作りたいんだ、どんな環境に生まれても、人はきっと意思さえあれば生まれ変われるんだって自分で証明したい、それだけなんだ。
 俺は黙って頷いた、その先のディータの話はよく覚えていない。
 ただ、ヤツはその理想を遂行するべく、懸命に生きている、それだけはよく分かった。

 俺とは違う。
ディータはこれから先を生き延びるために生きている、だけど俺は……俺はガゼルと言う名を捨てる気がない。
 あの鉄塔の頂から俺たちを眺める連中を引きずり落としてやりたい。
それだけだ。
それまでは死ねない。

JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110116_152146.jpg


……the sunshine underground...
“first half” the end.
to be next...
“second half”.
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2012-08-11 18:03 | カテゴリ:the sunshine undergr
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110211_003646.jpg


 ガゼルへ。
 夜は明ける。ありふれた言葉だ、だけど、それは真実だ。いま、僕はそう思う。
酷い暮らし向きだったはずなのに、それを恋しく思うのは、たぶん、君がいたからだ。
生々しく記憶は残ってる、だけど、ずいぶんな時間が経った。
あの日、鎮圧された君らの多くは射殺されてしまった。
ガゼルと言う名を探してはみたけれど、所詮は本名じゃない、所在はつかめないままだ。
 サンシャイン・アンダーグラウンドは、僕たちの故郷はまだ残っている。
あまりに多くの犠牲に立ち、また、例のウイルスの実験場にされていたことが明るみになり、再開発の計画が暗礁に乗り上げたからだ。

 汝の隣人を愛せよ。
聞き飽きるくらい聞かされた言葉だ。
君はいま、どこにいる?

 僕は元気だ。亡命者として、別の名を借りて生きている。ディータと言う名で呼ぶ者は誰もいない。だけど、僕の本当の名はディータだ、それはいまも変わらない。 
 ここに一枚の写真がある。ガゼル、いつか君に再び会えたら、あの街に生きた時間を取り戻そうって話したいんだ。


☆☆☆


 ディータ、生きてるか。
 俺はあの日、拘留された、暴動の主犯とされたけれど、そう大きな罪には問われなかった。
皮肉なことだよ、俺に国籍がなかったからだ、法的に存在しない人間を裁く法がなかったんだ。
国外退去を求められたが、俺には行くべき場所なんてなかった。受け入れてくれるような国もなかった。
それで良かった。
お前がいないのなら、生きたい場所なんてない。

 いまは世界中を放浪する日々を送っている。暮らし向きはアンダーグラウンドにいたころとたいして変わらない。
名を聞かれることはまずないけれど、聞かれたらガゼルと応える。
他に名乗る名は、ない。
 読み書きは少しだけできるようになった。ずいぶんな取り調べを受けたし、調書を読めないことには話にならなかったんだ、ただ、それだけのことだけど、おかげでこうして手紙を書ける。

 未来は見えない。
別に見たくもないし、そのときになれば分かることだ、それでいい。
アンダーグラウンドはまだ残されたままだと聞いた。戻る気にはなれないけれど、懐かしく思うときもある。

 なあ、ディータ。
夜は必ず明ける。当たり前で古びた言い方だけど、それはよく分かる。生きてさえいれば、必ずまた夜明けを見る。
 一枚の写真を同封しておくよ。
俺たちの故郷の、朝焼けの写真だ。
もしいつか再会できたら、あの鉄塔に変わるものを見つけよう。
今度こそ、その頂を目指すんだ。

JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110122_155501.jpg



all photograph and illustration and text...
by Billy.

“the sunshine underground”

the end.
2012-08-11 17:57 | カテゴリ:the sunshine undergr


「やめよう、もうやめてくれ、もう……」
 言葉を探す、次に繋がる何かを手繰る、僕らを掬いあげるための言葉、それを叫びたい。

 聞こえるか、ガゼル。
聞こえるだろう、いま、僕はある場所から声をあげている、そして、この声にほんの少しでも関心のある人は、あなたに少しの時間があるのなら、僕の言葉を聞いて欲しい。
 僕は名を持たず生まれた、国籍も持たずに生まれたんだ、食べるものもろくになかった、棄てられたバンのなかで寝起きしてきた、日常的に窃盗があり、殺人があり、そして場合によっては僕らはそれに加担せずには生き残ることができなかった……もう気づいた人もいるかもしれない、僕が生まれたのはサンシャイン・アンダーグラウンドだ、この国で言うところの棄民の島だ、そうだ、あの放棄され、現在は無法の地になり、暴徒化した民衆と軍が衝突している、あの小さな国に生まれた、いま、わけあって僕はアンダーグラウンドを離れ、それを所有する国にいる、そして……ある人の「協力」で、こんなふうに発言する機会を得た。

 もう、争うのはやめてくれ。
 生きているかガゼル、聞こえてるかガゼル、僕だ、ディータだ、君がくれた名前を捨ててまで生き延びる手段を模索した、だけど、僕にはそれができなかった、ニュースで見た、僕らの故郷はもう焦土と化している、もうアンダーグラウンドにはいられない、逃げろガゼル、逃げてくれ……。

「もういい、時間の無駄だった」
 こめかみにピストルを突き付けられたまま、唐突に発言を終了させられ、僕はマイクを奪われた。男はため息まじりに首を振った、やれやれ、そう言わんばかりの表情だった。
話すべきならいくらでもあるはずなんだ。
限られた時間と限られた言葉でも、伝えるべきはもっとあった。


☆☆☆


 ディータの声が途切れたあと、俺たちがいつか頂を目指したあの鉄塔は突然に折れて崩れた。
蓄積疲労か、銃撃のせいかは分からない。
ディータの声を乗せたスピーカーが割れた悲鳴をあげただけで、鉄塔はその根元を残しただけで崩落していた。
戦意をなくした者たちは連行されて、無謀に攻撃を仕掛けた者は躊躇なく銃撃された。
どちらにしても。
どちらにしても、俺たちは敗北したんだ。
眼前には疲弊と絶望が横たわる。
ひたすらに、渇いた。
もう、何の一滴も残ってなんていないくらいに渇ききった。

 あのとき。
俺は育ての親である神父を殺害した。なぜかと自分に問う。いまさらながら答を見つける。
 俺は嘘が嫌いなだけだった、それだけなんだ。
祈りさえ捧げれば神によって導かれる、そんなふうにあいつは言った。
 なあ、ディータ。
俺たちはあの鉄塔を見上げることで、あの頂に達することを思い描いた、それはたぶん、この現実から逃れたかっただけなんだよな。
それは祈りにも近い想いがあったんだろう。

 崩れた鉄塔、その頂には何もなかった。
神なんて、いない。少なくとも俺はそう思う。正しいのかどうか、そんなことは知らないし、知りようもない。
神は語るものによって姿を変える。俺たちが抱える現実を凌駕しようと、あるいは跳躍しようとすれば、必ず新たな神が牙を剥く。
いま、眼前にはライフルを構えた兵がいる。
 ディータ、俺は降伏する。重ねた罪のぶんだけ、俺は罰を受けないとならないだろう。
お前の帰るべき故郷を守れなかった。そして、逃げる気にはなれない。裁きがあるなら、それを受け入れる。


JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110116_151542.jpg


……続劇
2012-08-11 17:35 | カテゴリ:the sunshine undergr
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--101125_115120.jpg



 空が割れてるように見えたんだ。仰向けて倒れてた。乾いた口のなかは砂にまみれた、血の味がする。波打つ心臓、指先にまでつたう液。溢れる、赤。
 銃声が聞こえてる。悲鳴が重なる。また誰かが倒された。煙が風に乗る、雲に繋がる、灰色が、そう灰の色が空を覆う。
 俺たちは、あまりに無謀で無力だった。
もう終わったんだ。太刀打ちできる相手じゃなかった。連中にしたら、害虫を駆除するよりもたやすいことだったろう。

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 戦地に座り込む、俺は何人を殺しただろう。そして、俺たちの同郷は何人殺されただろう。
やめろ、もう終わりだ。
そう叫びたい、なのに声が出ない。喉が焼けてしまったのか、あるいはもう声すら出せないほどに俺は潰れちまったか。分からない。
意識が霞む。視界に入るすべてがぼんやり霞む。
額から冷たい何かが流れて、それを拭った。
土に汚れた手に、真っさらな血。

 なあ、ディータ。
俺たちも、あいつらも、この色だけは同じなんだよな。どうしてこんなやり方でしかヒトは意思をあらわせないんだろう。
もういい、やめよう。
歯向かうだけ血ばかり流れる。そして。
そして、この風景は俺が選んだものにしては、あまりに酷い結末ばかりを見せつける。
俺たちが鉄塔を眺めた、あの廃棄物の高台は焼け落ちた。
ブラックマーケットにならんだ、色のくすんだ手製のアーケードも燃え尽きた。
サンシャイン・アンダーグラウンドが焦土になってゆく。消毒液を浴びせられた「名もなき解放者」たちが捕らえられてゆく。抵抗すれば容赦なく発砲される。
 焼却され、焦土になり、消毒されて更地になる。その始終をここで眺めていなくてはならないのだろうか。
 天に向かって吠えた、無駄を分かっていて、それでもそうするしかなかったんだ、俺はかすれて痛みに裂ける喉から体に溜まり続けた何かを吐き出すように叫んでみた。
もうやめてくれ、と。

 その声はどうしてか、どこか遠くからも同時に響いた。音量に争う人々の熱が引く。銃声が、止む。瞬間、静寂が訪れる。
俺は振り返る。
あの鉄塔、その頂のスピーカーから、その声が話し始めた。
聞き覚えのある、懐かしい声。
 それは、島を離れ、俺とは別の方法で故郷を守ろうとした男の声だった。
そう、ディータだ。



……続劇
2012-08-11 17:30 | カテゴリ:the sunshine undergr
JACKPOT DAYS!! -poetrical rock n'roll and beat gallery--110206_180921.jpg



 武装した群衆は手製の華奢なナイフや精度の低いピストルを手に、取り囲む兵に突っ込んでゆく、そして無惨に蹴散らされてゆく。
火の手があがる、ボロ布を重ねて着た一人がそれに包まれ、そして膝から崩れてゆく。
その惨景がニュースで流れているのを見てる。歴然とした力の差のなか、彼らは生を賭して屈しない姿勢だけを僕に見せつける。
 堅牢なつくりの、どこか地下牢を思わせる部屋には僕ともう一人の男が対峙していた。
「僕の体を検体にすればいい、すでに感染している」そうか、と男は応える。
 とくに驚いた様子はなく、冷静を装うわけでもないようだ。
男は名前を語らなかった。君に知ってもらう必要は感じない、そう話しただけだ。

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 仮に君が感染していたとしよう、微弱であっても抗体が体内に精製されているとしよう、だが、それは何になる?
君は実験体として、我々の機関にその体を預け、結果としてその抗体さえも駆逐する新たなウイルスを我々が作る。
兵器になるものをつくる手助けでもしようと?

 男はマスクをしていない。この密室のなかで僕と相対することに一切の抵抗すらないようだ。
すでに抗ウイルス剤は完成している、直感的に僕は感じる。

 僕は真意を語り始める。
「サンシャイン・アンダーグラウンド……あなたたちが言う罪人の島への武力行使を止めて欲しい。あなたにはそれができるはずだ。僕にはそんな力はない」
 それが理由か。そうか、君はあの島に生まれた人間か。どうやってこの国にたどり着いたかは知らないが……残念ながらあの島の焼却処分は決定したことだ。
そもそもが不法に占拠した国籍さえ持たない人々だ、救済措置はとられないだろう。待避警告は出されたはずだが、誰も離れようとはしなかった。
タイムアウト、そうゆうことだ。
淡々と話し終えたあと、男はタバコを吹かせた。
タイムアウト、その言葉は僕の体を貫いて戦意を萎ませる。

 ガゼル、僕はとんだバカだった。
兵器としてのウイルス、そしてその実験場、抗体を持って生まれることを予期された三世代目、そして隠滅としてのアンダーグラウンドの焼却。
すでに決定された再開発プロジェクト。
仕組まれた運命、そうゆうことだったんだ。

「ただな……君に価値は感じないが、ニュースソースとしては面白いと思う。いくつかの……いくつかの条件を飲むのなら、ひとつだけ機会をやろう。公の場で君に一度だけ発言させてやろう」
……発言?
 僕は睨む。あきらかな差を提示し続ける、その男を刺すつもりで、話の続きをうながす。
「ニホンに侵入した、恐らくは初めての人間だ。大衆は君の存在に関心を持つだろう。公共の電波の前で、君は君の言葉で、話したいことを話すんだ」


……続劇
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