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2012-08-30 20:10 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

  誰よりも速く走ればそれでいいんだ、そう、誰よりも。
  ガゼルが言って、それを合図にディータも駆け出した、僕は慌ててふたりの後を追う、その背に羽根があるかのように、風を裂いて加速してゆく、突然の行動に僕たちを監視していた兵が一斉に発砲する、もちろんそんなのが当たるはずがない、足跡か影か、わずかな過去を狙っているみたいにさえ思う、加速する意思は感傷を剥ぎ取るように直線を滑ってゆく。

  速度、それは絶対的な瞬間だ。僕は息を切らせながらひたすら体を躍動させる、ヒトだとか動物だとか……そんな感覚さえない、海から吹く向かい風の隙間を縫うようにただ進む。銃声と怒号がまだ聞こえてる、出自のわからない様々な言語で飾られたコンテナが立ち並ぶ倉庫街を抜け、無人の港にたどり着く。
  振り返ると荒れて傷ついた地が広がる。僕はただ、『ふたりに会ってこい』と言われ、よく理由も分からないままこの島にやってきた。
  分かったこともある、かつて混沌のうちに焼き払われたこの地はいま、不本意な再生を遂げさせられようとしている。ここに生まれ、生きた人びとの意思も、そして、この島を建造した人間の思いも放棄されてしまうかたちで。

  ガゼル、ディータ。僕は話し始める。
「なぜ、オヤジがあんたたちに会ってこいって言ったのか、それが分かる気がする。トーキョーへ行こう。ボスに会って欲しい、僕がオヤジと呼んでる、ラドラムに会わせたいんだ、いや、きっと、オヤジもそのためにここへ行けって言ったんだよ」
「……ラドラム、か」
  そういうことか、ディータはタバコに火をつけた。
  ああ、嫌いか、ディータはギャングなんて嫌うのか。
「いや、嫌うとか好きだとか、そんなのじゃない。ラドラム・ファミリーは知ってる。それでお前がこのシマに来たってことだな」
  そうだ、この島は政府によって廃棄された、そして流入してきた他勢力によって、支配を受けてる。
「俺は……ガゼル、ディータ、俺はいくら腐ってもニホン人なんだ、力を貸してくれ、バクスター一家と駐留軍から祖国を取り返す。この国は、俺たちの国なんだ」

  しかたねえな、ガゼルは火種を踵ですり潰した。
「お前の一味のシマなんかどうでもいい、でもな……」
  泥が泡をたてる波打ち際に唾を吐く、そして続けた。
「支配は嫌いなんだ、どうせ行くところもない、せいぜい抗ってやろうじゃねえか、なあ?」
「ああ」、ディータは仕方ないな、みたいな感じで同意した。
  面白いな、次の敵はニホン国臨時政府と支配者の合衆国、そして俺たちの故郷を奪ったマフィアか。
「最高だな、ディータ」
「最悪ってヤツだよ、どうしようもないな、お前は」

  キン、とコンクリートを弾く耳障りな音が届いた、ようやく追いついた追っ手たちは飽きもせず僕らを狙ってた。遠吠えとともに足音が波のようにやって来る。
  片目を下弦の月のようにしかめ、その夥しく群れる者たちを凝視していた、かかってこい、そう言わんばかりに。

「たったいま、この瞬間をもって」
「俺たちは仲間だ」
「お前がボスなら、こんなとき、どんな命令をする?」
  答えはひとつだった。
「総員、その命をもって帰還しろ、それ以外にない」
  港にはクルーザーが待機してる、僕たちは島を離れ本土に向かう、逃げろ、いまはまだ死ねない、僕たちはトーキョーへ帰るんだ。
 待ってろ、サンシャイン・アンダーグラウンド。必ず、この地は取り返す。
  いまはただ、逃げろ。
  誰よりも速く。


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the after years / the sunshine underground afterlife……the end.

But a story going around an island still continues.

Next trial “THE DIRTY COLORS”.

All Photograph,Image Illustration and Text……by billy.

thank you.

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2012-08-29 08:39 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

 ねえ、と僕は言う。
「まずはとんずら、でしょ」

 すでに周囲は包囲されているようだ、ビルの屋上から、螺旋階段から、そして巡回しか能がないと思われたネイビーの軍服たちの数名がはばかることもなく僕らにその銃口を向けていた。
「火は用意されているみたいだな」
「タバコどころじゃないな、全身が灰にされちまいそうだ」
 へへへ、逃げ場を奪われたとは思えない、ディータとガゼルは顔を見合わせ、くわえ煙草で笑顔さえも浮かべてた。
 僕は思う。このふたりは死を恐れないわけじゃない。
 自分は死なない、そんな過信があるわけでもない。
 覚悟があるだけだ。彼らが生きたその足跡は、誰が隠そうとも語り継がれてゆく。“本当に生きた”人間は死後でさえ、その痕跡は決して消え去りはしない。
 ディータとガゼル。ふたりはこの生と死の狭間にあって、その状況さえも飲み込み、余裕さえも漂わせ、きっと、死と戯れている、極限に慣れ、いまある命を楽しんでいる。

 じゃあ、とガゼルが言う。
 また逃げなきゃしかたないか、ディータが言う。
 再生を遂げつつあるアンダーグラウンドのことなんて彼らはしらない、僕もまた詳しくはない、長い髪を振り乱してガゼルは言った、
「誰よりも速く走ればそれでいいんだ」と。



……続劇

2012-08-29 08:37 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

「何年ぶりだ? ずいぶんアンダーグラウンドも変わっちまったみたいだけどな」
「ガゼル。臨時政府はこの島を合衆国に明け渡したんだ、だが、本土が押さえられたいま、ここは再び不要になった、そのあたりはジタン、君のほうがよく知ってるはずだ」
  ディータは僕の手に刻まれた刺青に気づいていた、だけど、そのことを口にはしなかった。

  何を言おうとしたか、それとも僕には話すことなんてなかったのか。ガゼルとディータ。ふたりはただ再会だけを望んでいた、そうだとしても、何か大きな、価値観の変容さえももたらす二匹のチンピラ。僕はそのふたりの背中を交互に見つめた。大柄ではない、鍛えあげた筋肉を持つわけでもない。
  それでも、彼らが無意識に放つ圧倒的な存在感。幾千の戦いをくぐり抜け、なおもその渦中に生きようとする静かな覇気。知恵や仁義や、正義やモラルをもってしても、刻みつけられた「命」の痕跡には太刀打ちさえもできない、それが分かる。感じる。
  喉元に切っ先を突きつけらても、ふたりなら唾を吐いて微笑みさえも浮かべるだろう。
  タバコをよこせ、そんな軽口さえも叩くだろう。

  オヤジ。
  あんたが僕にふたりに会ってこいって言ったのが分かるよ。トーキョーに生きる人間にはこんな強く激しい心臓を持ったヤツはいない。
 ピストルやナイフなんかでは屈することのない何かを持つ人間はいる。死を恐れないヤツだ。でも死にたいわけではなく、命を引き換えにしても譲れないものを持ち、しかも、死なないヤツだ。
  そして、彼らは優しい。僕が知り合った誰よりも。

「さあ、何からやろうか」
  ガゼルが言った。
「ビールでもってわけにもいかないみたいだ」
  ディータは楽しくってたまらないように笑顔を浮かべる。
  ねえ、と僕は言う。
「まずはとんずら、でしょ」



……続劇
2012-08-29 08:34 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

  やっぱり。 やっぱり、生きていたか。
  そして、この地で巡り合うのも決まっていたような気がする。
「久しぶりだな、ディータ」
  そうつぶやき、俺はゆっくりと広場に足を踏み入れた。

  僕は再会するふたりを見ていた。
  騒ぎ立てるでもなく、涙が流れるでもない、数年ぶりになるんだろうふたりの再会は歓喜とはまるで違うものだった。過酷な運命を生き延び、僕には、いや、ふたり以外の他人には立ち入ることも感じることもできない、特殊な磁力が同じ時間、同じ場所にガゼルとディータを導いたんだと分かる。

「タバコを吸いたいんだ、火を貸せよ」
「ほらよ、相変わらずのマルボロか」
  ふたりは互いに火を点け合って、美味そうに煙を吸い込んだ、ガゼルは金髪に細い指を差し込んでがしがしと頭を掻きむしる、ディータは眉根に皺を寄せ、鼻の下を右人指で擦ってる。
  きっと、ふたりは何度もこんなやり取りを繰り返したんだろう。
  月日を経ても、変わらないものはある。

「こいつはジタンだ、サンシャイン・アンダーグラウンドに侵入したときに一緒だった。な?」
  僕はガゼルにアタマを叩かれて、初めて会うディータに無言で小さく礼をした。
「そうか、僕はディータだ、訳ありで……いや、実際はたいした理由なんかない、里帰りってとこだ」
 監視つきでな、ガゼルは姿勢を変えないまま、その左右で色の違う眼球だけで、あちらこちらから僕らを睨む軍の人間の存在を知らしめた。すでに射撃態勢に入っている兵もいる、だけど、ふたりはまるで意に介さないようだった、発砲がなされても、彼らには当たることがない。足下の石を削るのが精一杯だろう、この地において、ガゼルとディータには威嚇さえ通じない。

「……ふたりは……再会だけが目的じゃない……よな?」
  どうかなあ、同じセリフで笑い合う。言っただろう里帰りだって、ガゼルが言ってディータは笑った。そうそう、僕らは何も目的なんて持たずに行動してるんだ、と。

「何年ぶりだ? ずいぶんアンダーグラウンドも変わっちまったみたいだけどな」
「ガゼル。臨時政府はこの島を合衆国に明け渡したんだ、だが、本土が押さえられたいま、ここは再び不要になった、そのあたりはジタン、君のほうがよく知ってるはずだ」
  ディータは僕の手に刻まれた刺青に気づいていた、だけど、そのことを口にはしなかった。

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……続劇
2012-08-29 08:31 | カテゴリ:tsu after life
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the sunshine underground / after life

  ジタン、もう一人生きてるんだ、所在は分からないし連絡もついていない、でもな、俺の友人もやはりアンダーグラウンドに向かっている。
  ディータ、お前も島へ向かってるんだろう、俺たちはまた、あの地で再会するんだ。

「小綺麗になっちまいやがって」
  かつての面影をどこかに探しながら新たに建造された都市のメインストリートをゆく。
「いまはもう、サンシャイン・アンダーグラウンドなんて呼ばれてないんだろうな」
「呼び名はばらばらなんだ、もうニホンなんて名前の国もなくなるかもしれない、軍の侵攻を受けてから国家の存続が危うくなって、そのときにマフィアや移民たちが大量に流入してきた、純粋種のニホン人は山村部や地方都市に逃げるしかなかった、そこで小さなコミューンをつくってるって聞いたことがある」
  そうか、俺は屈託なく話す少年の顔を眺めた、黒髪の黄色人種だが、その目は薄い茶で、何種かの血が混じった人間だと分かる、踵でリズムを打つような独特の歩き方もニホン人ではない。
  だが、彼は自らをニホン人だと言う。生まれた国を祖国と表現するのに人種は関係がないはずだ、俺にとってのサンシャイン・アンダーグラウンドがそうであるように。

  ジタンはトーキョーを拠点にする、ある「ファミリー」の一員なんだと言う、ギャングのことだろう、左手の甲と首筋に同じマークの刺青がある、一味への、あるいはボスへの忠誠の証なんだろうか。
  彼は屈託なく無邪気な印象を与えるが、肝心なことに話題が及ぶと表情を曇らせる、しばらくの沈黙を経て、別の話を切り出す。一昼夜を共にしているが、俺はジタンがこの島に侵入した理由も聞いていない。
  もっとも、ここに来た理由に関しては俺も話していない。友達に会いに来た、としか言いようがないが、ディータが島にいると知ってきたわけじゃない、里帰りなんてのどかさもない。

「ほら、あれがこの島の平和を祈念して造られたモニュメントだ」
  ジタンが指差した先には石の壁に包まれた噴水の広場があり、赤と白のストライプの旗がなびいていた。
  足下の土は懐かしい感触がするが、その広場はアスファルトで固められている。島の中央……そう、俺が率いた島の住民たちのほとんどが撃ち殺された因縁の場所。
  すくみそうになる足を引きずりながら、その噴水に歩いてゆく、ふいに吹き上げられていた水流がやんだ、そしてそこには俺たちのほうを真っ直ぐに見てタバコを吹かせている男がいる。

やっぱり。
やっぱり、生きていたか。
そして、この地で巡り合うのも決まっていたような気がする。
「久しぶりだな、ディータ」
  そうつぶやき、ゆっくりと広場に足を踏み入れた。

JACKPOT DAYS!! -reading poetrical beat punk--110326_021437.jpg




……続劇
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