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2012-12-25 07:31 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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時計じかけのオーケストラ

 バースディ・タウンに今年もクリスマスの日がやってきました。
 時計台の下につくられた小さな街、バースディ・タウンは今年も変わらず刻々と時間を知らせてきました。そして今日はロッソやルッカ、街に暮らす人々にとっても楽しみなクリスマス・イヴの日です。
 この街には小さな小さなオーケストラがいます。
 朝、お昼、夜……。

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 たった三人の楽団は毎日毎日、時計台の下の街に暮らす人々のために時間を知らせるために演奏してきました。
 雨の日も風の日も、そして、今日のような雪の日も……。

「吹雪だ……寒い……寒い……凍りついてしまうよ……」
 寒さが苦手な太鼓の彼は言いました。
「うるさいなー、君は……。寒い寒いと言っても……あたたかくなるわけじゃないんだから……」
 オーケストラのリーダーで、いちばん年長の彼が言いました。

 たった三人だけのオーケストラは雪のクリスマスの日にも、いつもと同じ音楽を演奏していました。
「今日くらい、いつもと別の音楽をやりたいな……」
 金髪の彼が言いました。
 いくら音楽が好きでも、同じ曲ばかり演奏していると退屈してしまうのです。
「だけど……僕らはそんなたくさんの曲をやれないよ……」
 そうです。彼らは仕掛け時計の人形たちです。好きな音楽をやることはできません。

「だけど……僕らだって生きてるんだから……」
 きっと好きな音楽が、鳴らしたい音楽を演奏できると思ったのです。
「やりたいことができるはずなんだ」
 そう言って初めての音楽を鳴らし始めました。演奏したことのない音楽でした。

 時計じかけの小さな小さなオーケストラは「ジングルベル」を鳴らしていました。
 バースディ・タウンにクリスマスが響きます。そして時計台の下をゆく人々もその音楽に耳を傾けていました。
 人が作った時計じかけのオーケストラには、バースディ・タウンに生きる時計の精たちは、人の想いが生きています。
 たった三人の生真面目なオーケストラは、雪の聖夜に歌い続けました。
「心があれば人形だってヒトより強く生きられるんだ! 心がなければヒトだって人形になっちゃうんだぞ?」
 降り続く雪のなか、金髪の彼は叫びました。

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〝merry x'mas〟


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2012-12-19 08:44 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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“手袋、マフラー、鮮やかなネオンの夜の、
街は喧騒、祝いの言葉、行き交う人はどこか急いで誰かの待つ場所へゆく”

「ねえ、ママ」
「なぁに?」
「聞こえる?」
「ええ、久しぶりね」
「シュクフクのカネ、だよね」
「そう。私たちヒトが命を刻み続ける時間を祝福する鐘……久しぶりね」

“祝福はこの街の、時計がいつも鳴らしてくれる、
富む者にも貧しきものも、老いも若きも命は命と差をつけず”

「時計、直ったんだね」
「しばらく動いてなかったものね」
「誰が直してくれたの?」
「誰かしら……きっと、時計の精じゃないかしら」
「それ、誰?」
「仕掛け時計なのよ、あの大時計は」
「シカケトケイ?」
「そう、仕掛け時計。ずっと昔……あなたやママやパパが生まれるよりずっと前にね、あの時計は造られたの。この街に住むヒトがずっと幸せでいられますようにって」
「……ふうん」
「だから、あの時計の下についている鐘のね、その下には小人さんたちが住んでいるのよ」
「小人さんが時計を直してくれたのかな」
「きっとそうよ。時計の下には小さな国があって、その国はバースデイ・タウンって言われているの、命の誕生を祝うために造られた、小さな小さな国……そこには小人さんたちが住んでいて、街をずっと見守ってくれているの」

“幸せって言葉は誰も、ありふれたもののよう、
選ぶ価値には違いがあって、それはヒトを狂わせもして”

「僕のことも?」
「もちろんよ。あなたのこともそれからこの世界に生きてるヒトや動物や花、命のあるもの全て」
「ねぇ……いつか、小人さんたちに会えるかな?」
「どうかしら……ママも会ったことはないの。だけど、いつか会えるかもしれないわね」
「ほんとに?」
「いい子にしてたら、きっとね」
「楽しみだなぁ……」
「さぁ、帰りましょう。雪が降ってきたわ」
「今年は初めてだね」
「きっと、時計の国の小人さんたちがクリスマスを祝って降らせてくれたのよ」
「うん。いつか時計の国に行ってみたいな、僕」
「時計の妖精に会えたらいいわね」

“真実だとか噂とか、そんなのほんとはどうでもいい、
夢と幻その二つ、自由に描くくらい誰もが持って”

「時計の妖精さんたちは……普段、何をしているの?」
「私たちと変わらないわよ。ゴハンを食べて、歌ったり絵を描いたり……恋をしたり、人に優しくしたり……当たり前のことを当たり前にしてるしかないの。……分かるかな?」
「うん。ママはいつもそう言うから……ママ?」
「なぁに?」
「お腹減っちゃった。帰ろうよ」
「そうね。帰りましょうか」

“僕らは生きる、この命がある限り、
意味の有無などそんなのどうでもいいって思わない?”

ネジを巻いたらまた明日、今日くらいはいつもより、
少しだけは優しい人に、優しい人になってみよう、
君が住む街、そこが変わらず君の居場所である限り……。


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時計じかけのジュヴナイル


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illustration,text,photograph by Billy.

thank you.
merry X'mas.
2012-12-19 08:42 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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目覚めると僕は突き出したレンガの縁の上にいた。
しがみついていたはずの長針からは手を離して落下してしまったみたいで、遥か上に時計が見えた。
僕は生きて動いてる、秒針が回転する音、その瞬間を刻む音が上空から吹きつける風に乗せられて届いてきた。

あのとき……そう、僕が長針にしがみついて止まってしまった時間を動かそうとした瞬間……突然、動いた針の振動で僕は落っこちてしまったんだ。たった一分の時間の経過だけで、あんなに大きく揺さぶられるなんて考えてなかった。
「……雪?」
周囲を見渡すと白く光る結晶が舞っていた。手のひらでそれを受け止めてみる、みるみるその結晶は僕の体温に溶けてゆく、小さな星があたたかな水に変わってゆく。

それは雪じゃなく、時計の文字盤や針を停止させていた氷の破片だった、再び動き始めた時間が氷を小さな粉にして、僕やずっと下に眺めるバースデイ・タウンに粉雪を降らせていた。
帰ろう。
僕はそう思う、ルッカの待つ僕のふるさとへ。彼女と育った大切な街、バースデイ・タウンへ。
時計は時間を刻んでる、バースデイ・タウンもきっと動いてる。
ルッカが僕を待っている。


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「おかえり」
バースデイ・タウンで僕を待っていたのは、少し大人びた笑顔のルッカだった。
髪型のせいかな、そう思ったけど、よく分からない。
「ただいま」
ずいぶん久しぶりみたいに思った。笑顔の彼女、生きて動いている彼女。
「ね、見て」
ルッカは言う。指差したのは、もう高く遠すぎて微かに輪郭がつかめる程度の、あの時計。
「ロッソ、君がさ、時間を取り戻してくれたんだよ。だからバースデイ・タウンはまた動きはじめたの」
時計じかけの街、バースデイ・タウン。
粉雪は溶けて小さな雨になり、ささやかに降り続けていて、街の外にはアーチがかかっていた。
虹だった。

虹を見つめながら、僕はそっとルッカの手を握る。柔らかくて温かい手。生まれて初めて、つなぎ合わされた手。何も言葉はなかったけれど、気持ちもつながったように彼女の手にも少しだけ力が入る。

また僕たちは時間を刻んで生きてゆくんだろう。
街にまた夜がくる。
明日の朝、またいつものような優しい時間が来るとは限らないけれど、それでもいい。
時間が止まってしまったら、また動かせばいい。
優しい夜がすべての人を包んでくれたらいい。
いま、僕はそう思った。


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時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>
時計じかけのジュヴナイル <7>
時計じかけのジュヴナイル <8>
時計じかけのジュヴナイル <9>
時計じかけのジュヴナイル <10>

時計塔のある街で

「時計じかけのジュヴナイル <クリスマス編 おわり>」


all illustration and story by Billy.
2012-12-18 08:00 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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時計は止まってたんだ、秒針だけが震えながら前後していたけれど、長針と短針は凍りついて時間は止まってしまっていたんだ。
へり背をつけて、あごを引いて真下に目をやるとバースデイ・タウンが小さな庭みたいに見えて、そしてそのさらに下にはバースデイ・タウンを巨大にした街が見えた。

時計塔の下には巨人が住んでいる、それは噂なんかじゃなかった、そこにはアタマにネジのない巨人たちが西へ東へ行き来していた。
ときどき、僕のほうを見上げる巨人がいる。
違う。
僕を見ているんじゃない、時計を見ているんだ。
時計が止まってしまっても生きて動くことのできる人がいる。
じゃあ、僕らは、バースデイ・タウンって一体なんなんだろう……。

「そんなことはどうでもいいんだ、僕は凍ってしまった時計をなんとかしないと……」
口にしてはみたものの、どうすればいいのか分からない。
でも迷ってる時間なんてないんだ、僕は助走をつけて走り出し、全身をバネにするつもりで跳び上がった。
届かない。
落ちる……。
弧を描いて落下してしまう自分の姿が脳裏をよぎった、そのときだった、振り切れるほど伸ばした手に握っているペンダントのチェーンは長針の先、その矢印のかたちをした尖端に引っかかって、僕は宙に吊られていた。
手繰りよせるように、這い上がるように手を伸ばし、僕はその巨大な長針にしがみつく、手が痺れるくらい冷たかった、表面に氷が張った文字盤に体が触れ、あまりの寒さに僕は気が遠くなりそうだった。

どうせ、いずれ止まってしまうんだったら、無茶をしたってかまわない。
僕は体を振り子のように左右に揺さぶって、どうにかもう一度、時間を再開させようともがいていた。
ずっとずっと見ていたい笑顔があるんだ。


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時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>
時計じかけのジュヴナイル <7>
時計じかけのジュヴナイル <8>


illustration and story by Billy.


<つづく>

2012-12-18 07:59 | カテゴリ:時計じかけのジュヴナイル
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走り出す、僕は見たこともない高く遠くそびえる塔に向かって走り出していた、止まった時間を取り戻すために。
僕らが住むバースデイ・タウンは鐘が鳴らない限り、そして時計が動き続けない限りは動かないってルッカが言った、僕は彼女に渡されたペンダントを握りしめ、ひたすら塔を目指して走る。
本当のところ、僕にはよく分からない、それでもいいって僕は思う、たかがしれた僕の力ではルッカのネジを巻き続けることなんて出来やしない、だからといって、僕はこの世界が、この街が、大切なガールフレンドが沈黙してしまったバースデイ・タウンなんて要らない。

「ロッソ、あなたは盗賊になるんでしょう? じゃあ、失われてしまった、塞がれてしまった時間を取り戻してきてよ」

ルッカはそう言ったんだ、それだけなんだ、僕がこの世界にいる理由ってやつがあるんなら、それは大切な人がいる世界をあきらめたりはしない、それだけなんだ。

誰もがたどろうともしなかった巨大な時計へと続く階段がある、あまりに冷たい風が四方から吹きつけて飛ばされてしまいそうになる、僕はルッカに手渡されたペンダントを握りしめ、這うように階段を登ってゆく。
凍りついて止まった時計のネジをもう一度、巻き直すんだ。

円状の時計塔に巻きつくように螺旋を描く階段を駆け上がる。
塔を形作るレンガは積み重ねられたそのひとつひとつが異常に大きい、僕の背丈くらいはあるかもしれない。まるで小人になってしまったような気がした。
それに対して階段は僕の歩幅に合わせているかのように……いや、バースデイ・タウンの住民に、と言うほうが正しいのかもしれない、とにかく、そのサイズの比率は不自然だった。
塔をつくったものと階段をつくったものはそれぞれ違うような気がした。」
どちらでもいい。誰がなんのために造ったのか、誰のために造られたのか。なんだっていい。僕は無心を心がけ、僕自身がネジを巻いているかのように階段を登ってゆく。
やがてその先にはきりきりと耳障りな音を立てて、表面が青く光る時計の文字盤が見えてきた。


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時計じかけのジュヴナイル <1>
時計じかけのジュヴナイル <2>
時計じかけのジュヴナイル <3>
時計じかけのジュヴナイル <4>
時計じかけのジュヴナイル <5>
時計じかけのジュヴナイル <6>
時計じかけのジュヴナイル <7>

illustration and story by Billy.


<つづく>
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