-------- --:-- | カテゴリ:スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

〝JACKPOT DAYS〟-image


〝JACKPOT DAYS〟-image



 売り上げは芳しくなかった、ジョニー率いるパンク・バンド『ザ・シガレッツ』のレコ発記念ライヴのチケットの売り上げである。
 300人を動員できるインディーにしては大きいハコだ、このままでは半数も入らないことになる。
「やべぇ……」
 まどかさんは思う、借金完済どころかこのままでは活動を続けるだけで赤字がふくらんでしまう。

「『リハが終了次第、事務所に出向くように』だってさ」
 ヒラサワくんはメール内容をジョニーと天野くんに伝えた。
 その一言に怯えた視線を浮かべる天野くん、そして「ほゎ~い」と気の抜けた応答をするジョニー。彼はギターを鳴らしてはいたが、なぜか寝転んだままである、どうも今日は起き上がる気がないらしい。
「なにされるか分からない、ヘルメットでも用意しようか……」

「あんたら、この状況は分かってる?!」
 すでに攻撃態勢にあるまどかさん、指を鳴らしていた。
「上京って……?」
「東京だよね、ここ……?」
「……だよなぁ」
「もっと……もっと上京ってできるかな……?」
「意味が分からないよ、ジョニー……」
 男たちは不思議そうに顔を見合わせた。彼らは防御のつもりだろうか、思い思いにヘルメットをかぶっていた、『安全第一』のヒラサワくん、『学』の一文字が眩しい天野くん、そして、『阪神タイガース』の左打者用をかぶったジョニー。すでに臨戦態勢ではあるが、その姿はマヌケでしかない。

「来週なのよ、レコ発ライヴは!! 売れてないの、チケットが!! どーすんのよ、あんたたち?!」
 状況と上京を勘違いしているメンバーと激昂する美人マネージャー、変わらずの光景だがまどかさんは彼らのボケに付き合う気はなかった、今後のバンドの活動そのものに多大な影響を与えかねない事態なのだ。
「じゃあ……チケットを売ろう……。ほら、前に言ってたマーケティングで……」
「そうか、夜のスーパーを練り歩いて……」
「見かけた電柱でおしっこも……?」
「いや、それは……それはムリだけども……」
「……ちょ……ジョニー、天野くん……」
 盛り上がる男たちの眼前には般若がいた、見開いた目から光線が出そうである、錯覚だろうか、背後には炎さえ漂っている。
「へ、変身……?!」
「ラスボス……?!」
「伝説の……アレか……?!」
 度重なる愚行と愚言の数々と問題意識の低さ。学習能力のなさ。
 まどかさんの怒りは人外の領域にまで達していた。並の人間なら気魄だけで灰塵と化すだろう。
 ジョニーの動物性、野性はそれを察知する。
「……ま、まどかさん、俺たち頑張るよっ! 一生懸命、パンクやる!」
「その前に……」
 魔人として降臨したまどかさんが放つ。
「客が来ねぇっつってんだろうがぁーっ!」
 言霊が銃弾になる、そしてそれが容赦も躊躇もなく散弾された、狭い室内を反射し、四方八方から男たちを撃ち抜いてゆく、ジョニーらは成す術もなく撃沈された。三者一様に後方へ転倒し、市場に並ぶサカナのような姿をさらしている。
「……ま……まどかさんがステージに立つほうが……メイド服かなんかで……」
 焼き尽くされた感のある天野くんは朦朧としながら知恵を絞った。ヒラサワくんはどうにかそれに応える。
「逢えるアイドル……か」
「冥土……? それは……ちょっとどうかな……。まどかさん、めちゃめちゃ元気だし……」
 ジョニーはメイドと冥土を勘違いしていた。
「冥土行く? あんた」
「うーん。それはまだ早いかな……」
 ジョニーは死なない。そしてロックンロールが火蓋を切る。


<ロックンロールはつづいてゆく……ジョニーらはレコ発ライヴへと……>
 
━━━━━━━━━━━━━━━

〝JACKPOT DAYS〟-image



⇒前回までのジョニーさんと愉快な仲間たち。

〝JACKPOT DAYS〟-image

スポンサーサイト
“Go,Johnny Go!!”

“JACKPOT DAYS” all performed by Billy.-ジョニー スーパースター.jpg



 無軌道なのか本能か、天才なのかバカなのか?!
 ひたすら我が道を生きる男、ジョニー(本名・助 新)のおマヌケ青春ストーリー!!

 彼はどこへ向かうのか。
そしてその果てに何をつかむのか。

※とりあえず、ここまでのおまとめです。


∞イケメン・ジョニーはスーパースター。
∞イケメン・ジョニーは働かない。
∞ジョニーもようやく何かに気づく。
∞イケメン・ジョニーはやっぱり、頑張るあなたを応援しない。
∞ジョニーは今日も相変わらずで。
∞イケメン・ジョニーは食べることに精一杯で。
∞イケメン・ジョニーに相談事は向いてない。
∞イケメン・ジョニーは秋晴れの天気が良い昼下がりに昼寝くらいしかすることがない。
∞イケメン・ジョニーも働かざるを得ないらしくて。
∞お久しぶりのイケメン・ジョニー。
∞イケメン・ジョニーはパンクロッカー?
∞イケメン・ジョニーがパンクに挑む。
∞イケメン・ジョニーがパンクに吠える!!
∞イケメン・ジョニーよ、どこにいる?!
∞イケメン・ジョニーも変化の季節?
∞イケメン・ジョニーがライヴに挑む?!
∞イケメン・ジョニーがパンクに吠える!!
∞イケメン・ジョニーがギターを鳴らす!!
∞ジョニーと春とイェー・イェー。
∞イケメン・ジョニーのバンドの名前は……THE CIGARETTES!!
∞イケメン・ジョニーも黄金週間むかえるようで。
∞イケメン・ジョニーのライヴが決まる!!
∞ジョニー・バンドは余計なことに全力疾走。
∞ジョニー・バンドがステージへ!!
∞イケメン・ジョニーがロックンロールで世界を変える!!
∞イケメン・ジョニーが攻撃される?!
∞ジョニー・バンドに新風が吹く!!
∞ジョニーと七夕、願い事は何にする?
∞ジョニー・バンドが契約へゆく!!
∞ジョニー・バンドが途方に暮れる。
∞ジョニー・バンドは旅の途中。
ジョニー一座は流星岬で。
∞ジョニーの夏は旅に迷って。
∞ジョニーと晩夏のブギーとウギー。
∞ジョニーは思い出なんていらないらしい。
∞ジョニーは何かを待っている。
∞ジョニーを目覚めさせる方法。
∞ジョニーのジャケ写は証明写真?
∞あしたのジョニー
∞ジョニー・バンドの販促会議。

∞ジョニー・バンド、秋の攻防。

次回は……未定。
そのうちやります♪




[番外編]
∞イケメン・ジョニー [番外編] 子供のころのジョニーくん。




“JACKPOT DAYS” all performed by Billy.-海賊ビリー ロゴマーク.png


〝JACKPOT DAYS〟-image


〝JACKPOT DAYS〟-image


クラクション・アディクター
作詞/ジョニー
作曲/THE CIGARETTES


眠ってるのか死んじまったか、枯れて果ててしまったか、
酷い疲弊に嗤っているのは天の神、
飼われているのに落ち着かない、
飼われているのを忘れてる、
野犬3匹、スピンをかけてエンジン鳴らす、

クラクションを撃ち鳴らす、その音まるでマシンガン、
クラクションを撃ちまくる、ボーダーラインが弾け飛ぶ、

黄金に染めた髪、種類なんてない男、
やたら粗暴に振舞うあの娘、
黒い髪のリーゼント、ポマードから火薬の匂い、
水陸両用モヒカンパンク、最高速で走ってみたい、

クラクションとノイズの嵐、真正面だか過去の影だか、
クラクションの中毒者たち、タバコをくわえて苦笑い、
野犬たちが旅に出る、冬の煙の匂いを探す、

クラクション・アディクターが、
クラクション・アディクターが、
クラクションがスピンして、
クラクションが荒野を走る、


〝JACKPOT DAYS〟-image



━━━━━━━━━━━━━━━

〝DUSTSTARS GEAR PUNK〟


━━━━━━━━━━━━━━━

〝JACKPOT DAYS〟-image

〝JACKPOT DAYS〟-image


〝JACKPOT DAYS〟-image


〝JACKPOT DAYS〟-image



 CDのリリースが決定したところで、彼らはその発売記念ライヴを開催することが決まっていた、いわゆる『レコ発ライヴ』である。
 その先にはオリジナル・アルバムを携えた、まどかさん命名によるところの『借金完済一発当ててこいツアー』なる、夏に続いての地方周りがスケジュールされているのだが、まずは彼らのバンド名を冠するライヴの決行と成功が課題であった。

「まず、どうやってお客を呼ぶのか。そこが肝心よ」
 まどかさんは鼻息も荒くそう口にした。片眉をひそめ、口角を吊り上げている、挑戦的な口調だった。
「それは……マネージャーの仕事なんじゃ……?」
 おずおずと反論したのは天野くんだったが、その声はあまりに小さくか細い。彼の意見は間違いではなかったが、正論が通用する相手でもなく、どう考えても劣勢だ。
「……文句あるの?」
 顔は向けず目だけで制する、天野くんは俯いて首を振る、ジョニーはなぜか右手と左手の両方にタバコを持っていた。
「フライヤーを配ろうか。みんなで手分けすれば……枚数はなんとかなるし」
「ヒラサワくん。それは当たり前過ぎよ、やらせるに決まってるでしょう? もっとインパクトのある方法を考えてよ。今日もバカヅラのジョニー、あんた何かないの?」
 うーん。人差し指で鼻の下をこする、仕草はサマになっているが何も考えていないだろうことはその場の誰もが気づいている。
「あ、じゃあ、シークレット・ライヴなんてどうかな……」
「無名のあんたらがシークレットやってどうするのよ……誰も観に来ないわよ……」
 やれやれとまどかさんは首を振る。
「……え、俺たちCD出すのに? まだ無名なの? そっかぁ……ロックンロール・スターになるのは……まだ少し先なんだねぇ……」
 まだ少しじゃねえよ、遥か彼方よ。そう思ったが説明が面倒なので言わなかった。
「マーケティングよ、マーケティング。音楽業界は縮小してんのよ? バンドマンも基礎知識くらいは必要よ」
 まどかさんも別に詳しいわけではなかった、ついさっき社長が言っていたことを真似てみただけだった。
「……そこらじゅうに……おしっこして回るの……? あんまり……やりたくないかな………」
「ジョニー、それはマーキングだよ……」
 咳払いをしてヒラサワくんが居住まいをただす、適当なところで制止しておかないと、またも暴力による執行で会議が終了させられてしまう。
「じゃ、じゃあ? 分かった、まどかさん、俺わかるよマーケティング?」
 天野くんだった。
「マーケティング……つまり……夜に……スーパーのなかを練り歩くという……あのマーケティング……」
「違う。昼も夜もスーパーマーケットを歩かなくていいの、そんなマーケティングは……マーケティングはもういいわ……」
 はぁ、とまどかさんはこれ見よがしなため息をつく、そう、どちらにせよ口にした彼女も知識範囲外の事柄である。単語を覚えたばかりに過ぎない。
「あんたらと話してるとアタマ痛くなる」
 吐き捨ててまどかさんは会議室を去った。

『あんたら』には俺も含まれているのかな……。含まれてるんだろうな……。マーケティング……うん、確かに知らないな……。
 ヒラサワくんも知らなかった。



<ロックンロールはマヌケなくらいで続いてゆく……>


━━━━━━━━━━━━━━━

〝JACKPOT DAYS〟-image


前回まではこちら♪


〝JACKPOT DAYS〟-image


〝JACKPOT DAYS〟-image


〝JACKPOT DAYS〟-image



「おおー…………っ」
 感嘆の声をあげた男たちは取り囲んでダンボールの中身を見つめていた、そのなかに詰め込まれているのはCDだった、彼らバンドにとって記念すべき初の音源、デビュー・ミニ・アルバムである。
「ダストスター・ギヤ・パンク」と名づけられたそのアルバムは5曲入りで1500円、初版5000枚である。

「長かったような短かったような……だな」
 根元まで吸い込んだタバコを空き缶のなかでからからと振る、満足げなため息とともにヒラサワくんはその一枚を手にとった。
 平坦な道のりではなかった、むしろ、この日が来るとも思えなかった。しかし、新人というにはいささかの年輪を感じるその手には自身がリーダーを務めるバンド、自らのベースが仲間と共鳴する音楽が封じこまれている。
 感慨深い……これ以上の言葉は思い当たらない。そして……俺たちはまだこれからなんだ……。

「ヒラサワくん……?」
 声に気づくと両側から覗き込む顔がふたつ。ジョニーと天野くん(ジャック)である。
「なに……ひとりでブツブツ……お腹痛いの?」
 悲しみの表情さえ浮かべ、ジョニーはヒラサワくんに問う。
「え……? 俺、なんか言ってた?」
「年金とか工藤ちゃんとか海外出たいとか……ずっと喋ってたよ、なあジョニー」
 怪訝に眉をしかめて天野くんが見つめている。
「…………なっ……? え、俺、喋ってた?!」
 ヒラサワくんは知らぬうちに呟いていたようだった、頬がみるみるうちに紅潮する。
「い、いや、なんでもないよ、独り言だよ?」
 数秒間を掻き消すかのように彼は手を振った、離陸しそうな高速運動だった。

「これでついにロックスターに……」
 ジョニーは笑みを浮かべた、視線は鋭く窓の外の夕陽を射抜いている。
「うん……うん……」
 天野くんも同意する、感極まってか涙を浮かべていた。
 まるで無名のインディー・バンドが一枚のアルバムでスターダムにのし上がれるはずはないのだが、彼らにそんな冷静さがあるはずもない、地上数十センチは浮き足立っている。
「や、ジョニー……水を差すようで悪いが……そんな一気にスターにはなれないから……」
 冷静さを取り繕うようにヒラサワくんが言う。
 そう、彼らはこのアルバムを携え再び旅に出ることになる、なにせ借金があるのだ、それを返済するために組まれたハードなスケジュールが待っている。
「全部売れたら……何億円とかになるのかな……」
 ジョニーは話を聞いていなかった、そして計算もできていない。全数が売れたにしても一千万にも及ばないのである。
 そしてまた彼らに旅の季節が訪れる。男たちは旅芸人なのだ。

「高く飛び上がるには助走が必要だからさ」
 ヒラサワくんは言う。それに呼応するかのように、ジョニーは事務所を飛び出し、夕に暮れゆく街を走っていった、徐々に速度をあげ、やがては音速にまで到達するだろう。


〈ロックンロールはつづく……ついでに、ジョニーさんも連載一周年。〉

━━━━━━━━━━━━━━━

〝JACKPOT DAYS〟-image



前回まではこちら

〝JACKPOT DAYS〟-image


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。