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2013-04-18 12:10 | カテゴリ:3minute rockin novel
〝JACKPOT DAYS〟-image


「嗤う悪党」


 逃げるが勝ちってやつなんだ、それが信条ということにしてる、なぜならヒトは自分からは逃げられやしないが、それ以外のすべてから逃げることができるからさ。

 いいかい、よく聞きな、脚ってのは追うためと逃げるためにあるもんなんだ。

 初めての仕事は生まれ故郷の鉱山だった、足枷で繋がれた奴隷たちが自分のものにもならないダイヤのために休みすらなく働かされていた、たぶん、労働の原点にあるのは奴隷制度ってことだろう。

 ガラスを代わりに置いてきてやった、背後からライフルと地を跳ねる弾が叫び声みたいに聞こえたよ、でも影を撃っても痛みなんてありゃしない、俺は風よりも速く走れるような気分だった、いや、あの瞬間、風そのものになれると知った、時間は跳躍できるんだ。

 宝石に美術品、歴史的埋蔵物……なんだって良かった、手にした瞬間、俺はまた疾風になる、懐に忍ばせたナイフを使えばカマイタチにだってなる。

 なにもかもを手に入れた、だけどたいしたものは何もなかった、ダイヤだろうが金塊だろうが、手にすると無駄に重いし、だいたい俺はそんなものに価値を認めない。単なる石ころと変わらない。

 だが、そんなものでも売り飛ばすとカネになる、盗品故買者と手を組んだ、そしてこの世界の何もかもを手に入れた。

 残念なのは何もかもを手にしたつもりで、欲しいものが最初からなかったことだった、きっと擦り切れちまったんだろう。

 走る理由を失くしてしまってからと言うもの、日毎、俺の影は濃くなってゆく。夜の暗がりでさえ消えることがない。
 悪党は夜に嗤う、それは影が消えてしまっている気分になるからなんだ。
 今夜もきっと、悪党はその影と一緒に制度となかのヒトってヤツを嗤ってる。

 野生に戻る瞬間にだけ、神の座をその目に捉えることができる。
 たぶん、それは影を欺いているからだろう。
「逃げろ、運命論者をあざ嗤え」。



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「latest stars」


アクアリウムの夢
ジャックナイフとストリッパー 〝side jackknife〟
ジャックナイフとストリッパー 〝side stripper〟
月夜のベルリン、鐘が鳴る
左利きのテディ


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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)



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あの人への想いに綴るうた

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2013-03-07 22:57 | カテゴリ:3minute rockin novel
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「トムとジェリー」



「おー、すごいね、金持ちのリゾートみたい……貴族が夏にくるみたいな……」
「ここは常夏の島なんだ。そして今日からここが俺たちのウチだ……悪くないだろ?」
「うん、悪くない……いや、どうやって手に入れたのよ、こんなの……」
「ちょいとカネを借りたんだよ、銀行から」

……返せはしないが。寄越せとは言わなかった、こいつの命が惜しいならあるだけ貸せ、そう告げた。

「あんたにそんな大金貸してくれるわけないじゃん……まさか……銀行強盗……?」
「や、命と引き換えなら貸してくれることもあるんだよ……」

……俺の命じゃムリだけどな……。

「え? 後半聞こえなかった?」
「新しい名前を考えないとなって言ったんだ。逃亡者だとバレたら面倒だ」
「名前……かぁ……」
「呼び合う名前がないと不便だ」
「んー……。そうなんだけどね。私、以前はなんて名前だったんだろう……?」

……思い出さなくていい。思い出したところでロクなことはない。

「じゃあ、あんたトム」
「トム?」
「そう、トム。私はジェリー。子供のころ見なかった? 賢いネズミを追い回すドジなネコのアニメ」
「懐かしいな……トムとジェリーか」

……追い回しゃしないし、ドジ踏んだらアウトだ、ここでじっとしていてくれ、ジェリー……。

「それでいい?」
「ああ。じゃあ、そろそろ休んだほうがいい。長旅だった、まだ頭痛は治ってないんだろう?」
「うん……でも、ここにいたら何もかも忘れてしまいそう……」
「それがいい」

 自分が人質だなんて知らないほうがいい、忘れているほうがいい。
 思い出してしまったそのとき、楽園を天国にしなくてはならなくなる。

……ハロー。聞こえる? コードネーム・ジェリー。経度と緯度は分かるわね? 24時間後に突入して。それまでに犯行グループのアジトを探っておくから。

 ジェリーは歯に埋め込んでいたメモリーを抜き出し、男のパソコンの電源を入れた。

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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)



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あの人への想いに綴るうた

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2013-03-04 22:17 | カテゴリ:3minute rockin novel
きゃりーぱみゅぱみゅ イラスト アメブロ 画像

「風の追憶」



 風が吹く、それが流れてゆくのを見てる、遥か古代からやって来て、遠く見果てぬ未来へと続く。
 風は途切れることがない、高みから地を撫でて、曲線を描いて中空へ、歩む人の頬を撫で、そしてまた空高く舞い上がる。
 万物の声を聞き、この世界のすべてを記憶しながら未来へと運んでゆく。

 吹きはじめた瞬間からそんなふうに走り続けてきた、これからもずっとそう。
 私は目を閉じ耳を済ませて、風たちが通った軌跡を感じる、繊細に編み上げられた繊維のように、人類の誕生以前から大地に根をしがみ、太陽の近くまで葉という手を伸ばす大樹のような、その経路。迷路のような、経路。

 やがて風は訪れてさえいない未来を見せてくれる。
 どのような光景が広がるのか、人々は私にそれを訊ねる。

「聞かないほうがいい。それを知りたければ生きて未来へと自分を導いてゆくのがいいと思う」
 私はそう答える。

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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
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あの人への想いに綴るうた

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2013-02-26 22:50 | カテゴリ:3minute rockin novel
〝ジェニファー・ローレンス 画像 アメブロ

宝石泥棒の朝

 月と陽が入れ替わる真新しい時間帯に彼女は湖のそばにある、誰の気配もないモーテルで目を覚ます。白鳥たちが水に跳ねてはしゃぐ姿を、割れた窓から眺めてる。
 凍りついてた銀色も目覚めるように水になりゆく。グラスのなかのそれを一口だけ飲み、昨晩運び入れたキャリーバッグに目をやった。
 無造作に倒されたそれは角が綻び、革もキズにまみれている。

 着替えた彼女はダイヤモンドのように白い息を吐きながら、キャリーバッグを引きずって湖のほとりまで歩いていった、氷柱を下げた樹々と爪先が割る薄氷、世界中が銀色に染まって見える。
 トランクは彼女が盗んで手に入れた宝石で埋め尽くされている、彼女はこの世のすべての宝石を手に入れるつもりでいる。
 ありとあらゆる色が輝く、はしゃいでいる子供みたいだ、彼女は思う。

 一粒ずつをつまんで手のひらに乗せ、そして湖に差し入れる。
 赤も青も黄色も、どの色も水に溶けてゆくように、湖底へと沈んでゆく。

 貧富や肩書きの問題じゃないの、誰にも似合ってなんてない。ましてや集めて見せびらかすためにあるわけでもない。
 水へと還る2秒の短い間だけ、石はほんとに輝くことができるって、知っているのは私だけ。
 湖近くの採掘場で捨てられていたのが彼女だった。
 二十数年ほど前のことだ。
 
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サブリナ・ムーン
stars
地平をめぐる冒険

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流星 ツアー 表紙 画像

あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)



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あの人への想いに綴るうた


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2013-02-17 20:16 | カテゴリ:3minute rockin novel
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深海の人魚

 ずいぶん変わってしまったのね……彼女は海面から地上を見ていた、かつては彼女もそこに生きたことがある。深海には何年くらいいたのだろう……考えても分からなかった。
 そしてそれを理解したところで、いまになれば何の意味もなさないような、そんな気がした。
 遠ざかり過ぎた記憶は、彼女から地上の景色を奪い去っている。

 地上にはヒトの姿が見当たらない、どうにか枯れずに生きていたはずの小さな白い花びらが蒼に溶けずに漂っている。
「星……?」
 彼女は空を見上げる。星はあれほど輝くのだろうか。それぞれがそれぞれに意思を持ち、発熱さえもしているようだ。
 星たちは一定間隔で移動さえもしているように見えた、白く黄色く、ときに真っ赤な光も放つ。
 耳を澄ませば、星々が周期的に啼いていた。

 彼女が地上に生きたのは400年も前になる。
 ヒトは夜の空に船を浮かべた、そしてそこを新たに生きる場所とした。世代を超えれば星が再生すると考えたのだ。治癒に賭けて空に旅立ったまま帰れなくなったヒトビト。
 もうひとつの手段として、原初の海に生命を還元するという方法も考えられた。

 彼女はヒトとは違う進化を遂げた、宇宙ではなく深海に生きる種として人工的に産み出された生命。
 尾びれには<2015.04.08>の識別コードが記されていた。
「還ろう」
 彼女は再び深海へと溶けてゆく。

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オペラの犬の朝
砂時計の街のデューイ
境界線上の蟻

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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)


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あの人への想いに綴るうた



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