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2015-11-21 18:30 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「逃げない猫」


 野生と野良の違いなんて彼は知らない。ヒトが決めたルールの外に生きているのでカテゴライズは必要がない。

 幸福なのか不幸なのかと問われたら、おそらく彼はこんなふうに答えるだろう。
「それは食べることができるのかい?」と。
「美味しくて腹の足しになるならどちらでもいい」と。

 エスケープなんて言葉の意味を知らないまんま彼は華麗に逃避を続ける。
 彼らの生活は不自由かもしれないが、しかし、我々とは比較しようもないくらい自由だ、どこにでも行けるし、どこに行く必要もない。
 そのとき居る場所が彼らの居場所になるのだ。地球上のどこであっても、寝転べばベッドになり、食えばレストランになり、走ればスタジアムになる。

 すべてを手にしている。だが、欲しがってさえいなかった。
 ただただ生きている、それだけがすべてなのだ。
 遠くを見ているようだが、未来を想うわけではない。
 そう。彼らは予測不可能でしかない未来を想う理由もない。彼は逃げられるが逃げようとはしない。うたた寝している瞬間でさえ、エスケープは続いているのだ。









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2015-11-20 18:30 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「君の名はベルカ」


 あの日、僕はこっそり泣いてた。
 あの日も僕は見上げた背に向かって泣いていた。
 気づかれないように、欠伸までして誤魔化したんだ。

 それから僕は祈ってた。誰に何を祈ってたかは話せないけど、大好きな誰かのために祈ってた。
「君が静かに眠れますように」って。

 ひとが言葉で話すように、その言葉のひとつひとつが結ばれたり紡がれたり、ときにはもつれてしまうことがあるように、僕は夜の月を見上げ、朝にはお日様を待ちわびて、僕の大切なひとが今日もまた笑っていられますようにって、いつだって願ってるんだ。

 思わず涙をこぼしてしまうくらいに。
 今日も僕は祈ってるんだ、いま、君が微笑んでいられますように。
 明日が今日より幸福な日でありますように。













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2015-08-22 18:30 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「永遠の深淵」


 ときに私たちは漆黒の深淵を覗き、伸ばした指の先でそれに触れてみたいとさえ思う。
 しかし、そのとき、深淵はやはり深淵で私たちを見ているのだ。伸びる影が離れてはくれないように、私たちは漆黒の深みを抱え、それと並走し続ける以外にない。
 伸ばした指の先がその淵にかかっているとき、君の目には漆黒だけが映っている。

 空に突き抜けんばかりの叫びを以って生まれた私はいま、その空そのものになっている、雲を運ぶ風に乗せられ天に届いたのだ。

 たどり着くに百年近くを要したが、振り返ればまばたきほどだった、泡が弾けるくらい束の間に過ぎた。

 春に咲いた花に目を細め、夏には波飛沫に添って走った、秋には手を取り合って、冬になれば「息が白い」と隣の人が笑ってくれた。
そしてまた春を待つ。何度もそれを繰り返す。
 細やかなことだ、しかし、私ちちにはそれがすべてでもあった。

 天上に還った星々は微かでも確かに光を放っていた、私たちがやがて其処へたどり着く舟に乗る日のことを知っているのだろう、見下ろしているだけだ、声を届けることもない。ただ、そこに在るだけだ。

 私たちは漆黒を知っている。
 深淵がそこに横たわることも知っている。逃れることはできない。
 思い悩むことはない。いま、この地を踏む踵が浮き上がるときがくる日まで、私たちは永遠の深みと共に生きるほかにないのだ。
 今日もまた、その一歩に過ぎない。




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2015-07-10 18:30 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「風鈴」


 タイミングを逃して眠れないままの今朝はまぶたが重くてカーテンを開けても光が射していることを感じられなかった。
 別にそれはそれで良かった。

 昨日の夜、室内灯が灯った瞬間、窓に映った私たちの小さくささやかなシルエットとなにも載っていない空のテーブルのことを思い出す。
 去年の夏のことを話しながら、それはやがて今年の夏に繋がって、ボウルいっぱいのサラダを食べ終えたあと、ボウルの底に溜まった水に浮かぶオイルに白い電球が反射していた。
 ひとつ夜を通過するたびに私たちは美しいものと美しくなくなってしまった物事をひとつずつ数え、やがて消えてしまうであろうすべてを葬り、慈しみ、忘れていこうと、とりあえずの結論をアルコールで飲み込んで、それから伝えるべきことをなかったことにする。
 そんな日々に慣れつつもある。

 いつか私たちが見たすべては失われるという当然ながら実感のない事実。
 誰もが知っている、けれど、知っている誰かからそのことを聞くことは出来ない。
 いまはそれが「遠いいつかの事柄」として見当されることもなく、あえて話題にもしないが、それは必ず訪れるのだ。
 どんな経緯にて訪れるのか、それはわからないけれど、「やがて」は必ず訪れるのだ。

 テーブルの上のボウルをシンクに。空き缶を潰すと残っていたアルコールが溢れた。
 テーブルを静かな平原に戻すと、まだ点火されたことのないキャンドルが埋もれていた。
「暗くして点けてみよう」と彼が買ってきたのだけれど、それは火を知らぬまま季節を越えた。
 次の冬の夜にまで眠っててもらおうと思った。また忘れるかもしれないけれど。

 私は風鈴があったのを思い出した、安物のガラスできまぐれにしか鳴ってくれなかった、鈴には聞こえなくて使い古しのスプーンとフォークがぶつかるような音色だった。
 クローゼットをひっくり返すとそれは埃で薄い膜を張っていた、指の腹でそれを撫でる。

 どこにぶら下げていたのか、しばらく考えたあと、それは記憶から溢れてしまっていた、しかたなくカーテンレールに紐を通す。
 風のない弱い雨の朝、揺れる鈴は雨に紛れて、どうにかそれを聞き取ろうと私は目を閉じる。
 去年も確かに私は生きていた。涼やかではない不器用な音色でそれを知る。

 原色の花を揺らして、通りを少年少女が走る。
 太陽と海と緑の、美しい季節がすぐそこにまで近づいているのだ。




 【 了 】 





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2015-04-06 18:30 | カテゴリ:ショートショート・フィクション

「レインメーカー」


……またふたりきりだね。
その呼びかけに彼は応えない。応えることができない。しかしそのレンズには寄り添う「彼」が映り込んでいる。砂にまみれて傷つき、風雨に晒され錆が浮いてはいるが、その奥は微かに点滅している。まだ消えてはいない。

 風が、鳴る。
 彼と彼の間を抜けてゆく、ふたりの目には捉えきれないほどの小さな砂塵を混じらせた風が鳴る。
 錆びた鉄と鉄が擦れる、無人の公園の忘れ去られたブランコのように軋んで鳴る。

 そして、そばにいるもうひとりの「彼」をも風は通過する。もつれて束になってしまった背中の毛がなびく。その様子は「彼」になにかを思わせる。
……いつだったのだろう。あれは……僕が飛び立ったある晴れた日のことだ、色のことは憶えていないけれど、たくさんの旗が揺られていた、あのとき、僕は「HOPE」と呼ばれて射出口から空に向けて飛んでったんだ。
みるみる人は小さくなって、地上の誰もが空を見上げていたんだ、いまもそうなのかもしれない。人はいつも天を見てばかりいる。
 晴れには雨を、雨には晴れを。

 ふたりきりだね。彼は尾を振る。赤い鼻先が乾いていた。舌もやはり乾いて白くひび割れてしまっている。

……雨を降らせる? あと一度だけなら……。
……ううん、もういいよ。君が動けなくなっちゃう。それに……
……うん。渇きを癒すだけだけど。
……ここにいてよ。もう飛ばなくて、いい。
……でも……。

 錆びた鉄の腕を伸ばす。そして友達を抱き寄せた。薄くなった皮膚に骨が浮いていた。飲むことも食うこともなく、かなりの日数が経過していることがわかる。酷く衰弱していた。

 行こう、ふたりで。
 鋼鉄の人は誘う、大空への最後の旅に誘う。友達は答えなかった。目を閉じ眠っているように見えた。
 そう思おうとしていたんだ。
 
 ふたりきりになった友達と友達は高く天へと風になる。
 砂の時間が終わる。永久に。

 鋼鉄でできた彼はレインメーカー。雨を降らせる機械だ。
 彼に運命を託したヒトはすでに絶えた。雨雲をつくるための銀は皮肉にもヒトには毒だった。水を得たがそれ以外を失ったのだ。
 生まれたときの彼は希望だったが後に災厄となり、明暗はやはり合わせ鏡であった。どちらの意味においても「神」になったのだ。

 その日の夜。
 地表はすべてを流すほどの雨になった、その後は何も残さないとばかりに降った、最期の雨だった。










【 了 】  




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